

※本記事は、2024年7月時点の内容です。
春は出会いの季節。新しい職場や異動先の部署にうまくなじめるかな? 子どもの保育園や小学校で新しいパパ友やママ友と上手に付きあえるかしら? そんな不安を抱えている人も多いでしょう。「はじめまして」から、良好な人間関係を築くために知っておきたい人間関係の法則を、対人心理学を研究されている立正大学客員教授の内藤誼人先生に教えていただきました。


春は新たな出会いのチャンスにあふれる時期!ですが、コミュニケーションに苦手意識を持つ人にとっては、少し気の重い季節であるかもしれません。人間関係の悩みは、人生のなかで大きな位置を占める問題。実際、アドラー心理学の解説書として2013年にベストセラーとなった『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)では、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」というアドラーの印象的な言葉が紹介されています。
また、社会人が1日の大半を過ごす職場という環境でも、人間関係は大きなウエイトを占めます。大手転職サイト『エン転職』が「本当の退職理由」というテーマで10,432名に調査したところ、退職経験者の「本当の退職理由」では、会社の将来性に不安を感じた(28%)、給与が低い(34%)を上回り、職場の人間関係が悪い(35%)が1位という結果となっています。
退職報告をする際に「本当の理由を伝えなかった」と回答した方に聞いた、
会社に伝えなかった「本当の退職理由」(複数回答可)

出典:「『エン転職』1万人アンケート(2022年10月)「本当の退職理由」実態調査」(エン・ジャパン『エン転職』調べ)プレスリリース
このような調査結果から見えてくるのは、幸福な人生を送るうえで、人間関係の悩みを解決することは必要不可欠だということ。そうはいっても、もともと自分にはコミュニケーション能力がないからだと思い込んであきらめている方も多いのではないでしょうか。でもちょっとした行ないを心がけるだけでも、人間関係を円滑に形成することは可能なのです。
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「はじまり」の季節である春は、将来について考える絶好の機会でもあります。新生活の準備の一環として、保険についても考えてみませんか? 明治安田では、ライフステージの変化にあわせて最適な保障を受けられる保険や、一生涯の保障を受けながら将来の資金準備をはじめられる保険など、これからの人生を見据えた商品をご用意しています。安心できる将来のために、万一のリスクに今から備えませんか。


この項目では、古今東西さまざまな対人心理学の研究成果を参考に、良好な人間関係を築くため、最低限これだけは知っておくべき!という5つの法則をご紹介していきます。出会いの春を実り多きものにするために、ぜひ覚えて、コミュニケーションの際に意識してみてください。



こちらが笑顔で近づくと、見ず知らずの相手でも笑顔になる現象のことを、心理学の世界では「笑顔の返報性」と言います。笑顔になると人間はおのずとポジティブな感情になり、他者を受け入れやすくなります。同様に、こちらが不機嫌な表情をしていたり、イライラした態度を見せたりしていると、相手も同じように不機嫌な様子になることがあります。このように相手の態度を鏡のように反映する現象を「パートナー効果」と言います。誰かと近しくなりたいとき、または何か頼み事があるときは、まずほほえみかけ、相手の笑顔が返ってきたところで希望を伝えると、良い結果が期待できるでしょう。
笑顔が大事といっても、おかしい気分でもないのに笑顔を作るのはちょっと難しいかもしれません。そんなときは、人と会う数分前に、好きな誰かを頭のなかで思い浮かべてみるのがおすすめです。例えば好きなアイドルを想像し、顔がほころんだところで人と対面してみてください。相手はきっとあなたが放つ、とっておきの声や表情に好印象を持ってくれるでしょう。



コミュニケーションに苦手意識を持つ人は、自己紹介がうまくできないとか、会話を盛り上げる能力がないとか、スキル面での自信のなさから、一歩を踏み出せない方も多いかもしれません。でも最初は「会話をしよう」と意気込む必要はなく、まずあいさつをするだけで大丈夫です。見ず知らずの相手でも、あいさつやちょっとした世間話をするだけで、人間は自然と友人のような親近感を持つということが、心理学の研究からもわかっています。まずは「あいさつ」という効果的で、最も低いハードルからクリアしていってみましょう。
知らない人にあいさつするのが苦手な人は、日ごろからちょっとしたトレーニングをしてみましょう。おすすめなのは、新幹線や飛行機で席に座るとき、隣の人にひと言あいさつをしてみること。ひと言話せば、全くの赤の他人から「知っている人」になり、その移動時間も緊張感が軽減されるはずです。また、公園で歩いているときに「こんにちは」「かわいいわんちゃんですね」とひと声だけ声をかけるのもいいです。ポイントは、相手から返事が返ってこなくても気にしないこと。一方的なあいさつでも大丈夫です。



コミュニケーション能力=会話のうまさというわけでもありません。多くの人間が最も嬉しいと感じるのは、自分の話を聞いてもらえるということ。何もしていなくても、ただ「うんうん、そうだよね」とうなずいているだけでも、「あの人はいい人!話を聞いてくれた!」と、相手が好きになってくれます。内向的でトークに自信のない人は、敢えて聞き役に徹するのもいいでしょう。
対人スキルにとって大事なのは、自分のもともとの資質にあった領域を伸ばすことです。自分は内向的で人見知りだし、と自信のない人こそ、無理に社交的に振る舞おうとするのではなく、その「内向性」を大事にしてみてください。
一方、社交的な人の場合は、聞き役にまわると苦痛で仕方ないということもあるかもしれません。それなら、話術を磨いたり、場を盛り上げる仕掛けを考えたりするなど、自分がわくわくするスキルを伸ばしましょう。
相手の話を聞くときに意識してほしいのが、相手の目をきちんと見ること。目をあわせるほどお互いの魅力が増すことを、「アイコンタクトの原理」と言います。目をあわせて、「私はあなたのことを大切に思っています」というシグナルを送りましょう。照れ屋さんで見つめあうなんて無理……という人は、相手のまばたきの回数を数えながら話してみるのも手。あ、でも、まずはしっかり相手の話を聞きながらですよ。



人間関係のトラブルは、ささいな出来事が発端となりがちです。自分自身には何も心当たりがなかったとしても、自分だけ食事に誘われなかったとか、声をかけたのに無視されたとか、そういった小さな不満が積もりに積もって、大きなトラブルにつながるのです。アメリカの学校で1995年から2001年までに発生した凶悪事件を分析してみたところ、15件のうちの13件が、小さな心の葛藤が事件の要因となっていた、という調査結果も出ています。もし誰かとの関係が気まずいかもしれないと感じたら、放置せず、トラブルに発展しないうちに対処するのが得策です。
相手が不機嫌だけど、思い当たる節が何もない。だから、どうやって話しかければいいのかもわからない、と行動を躊躇してしまうこともあるかもしれません。そんなときは、気まずいかもしれませんが、率直に「何か失礼なことをしちゃった?」と聞いてしまうことです。誤解なら解くこともできるし、何かの言動で傷付けていたら、謝ることができます。もし理由を教えてくれなくても、相手は「自分の気持ちを汲み取ろうとしてくれた」とあなたを評価し、それ以上こじれることも避けられるでしょう。



誰にでも「どうも苦手……」という人は存在します。避ければ避けるほど、苦手意識は増幅するもの。そんな相手こそ、プライオリティを高めに設定して、積極的に話しかけるという手段が実は効果的です。こちらから声をかけたり、連絡事項があれば真っ先に連絡したりする。主導権を握れば振り回されることもなく、ふと気付けば上司からの信頼も得られ、良好な関係性になっていた、なんてことも期待できます。
苦手な人こそ先手アプローチが効果的という話をさせていただきましたが、それでもどうしても肌にあわない、どうしようもないレベルで苦手な人というのはいると思います。一度芽生えた嫌悪感や否定的な感情というのは、アレルギー反応と同じように、簡単に払拭できるものではありません。修復できない関係性の構築で心身をすり減らすのであれば、転職や転校を考えるなど、思い切ってガマンをしないで心機一転、新しい環境に移ってしまうというのもいいと思います。


人間関係を頑張りすぎて疲れてしまっては元も子もありません。うまくバランスを取りながら、自分の心を守るために意識しておきたい二つの心構えについて、内藤先生にお聞きしました。

アイオワ大学のジェリー・サルスの研究によれば、同僚や知人、配偶者などに気を遣う、人当たりのいい人ほど人間関係に疲れやすいという結果があります。相手を喜ばせたい、楽しませたいというサービス精神が旺盛な人は、心が疲れてしまいやすいので、要注意。
自分が快適な状態でいられる対人数や時間、シチュエーションを調べて、1日に会う人数や状況や時間をコントロールしましょう。自分が壊れてまで誰かを持ち上げる必要はありません。疲れてしまうその前に、誰にも会わない日を決めるなどをして、自分を休ませましょう。

人間の心は、実は私たちが想像しているよりも強い回復力があります。良い出来事ほど容易に思い出すことができ、不愉快なことは自然に忘却する「記憶の楽観主義」と呼ばれるメカニズムがあるのです。辛いことがあったとき、誰かに打ち明けたり、SNSに投稿したりすると、一瞬はスッキリしても、嫌な記憶は更新されてしまいます。
ネガティブな思い出を引っ張り出しそうになったら、愉快な思い出にスイッチ。幸せな気持ちを幾度も味わうことで、人間は立ち直れるのです。


春は、人との出会いが多い分、ハッピーな出来事ともたくさん出会えるチャンスです。
笑顔と聞き上手で、「はじめまして」を楽しみましょう。まずは自分自身が「ご機嫌」になることを意識すれば、きっとその後の人間関係はうまくいくはずです。

監修
内藤誼人
監修内藤誼人
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。 慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。 社会心理学の知見をベースに、ビジネスシーンを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。『人間関係に悩まなくなるすごい心理術69』(ぱる出版)、『世界最先端の研究が教える新事実 対人心理学BEST100』(総合法令出版)など、著書多数。
- ※本記事は、2024年7月時点の内容です。
- ※本記事は、当社が内藤誼人様に監修を依頼して掲載しています。
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「はじまり」の季節である春は、将来について考える絶好の機会でもあります。新生活の準備の一環として、保険についても考えてみませんか? 明治安田では、ライフステージの変化にあわせて最適な保障を受けられる保険や、一生涯の保障を受けながら将来の資金準備をはじめられる保険など、これからの人生を見据えた商品をご用意しています。安心できる将来のために、万一のリスクに今から備えませんか。