新潟県のアスリート・BMXレーシング

BMXというライフスタイルを体現する存在に
フランスに拠点移し世界の頂点へ

- 中井 飛馬

中井 飛馬

BMXのスピード感やスリルにハマっていった

自転車競技の一つ、BMX(バイシクルモトクロス)レーシングで小学生の頃から国内外の大会で活躍してきた中井飛馬(あすま)選手。2023年3月に日本体育大学を卒業し、4月からは拠点をフランスに移して、何人もの世界的な名選手を育ててきた新コーチのもと、トレーニングに励んでいます。「BMXを通じて、これまでの人生のすべてを学んできた」という中井選手は、これからもBMXとともに唯一無二の道を歩んでいきます。

BMXレーシングは、最大8人の選手が一斉にスタートし、ジャンプ台やコーナーがある未舗装の専用コースで順位を競う自転車競技です。BMXプロレーサーの中井飛馬選手(新潟県上越市出身)は5歳の時、父親が営むアパレル店のお客さんから誘われてBMXレーシングを始めました。「スピード感や普段は味わえないスリルが楽しく、ハマっていった」と振り返ります。

始めてすぐに大会に出るようになり、「僕も父も負けず嫌いなので、勝つためにどうしたらいいかを考えるようになった」ことで実績を積み重ねてきました。父親のアメリカ出張に連れていってもらったのをきっかけに海外の大会出場の機会も増え、11歳の時には年齢別の世界選手権で決勝進出。エリートクラス1年目の2019年に全日本選手権で優勝を果たし、2021年には日本人初となるワールドカップシリーズU23総合優勝に輝きました。中井選手は、まさに世界を股にかけて戦い続ける、日本を代表するトップレーサーです。

多くの選手が一斉にスタートするBMXレーシング。中井選手は世界の猛者に真っ向勝負を挑んでいます

▲多くの選手が一斉にスタートするBMXレーシング。中井選手は世界の猛者に真っ向勝負を挑んでいます

美しい自然やタレカツ丼
離れて感じる地元・上越市の魅力

競技面以外のサポートをしてもらっているスポーツマネジメント会社の担当マネージャーから紹介してもらった明治安田の「地元アスリート応援プログラム」は、「何年も前から地元とつながれる機会を探していました。僕自身、そして上越市にとってもプラスになる活動であり、こういう形で地元に貢献していきたい」と思い参加を決めました。

上越市にある金谷山BMXコースが、BMXとの出合いの場所であることもあり、中井選手は強い地元愛をもっています。「上越市はカニや魚、名物のタレカツ丼など食べ物がおいしく、自然が豊かで四季がはっきりしています。自宅から車で15分くらいの所にある直江津の海岸がお気に入りで、コロナ禍の時期はひとりで実家の犬を連れて、夕焼けを見て帰ってくるようなことをよくしていました」

写真も趣味という中井選手は、「観光名所より特別ではない日常的な場所が好き」と言い、帰省して時間がある時は、探検するように素敵なスポットを探して写真に収めています。中学卒業とともに県外に出て、海外で生活する時間が増えたからこそ、余計に地元の良さを感じるそうです。

怪我が日常茶飯事の「自転車の格闘技」

「自転車の格闘技」とも呼ばれるBMXレーシングでは、練習中やレース中の怪我が日常茶飯事です。中井選手もこれまでに幾度となく怪我を経験し、なかでも16歳の時は「右ひじ痛で約半年間、それが治ったら手首を骨折し、次は鎖骨骨折と、トータルで1年半ぐらい自転車に乗れない時期があった」と語ります。

ただ、そこで「できることをやっておけば、治った時は自分が一番速い」とポジティブに捉えられるのが中井選手の持ち味です。思い悩んで立ち止まることなく、「体の使い方を見直したり、いつも競技サポートをしてくれるスポンサーさんに向けた年間報告書を作成し、それを自分自身でプレゼンしにいったりと、長く応援してもらえる選手であり続けるための時間に充てることができ、今の自分につながっていると感じます」といいます。

最近では2022年秋に自身5度目の鎖骨骨折をし、回復までに約半年という長い時間を要しました。「大人になったからか、初めて怖いという感覚が少しだけ芽生えて、そのことにショックを受けました」と明かします。しかし、ここを乗り越えた先に一段階レベルアップした中井選手がいるはずです。

課題のパワー面を強化し、目の前の大会を全力で

中井選手の現在の目標は、世界最高峰の大会でのメダル獲得です。春から拠点をフランスに移したのも、世界標準のコーチやトレーニングパートナー、練習場所など、「レベルの高い環境に身を置くことで必ず成長できる」と考えたからです。

華麗なテクニックでコースを駆け抜ける中井選手。さらなる高みをめざしパワーアップにも取り組んでいます

▲華麗なテクニックでコースを駆け抜ける中井選手。さらなる高みをめざしパワーアップにも取り組んでいます

とはいえ、「世界選手権やワールドカップなど、一つひとつの大会で良い結果を残していくことが最終目標につながる」とあくまでも冷静な姿勢は崩さず、「目の前の大会に全力で取り組んでいきたい」と意気込んでいます。

もともと他の選手を抜き去るような自転車のテクニックには自信があった中井選手。目下の課題はパワー面で、「この半年間で体重を9kgほど増やせましたが、外国人選手に当たり負けしないために、これからもウエートトレーニングで体づくりを継続してきたいです」と話します。小学生の頃からしのぎを削ってきた同い年の「アイザック・ケネディ選手(オーストラリア)やレオ・ガロヤン選手(フランス)には負けたくない」とライバル心を燃やしています。

「自分はずっとBMXで生きていく」

野球やサッカーを見ていて、「スポーツは地元とのつながりが重要」と考える中井選手は、「海外に行くと特にそう感じ、うらやましいと思うことがある」そうです。今後、アスリートとして自らの目標に向かって邁進する一方、大好きな地元とBMXが何らかの形でつながるような還元をしたいという夢も持っています。

「BMXはライフスタイル」と話す中井選手。ファッションを含めた「かっこよさ」がファンを魅了しています

▲「BMXはライフスタイル」と話す中井選手。ファッションを含めた「かっこよさ」がファンを魅了しています

「BMXはただの競技ではなく、ライフスタイルです。自分自身がそれを体現する存在でいたいですし、将来的にはBMXというライフスタイルを体現できる場所を作りたいです。そこで子どもたちに教室を開いたり、BMXコースとともにスケートボードのパークやキャンプ場、カフェなどが併設されていても面白い。そこに集まる人たちに『BMXってカッコイイ!』と思ってもらうだけでなく、BMXに興味がない人も楽しめるような場所が理想です」。冬は雪深い地元・上越に、屋根がある全天候型のBMX練習施設を作りたいという夢もあります。

BMXに出合った当初から「自分はずっとこれで生きていく」と覚悟を決め、「大人から『将来はどうするの?』と聞かれたら、『なんでそんなことを聞いてくるのだろう』と思っていました」と話す中井選手。他の道に進む選択肢は考えたことがないといいます。だからこそ中井選手は、競技者として常に努力を惜しまず、同時に広い視野でBMX界の未来を見据えています。

(取材・制作:4years.)

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