2019年9月

川崎フロンターレ

自分をよく知り、習慣化することで鋼の身体になる谷口彰悟

タイトルパートナーとしてJリーグを応援している明治安田生命では、健康増進の取組みを継続的に支援する『みんなの健活プロジェクト』を展開している。このプロジェクトと親和性の高い企画として、当連載では「カラダとの対話術」と題し、Jリーグで活躍する選手たちへのインタビューを実施。第4回は2017年からJリーグ2連覇を成し遂げた川崎フロンターレの守備の要、谷口彰悟選手。Jリーグのフィールドプレーヤーとして歴代2位の連続出場記録を持つ“鉄人”に、コンディショニングの秘訣を聞いた。

インタビュー=細江克弥
写真=野口岳彦
取材日:2019年8月7日

健康を“知る”

年齢を重ねることで
“次の日”を真剣に意識

―――コンディショニングについて、本格的に意識するようになったのはいつからでしょう?

本気で考えるようになったのは、プロになってからだと思います。ただ、今になって振り返ると、はじめて親元を離れてひとり暮らしをした大学時代もいい準備期間になりました。あの4年間で、サッカーと真剣に向き合うための生活スタイルを確立することができた気がします。

―――当時からすでに、プロになる将来、あるいはその先の日本代表という目標を見据えていましたか?

僕はプロになること、プロになってからのこと、サッカーをやめてからのことなど、いろいろなことを考えて大学進学を選択したのですが、その時点の一番の目標は「プロになること」であり、「プロの世界で活躍すること」でした。そのために何をしなければならないのかを当時から考えていたし、しっかりした生活習慣を身につけないと、いいパフォーマンスを発揮することができないと思っていました。大学生活の4年間で自分を律した生活を送れたことは、もしかしたら、今の自分につながっていると言えるのかもしれません。

―――プロになってからのコンディショニングについても、それほど大きな苦労なくアジャストできたのでしょうか。

正直なところ、1~2年目あたりは無我夢中だったので、あまりちゃんと管理できていなかった気がします。試合に出られることが嬉しかったから、「このまま試合に出続けるんだ」という気持ちがものすごく強かった。当時は若かったからこそ、ある程度の疲労があっても“気持ち”でカバーすることができていましたね。それに頼っていたところが大きかったと思います。“次の日”を真剣に意識するようになったのは、3年目以降。年齢を重ねながら回復力の低下を感じて、必然的に意識するようになりました。

―――プロ6年目の現在は、ご自身の身体をケアする時間を大事にされているとお聞きしました。

“ケア”と言ってもいろいろな方法があって、僕の場合はその日の状態によって何をどうするかを自分で決めています。クラブにはトレーナーさんがいるので、マッサージによって筋肉疲労の回復を図る時もあるし、逆に、筋力トレーニングによって刺激を与えることもあります。次の試合までの間隔が1週間ある場合は、午前中の練習後によく筋力トレーニングをしていますね。チームスケジュールや自分自身の状態によってその日取り組むことを変えているので、“ルーティン”という感じではありません。川崎フロンターレの練習はいつも午前10時から始まるので、7時には起床して、練習後に食事を摂り、ケアをして……。だいたいいつも、クラブハウスを出るのは17時くらいになってしまいます。

パフォーマンスコーチ
阿久津洋介さんコメント

メニューによっては練習後に、筋肉が緊張して固くなり、一部の関節に負担が掛かってしまう可能性があります。一般の方も運動後はもちろん、デスクワークや家事など、一定の姿勢で固定していることが非常に多いので、筋が常に同じポジションになっていきます。血流不全や筋の癒着が起きるので、1日をリセットするため、寝る前にストレッチや、呼吸を整えることは重要ですね。

ポイント

  • ・1日のなかで固定された姿勢による疲労や負荷がないか、自分の行動・姿勢を把握しましょう!
  • ・固まった筋肉をほぐすストレッチを、就寝前に身体のリセットをするエクササイズとして行なうようにしましょう!
  • ・生活のリズムを整えることが大切!
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一日4~5回の食事も、
トレーニングの一つ

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健康を”つくる”

一日4~5回の食事も、
トレーニングの一つ

―――谷口選手にとって、今シーズンはプロ6年目となりますが、これまでのキャリアには長期離脱を強いられる大きなケガはありません。

アスリートは大きなケガを経験することでコンディショニングの重要性に気づくことが多いですよね。幸運なことに、僕自身は大きなケガをしたことがありません。そういう意味では、これまでやってきたこと、自分のスタイルをあまり変えずに続けていきたいと思っています。

―――その“スタイル”とは、かなり細かく自分なりのルールを設定しているのですか?

いえ、“身体”に対する意識は、元々はそれほど敏感ではありません。多少の痛みがあっても 「できなくはないかな」と考えるので、そういう意味では、むしろ鈍感なほうかもしれませんね。

―――自分の身体がどういう状態にあるかを把握し、それに合わせたケアを行なう。

はい。僕のスタンスとしては、それが最も大事だと思っています。毎日、自分の身体がどういう状態なのかを確認する時間を、意識的に作っています。だから、自分の身体のことは自分自身が一番よく知っているし、こうなったら痛みやすい、こうなったら疲れが溜まりやすいというのはわかるようになってきました。身体と対話し続けることで、そういう兆候があればすぐに気づけるようになるのだと思います。感覚的な部分の精度は、経験を積むごとにどんどん上がると思いますね。だから、僕のなかでは自分の感覚がすべてです。

―――コンディションを維持するために1日4食、5食を摂るとお聞きしました。それもまた、「身体と対話すること」による成果でしょうか。

そのとおりです。実は、何もしなければすぐに痩せてしまう体質で、普通に3食摂るだけでは体重が落ちてしまうんです。それを避けるための工夫として、1日3食ではなく4食、あるいは5食にしています。体重が増えないように注意している人が多いなかで、ぜいたくな悩みなのかもしれませんが、プロとして通用する身体を作るための工夫は、自分なりにしてきました。ちなみに、「必ずこれを食べる」というものはありません。食べられる時に、食べられるものをしっかりと食べる。脂肪分には気をつける。そういう意味では、食事もトレーニングの一つですね。

―――川崎フロンターレは、選手が自身のコンディションを知る方法の一つとして、尿の検査を行なっているそうですね。

基本的には試合の翌日、朝一番に尿の検査を実施しています。選手の脱水状態などを数値で知らせてくれるシステムです。それによって選手たちのコンディション管理に対する意識が敏感になっている気がしますし、積極的に活用しています。

パフォーマンスコーチ
阿久津洋介さんコメント

一度の食事で固形物が消化されるまで3時間ほどと言われています。朝食と昼食で5時間間隔が空くと、2時間は身体のなかに何もない状況になります。すると、身体のたんぱく質の分解が始まっていくので、それを考慮して食事のスケジュールを組みます。一度に多くの食事ができない方もいますので、食事回数を分けて摂取することも有効です。

強度の高い運動をされる方は、エネルギーが枯渇する時間が長いほど、たんぱく質が分解され、疲労回復が遅れます。トレーニング後の30分間に食事をすることで、エネルギーを有効にリカバリーできると言われています。

尿に関しては、尿中の水分やたんぱく質、糖などを数値化した尿比重を見て、脱水状態かどうかを見ます。体内の水分量がなくなると、脱水を起こし、身体の不調が出やすくなります。尿の濃さはコンディションの基準の一つになりますね。定期検査ではなくとも、自分の出す尿の色を確認することはできます。水分を取っていないと色は濃く、その逆であれば薄くなります。栄養ドリンク摂取後は色が濃くなるといった例外はありますが、簡易的な基準になります。

ポイント

  • ・食が細い方は、1日4~5食の複数回の食事方法は有効!
  • ・激しい運動後は30分以内にエネルギーを補給!
  • ・尿の濃度で健康状態はチェック可能!日頃から気にしてみよう

健康を“続ける”

“健活”は、
習慣化することが大事

―――コンディショニングに対する谷口選手のスタイルは、明確な“数字”として表れています。今年4月にはJリーグ歴代2位となるリーグ戦155試合連続出場という記録を作りました。

もちろん簡単なことではないという自覚はあります。約5年間、ケガなく、体調不良もなく、ポジション争いもあるなかで試合に出続けることができたことに対しては、自分でも「よく頑張ってきたな」と思います(笑)。ただ、その数字に誇りを感じたり、「すごいことをやった」という感覚は全くありません。常に目の前の1試合のことだけを考えてきたので、その積み重ねでしかないのかなと思います。

―――ただ、たとえアスリートであっても“続けること”の難しさは日々感じていらっしゃるのではないでしょうか。

はい、そのとおりです。まず、僕らの場合は“仕事”なので、どれだけイヤでもやらなければいけない(笑)。だから、もしも僕がプロサッカー選手ではなく一般の方と同じ立場だったら、テレビで観た軽い運動ですら「やってみよう!」と思っても絶対に続かない。三日坊主は間違いありませんね。

―――そういう気持ちに打ち克って、続けるためにはどうすれば?

もし健康のための運動を、と思うなら、まずは「続ける」ことを目標とするべきだと思います。そのためには、毎日、確実にできる負荷と回数を設定することが大切ですよね。例えば、僕は今日の練習後に20分間走ったのですが、それは結果であり、実際には、「今日の目標は10分走る」からスタートしています。調子が良かったから20分間も走ることになりましたけれど、最初から20分間を目標としていたら絶対に走れなかった。

―――「最初の目標設定」は、“自分を知る”につながる気がします。

そうですね。まずは自分がどうなりたいのか。そのうえで、自分にできることとできないことは何か。もちろん性格的な部分も含めて。そういったことをきちんと分析できないと、なかなか続かないと思いますから。やはり、“自分を知る”はすべての前提にあると思います。

―――ちなみに、もし谷口選手がプロ選手ではなかったら……。

サッカーが“趣味”でしかなかったら、週末の試合のために毎日余計に10分走るなんて、絶対にできません。そうした意味では、趣味でありながらも健康を維持するために何かを続けている人は、本当に尊敬してしまいますね。

―――改めて、“健活”を続けようとするみなさまにアドバイスをお願いします。

すべては自分を知ることから始まります。目標に対して何をどうすれば実現できるのか、まずはそれを考えるところからはじめてみてください。実際の“健活”は、習慣化することが大事だと思います。走れないなら、歩くことから始めればいい。まずは1週間歩いてみて、それができたら10分間走ってみる。そうやって習慣化しながら、少しずつレベルを上げていくことが大事だと思います。「運動したい」といつも口にしているウチの両親にも、「まずは、今の自分と向き合って!」と言いたいですね(笑)。

パフォーマンスコーチ
阿久津洋介さんコメント

毎日繰り返すことで、「今日はここの筋肉が固い」といった自己認識が増えていきます。自分の身体の特徴がわかってくるので、毎日のケアは自分に対する一つの評価基準になります。いつもと同じ姿勢なのに腰が痛い、張りを感じるということも評価基準です。普段の行動にしっかりと目を向け、当たり前のことに疑問を持つことも、立派な健活であり、大切なことです。

ポイント

  • ・“健活”とは自分の身体を知ることから!日々の行動を振り返りましょう!
  • ・いつもと“違う”と感じたらケアを重点的に心掛けましょう!
  • ・自分の身体を知ろうとする回数の積み重ねで、健康への自己認識が高まります!
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ストレッチのアドバイス
必見!谷口流 ストレッチ術

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ファンのみなさまからの質問

睡眠は?お酒は?リフレッシュは?
 さまざまな質問に回答

<Q1>
今年からクラブハウスに食堂ができました。食生活やコンディション作りにどの程度変化がありましたか?

<A1>
すばらしい環境が整ったことで助かっていることもたくさんありますが、メンタル面には大きな変化はありません。食事に対する意識は以前から高く持っていたつもりなので。もちろん練習後すぐ、しかもアスリートのことを考えたメニューを食べられるというメリットはあります。

ちなみに好き嫌いは、ほとんどありません。僕の場合は体重を落とさないように食べることがテーマなので大変ですが、そういう意味でも食堂の方にはかなり工夫していただいています。僕だけじゃなく、選手たちはみんな感謝していると思います。

<Q2>
アルコールとの付き合い方はありますか?

<A2>
アルコールは全く飲まないというわけではないのですが、やはりシーズン中に飲む時は試合に近い日を避けたり、量を調整したりと自分のコンディションに合わせてうまく付き合っているつもりです。オフシーズンになったら、何も考えずに飲むこともあります(笑)。その時期の楽しみの一つですね。

<Q3>
特に夏場、よい睡眠のために何か工夫したり心掛けていることありますか?

<A3>
正直なところ、理想的な眠りについては自分のスタイルを確立できていません。お風呂にしっかり入るとか、夏場なら空調管理とか、そういうことは深く関わっていると思うので、自分なりに快適な環境を作るように工夫しています。加湿器は必ず置いていますし、遠征時は携帯用の加湿器を持って行きます。

<Q4>
DFは冷静な状況判断が求められ、頭も疲れるのではないかと思いますが、気持ちのリフレッシュのために何かされていることはありますか?

<A4>
試合に向けての準備のなかで“リフレッシュ”はできません。ただ、試合後のオフにはリフレッシュは必要だと考えているので、サッカーのことを一時的に忘れるようにしています。例えば、ゴルフに行ったり、ショッピングに出かけたり、好きなものを食べたり。身体の回復も大事ですが、やはり、頭のリフレッシュがとても大事である気がします。もちろん、家から一歩も出ない日もありますよ(笑)。うまく息抜きしながら、頭のなかをリフレッシュするようにしています。

<Q5>
上半身と下半身をバランスよく鍛えるために心がけている事を教えてください。胸板と腕の筋肉がつきにくく、解決したく質問しました。

<A5>
部位を分けてトレーニングすることをオススメします。今日はここ、明日はここという具合に。でも、なかなか難しいですよね。いずれにしても、トレーニングを続けることが一番なので、ネガティブなことを考えずに取り組むのが一番じゃないかなと思います(笑)。

パフォーマンスコーチ
阿久津洋介さんコメント

睡眠は8時間とることが理想ですが、最低でも6時間は確保したいです。睡眠の質を上げるためには、寝る前のルーティンワークを決めると効果があります。睡眠の90分前に入浴、3時間前には夕食を終える、といった具合です。寝る前にスマートフォンを見ることも、視神経が刺激されるので、1時間前には止めた方がいいですね。休日だからといって、普段よりも寝過ぎてしまうとリズムも崩れます。

谷口選手は試合直後やオフはサッカーのことを考えないとのことですが、一般の方でも休日をどう過ごすかは大切です。軽く汗をかくとリフレッシュになります。普段、クーラーが効いている場所に長時間いるのであれば、休日は身体を動かすと血流が良くなり、筋肉の緊張が和らぎます。心理的なリラックスにもつながりますし、脳の反応にも良い影響があるので、自分が楽しいと思うことをやってもらいたいです。

ポイント

  • ・睡眠はしっかり!快眠の準備は忘れずに。寝る1時間前からスマホは×
  • ・汗をかくと心身ともにリフレッシュ!
  • ・休日も生活リズムは崩さないことが大切。寝過ぎないように!
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谷口 彰悟(たにぐち しょうご)

●生年月日/1991年7月15日
●出身地/熊本県
●身長・体重/183cm・73kg
大津高、筑波大を経て2013年8月、在学中に特別指定選手として川崎フロンターレに選手登録。翌2014年、正式加入する。初年度からリーグ戦30試合に出場。2015年には日本代表に初選出される。近年はセンターバックとしての地位を確立し、J1連覇に貢献。2018シーズンはベストイレブンを受賞した。2019年4月にフィールドプレーヤーとしてJ1リーグ連続試合出場数歴代2位となる155試合出場を達成した、チームにかかせない“鉄人”。

阿久津 洋介(あくつ ようすけ)

国際武道大学大学院を修了後、大学施設でのアスレティックリハビリテーションや大学・専門学校にて学生の指導・教育に従事。現在は、サッカー日本代表選手やJリーガーなどのプロアスリートやアーティスト、ビジネスパーソンのパフォーマンスアップの指導を行なっている。

●資格
スポーツ医科学修士
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)
NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(NSCA-CSCS)

●経歴
2015 国際武道大学 非常勤講師
2016〜2017 JAPANサッカーカレッジ 教員
2016〜2017 開志学園JSC高等部 アスレティックトレーナー
2018〜現在 株式会社ライフパフォーマンス パフォーマンスコーチ

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