出産費用はいくら必要?
都道府県や分娩方法による違いや自己負担額を抑える制度を解説

出産を控えている女性やその家族にとって、出産費用がいくらかかるのかは気になる事柄の一つでしょう。どれくらいの費用を準備しておいた方がいいのか、自己負担額を抑えられる制度はあるのかなどをあらかじめ知っておくと、安心して出産にのぞめるでしょう。

この記事では、厚生労働省のデータをもとにした出産費用の目安、費用負担を抑えるのに役立つ制度などをわかりやすく紹介します。

出産費用はいくら必要?

出産にかかる費用には大きく2種類あり、妊娠中に妊婦の健康状態と胎児の成長を確認するために定期的に受診が必要な妊婦検診(妊婦健康診査)の費用と、赤ちゃんを出産するために医療機関に支払う分娩・入院費用があります。

妊婦検診では、妊娠8週ごろから出産までに計14回の受診が勧奨されています。妊婦検診にかかる費用は医療機関や検査内容によって変わりますが、1回あたり1,000~5,000円ほどとされています。

お住まいの自治体から助成を受けられますが、自治体によって助成額が異なるほか、初診は助成を受けられない場合も多いです。合計で1~10万円の自己負担が発生すると考えておくといいでしょう。

分娩・入院費用には、医療機関での入院料、分娩料、新生児管理保育料、検査・薬剤料、処置・手当料が含まれます。

厚生労働省のデータによると、2021年度時点の分娩・入院費用は以下のとおりです。

分娩・入院費用平均(※)
公的病院 約45.5万円
全施設 約47.3万円

※室料差額、産科医療補償制度掛金、その他の費目を除く出産費用の合計額
出典:厚生労働省「出産育児一時金について」をもとに作成

帝王切開は健康保険が適用されますが、正常分娩の場合は全額自己負担です。

なお、妊婦検診の費用と分娩・入院費用のほかにも、マタニティ用品やベビー用品を買いそろえるお金も必要です。

出産費用はさまざまな要因で差が出る

出産費用でもとくにお金のかかる分娩・入院費用ですが、さまざまな要因によって差が生じます。そこで、厚生労働省のデータをもとに、出産費用に違いが出る要因を解説します。

出産する施設による出産費用の違い

出産費用のうち、分娩・入院費用は出産する施設の違いによって差が生じます。出産する主な施設には、公的病院や私的病院、診療所(助産院)があります。それぞれの分娩・入院費用は以下のとおりです。

2021年度 室料差額を除いた出産費用の状況

分娩全体 正常分娩の場合
全施設の平均 462,902円 473,315円
公的病院 418,810円 454,994円
私的病院 486,880円 499,780円
診療所(助産院を含む) 472,258円 468,443円

※室料差額、産科医療補償制度掛金、その他の費目を除く出産費用の合計額
出典:厚生労働省「出産育児一時金について」をもとに作成

「公的病院」は国公立病院や国立病院機構など、「私的病院」は私立大学病院や産科・婦人科クリニックなど、「診療所」は官公立診療所や個人診療所、助産院などです。

表をみると、公的病院はやや低く、私的病院はやや高い傾向があるとわかります。

こうした費用の違いは、常駐する医師や看護師、助産師の数、設備、提供されるサービスによるものと考えられます。

出産する都道府県による出産費用の違い

分娩・入院費用の全国平均は473,315円ですが、実際には地域によって大きな差が生じます。

公的病院での分娩・入院費用(正常分娩)をみると、もっとも高い東京都は565,092円、もっとも低い鳥取県は357,4433円となっていて、その差は20万円超です。

2021年度 分娩・入院費用平均等

分娩・入院費用平均(※)
全国 454,994円
東京都 565,092円
鳥取県 357,443円

※室料差額、産科医療補償制度掛金、その他の費目を除く出産費用の合計額
出典:厚生労働省「出産育児一時金について」をもとに作成

地域差が出る理由はいくつか考えられますが、東京都は多様なニーズにあわせてサービスの充実した医療機関が多い、鳥取県は人口に対する産婦人科医の数が多い、などの理由が挙げられます。

分娩方法による出産費用の違い

分娩方法によっても分娩・入院費用に差が生じます。

自然分娩の費用は約30~80万円です。自然な陣痛による分娩方法で、麻酔などの医療処置をしないため、ほかの方法よりも費用は抑えられています。医療機関や部屋の種類、入院日数、地域などにより金額に差が出ます。

無痛分娩は、おおむね自然分娩に約10〜20万円を加えた金額がかかります。麻酔により出産時の傷みを和らげる分娩方法で、麻酔や陣痛促進剤などの医療行為がかかる分、自然分娩より費用は高くなります。

帝王切開分娩は、医師の判断により選択される分娩方法です。計画的に実施される選択帝王切開と、出産時の状態によって急きょ実施が決定する緊急帝王切開があります。

帝王切開は診療報酬点数表により分娩費は決まっていて、緊急帝王切開は22万2,000円、選択帝王切開は20万1,400円です(※)。

医療行為のため健康保険が適用されて分娩費の自己負担は3割で済み、高額療養費制度も利用できます。ただし、入院期間が長くなる傾向があり、入院費用にお金がかかります。

※令和4年診療報酬点数表より

制度を活用して出産費用の自己負担額を抑えよう

妊娠や出産は病気ではないとの考え方から、健康保険が適用される帝王切開の分娩費を除いて、出産費用のほとんどは全額自己負担です。

国や自治体、健康保険からさまざまな助成を受けられるので、積極的に活用して出産費用の負担を軽減しましょう。

※制度に関する記載は2023年6月現在の制度に基づくものであり、将来変更される可能性があります。

妊婦検診費の助成

妊婦検診にかかる費用は、すべての自治体から公費助成が行なわれています。

住民票のある自治体が提供しており、妊娠届を提出すると母子健康手帳とともに「妊婦健康診査受診票」が交付される仕組みです。

1回の受診につき受診票1枚を窓口に提出すると、受診票に記載された検査項目が助成対象になります。助成回数や助成金額は自治体によって異なりますが、原則として14回の検診が無料になります。

たとえば東京都江戸川区の場合、検査項目の範囲内の妊婦健診14回に加え、妊婦子宮頸がん検診や妊婦超音波検査も助成されます。

出産育児一時金

出産育児一時金は、会社の健康保険に加入している人とその人に扶養されている配偶者、国民健康保険に加入している人を対象とした手当です。

妊娠4ヵ月(85日)以上で出産した場合に、子ども1人につき50万円が国から支給されます(※)。以前は42万円でしたが、2023年4月より50万円に引き上げられました。また、出産費用が支給額未満であれば差額を受給できます。

※産科医療補償制度に加入していない医療機関で出産した場合や、妊娠週数22週未満で出産した場合は48万8,000円

高額療養費制度

高額療養費制度は、医療機関で支払う1ヵ月の医療費が自己負担限度額を超えたとき、その超過分が支給される制度です。健康保険が適用される帝王切開分娩で利用できます。

自己負担限度額は、健康保険に加入する人の収入によって変わります。たとえば、年収が約370~770万円(標準報酬月額が28~50万円)の人の場合、自己負担限度額は「80,100円+(医療費-267,000)×1%」で計算します。

標準報酬月額とは、社会保険料を計算するために報酬月額の区分(等級)ごとに設定されている金額のことです。

帝王切開で医療費が高額になった際などに出費を抑えられる便利な制度ですが、手続きから支給までに3ヵ月くらいかかる、自己負担限度額は同じ月の1日から末日までの1ヵ月の合算で月をまたぐと月ごとの計算になるなど、いくつか注意点があります。

選択帝王切開で事前に高額療養費制度の対象になるとわかっている場合は、「限度額適用認定証」の交付を受けておきましょう。窓口での支払いが自己負担限度額までで済みます。

医療費控除

医療費控除とは、1月から12月までの1年間に医療費が10万円を超えたとき、所得から控除される仕組みです。

出産費用のうち、次のような費用が医療費控除の対象となります。

  • 妊娠検診などの費用やそのための通院費用
  • 出産で入院するときに医療機関へ向かうために利用したタクシー代(※)
  • 医療機関に支払う入院中の食事代

※電車やバスなどの交通手段の利用が困難だった場合

医療機関に支払った入院中の費用は「入院費」に含まれるため医療費控除の対象となりますが、入院で使う目的であっても、パジャマや洗面用具などの購入費用は医療費控除の対象外です。

医療費控除の金額は「(支払った医療費の合計金額-保険金などで補てんされる金額)-10万円」で計算します。

「保険金で補てんされる金額」とは、生命保険の入院給付金や健康保険の高額療養費や出産育児一時金などのことです。

その年の総所得が200万円未満の場合は、「総所得金額×5%」で求められる金額が控除されます。

出産手当金

出産手当金は、会社の健康保険に加入する妊婦本人が産前産後休業(産休)を取得して、給与の支払いを受けていない期間に支給される手当です。会社員に扶養されている配偶者や国民健康保険の加入者は対象から外れます。

対象となる産休期間は、出産日以前の42日(多胎妊娠は98日)と出産後56日までです。

1日あたりの支給額は、以下の計算式で算出されます。

  • 支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額の平均額÷30日×2/3

出産予定日よりも実際の出産が遅れた場合には、遅れた日数分も支給されます。

妊娠中や出産後には学資保険を検討

出産費用は原則として、保険適用ではないため保険で備えられません。しかし、生まれてくる子どものための教育費は学資保険で備えられます。

学資保険は、子どもの教育費を準備するために加入する貯蓄型の保険です。満期保険金のほか、子どもの成長の節目にあわせて教育資金を受け取れるものもあります。

また、契約者である親に万一のことがあれば、以降の保障を継続したまま保険料の払込みが免除されます。

子どもの教育費には、まとまったお金が必要になります。妊娠中から加入できる学資保険もあるので、出産後に育児で忙しくなる前からの検討がおすすめです。

「明治安田生命つみたて学資」なら
妊娠中から申込みできる

子どもの教育費のなかでもとくに費用がかかる大学進学に向けて学資保険への加入をお考えなら、「明治安田生命つみたて学資」がおすすめです。

保険料の払込みは最長でも15歳までで完了し、もっとも教育費のかかる大学在学中に教育資金と満期保険金を合計4回受け取れます。

また「明治安田生命つみたて学資」は出産予定日の140日前から申込みが可能です。早めに加入すると、月々の保険料の負担が軽くなる場合もあります。

ぜひ、公式サイトの見積もりからはじめてみてください。

※保険商品をご検討・ご契約いただく際には、「ご案内ブックレット」を必ずご確認ください。

まとめ

分娩・入院費用の全国平均は、2021年度時点で約47.3万円です。2023年4月から出産育児一時金が50万円に拡充されているため、安心される人もいるでしょう。

しかし、出産する医療機関や分娩方法、地域によって、出産費用には差があります。また、妊娠中に受ける妊婦検診も、自治体からの助成があるとはいえ、数万円の自己負担が生じる可能性が高いでしょう。

帝王切開をのぞき、妊婦検診を含む出産費用は保険適応外のため全額自己負担であるため、手厚い助成制度があっても、ある程度お金の準備が必要です。

出産費用は原則として、保険適用ではないため保険で備えられません。しかし、子どもの教育費は学資保険で準備できます。

妊娠中から加入できる学資保険もあるので、早めに検討をはじめ、教育費に備えましょう。

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