※本記事は、2025年7月時点の内容です
超高齢化時代を迎えつつある日本。厚生労働省の調査では、65歳以上の約5人にひとりが介護または支援を必要とする状態という報告※があります。いつやってくるか分からない親の介護。「まだ両親とも元気だから大丈夫」と先延ばしにして、突然やってくる介護と仕事の両立に慌てたり、親の気持ちを尊重できずに揉めたりして、後悔を残してしまうケースは少なくありません。そこで事前の備えとしておすすめなのが、将来の暮らし方や介護の希望について親と話しあう「家族会議」を開くこと。全国で介護サービスを展開する看護師の神戸貴子さんに、話しておきたい内容やスムーズに進めるためのコツを伺いました。
※ 出典:厚生労働省「介護保険事業状況報告の概要」令和7年4月暫定版
家族会議とは、共通のテーマを立てて家族みんなで話しあうこと。親が老後を迎えるタイミングになると、この先どんな介護・医療を受けたいのか、介護にかかる費用はどうするか、人生のゴールをどう迎えたいのかなど、親の今後の生活について家族で話しあうことが重要になります。事前に認識あわせをしておくことで、親が突然の病気などで意思の疎通が難しくなった場合にも、本人の意思を尊重して介護が進められ、介護する側も「本当にこれでよいのだろうか」という不安を軽減できます。介護にかかるお金や遺産などのデリケートな問題について話しておけば、家族間のトラブルも抑えられます。
介護で一番大事なのは、本人の気持ちを尊重すること。そのためにも、普段から親の健康状態や生活状況を把握し、また意思の疎通ができる元気なうちに「家族会議」を開いて親の希望を確認しておきましょう。
話しあっておきたい内容は、親の健康状態や生活状況などによって変わります。下記のリストを参考に、何を話すべきか、事前に決めておくとよいでしょう。
掃除洗濯などの家事や、買い物など、本人が行動面で不便に感じていることを確認しておきましょう。具体的な改善策を検討しやすくなります。また親と離れて暮らしている場合は、親の親しい知人や交友関係も把握しておきたいもの。何かあった際に頼れる存在になってくれます。既往歴や服用している薬、かかりつけ医なども、いざというときに慌てずにすむよう、確認しておきましょう。
介護が必要になった場合、在宅サービスを使って家で過ごしたいのか、いずれ施設に入りたければ、どのような施設がいいかの希望を確認します。介護サービスには公的・民間のものがあり、かつ訪問型、通所型、短期入所型など利用形態もさまざまです。介護サービスの形態や利用できる内容については、地域包括支援センター※や自治体の窓口で情報収集や相談が可能です。また病気が見つかったらどんな医療を受けたいか、どこまでの治療を望み、延命治療をどうするかも話しあっておきましょう。
- ※ 地域包括支援センターは、慣れ親しんだ地域で安心して暮らせるよう、福祉・介護・医療・健康などのさまざまな面から高齢者をサポートする総合相談窓口
現在の経済状態や財産(預貯金、年金、借り入れ、保険、固定資産など)について確認しましょう。介護にかかる費用は親の資産でまかなえるか、あるいは家族や兄弟で分担できるのかといったお金の話は必須です。受けたい介護や医療の希望が事前にヒアリングできていると、費用の見通しも立てやすくなります。
誰がどのように介護にかかわるか、役割分担を決めましょう。その際は、「小さな子どもがいるから日中の見守り担当」など、各家庭の事情をふまえて、負担がひとりに偏らないようにすることが大切です。また、介護事業所やケアマネジャーなど、外部との連絡窓口はひとりに絞るのがおすすめ。情報が集約されて対応に漏れが出にくくなり、介護全体の連携がスムーズになります。
例えば認知症にかかり徘徊した場合は、警察か自治体の民生委員へ、骨折など大きなケガや病気の場合は、救急車やかかりつけの病院へ連絡など、緊急時の対応と連絡先の一覧を作っておくと、慌てずに対応できます。
人生の最期を自宅で迎えたいのか、それとも施設で迎えたいのか。終末期の過ごし方について確認しておくことで、後悔のない見送りにつながります。また、生きることや死ぬことについての考え方、いわゆる「死生観」については、できれば日ごろから話しあっておくことも大切です。そうした対話は、「これからの人生をどう生きるか」という前向きな心構えにもつながっていくはずです。
急な介護で慌てないために。
元気なうちから介護への備え、はじめませんか?
家族会議で本人の希望を整理することは大切ですが、同時に欠かせないのが経済的な備えです。介護は心の支えとお金の両方が必要になるため、「話しあい」と「保障の準備」をセットで考えておくと安心です。明治安田では老後をサポートする保険をご用意しています。
身近な家族だからこそ、素直に話がしにくかったり、つい感情的になったりしてしまうこともあります。そこで家族会議をスムーズに進めるためのポイントをご紹介します。
気心の知れた家族でも、「介護」という改まったテーマは話しづらいかもしれません。将来の「家族会議」に備えて、日常の会話のなかで「介護」という言葉が自然と出るような環境を、普段から少しずつ作っておくのが理想です。例えばテレビで芸能人の認知症や病気の話題が出たときに、「どんな治療を受けたい?」などと、親に聞いてみるとか。あるいは、親自身が祖父母の介護をしているのであれば、「お父さん・お母さんの負担を軽くするために、家族みんなで介護の勉強をしよう」と提案してみるのもおすすめです。
家族会議に参加するメンバーは、介護を受ける本人はもちろん、配偶者や子どもなど、介護を担う家族全員が集まるのが理想的。とはいえ話しづらいテーマだけに、いざ話そうと身構えると、かえって気まずいもの。家族会議のためにわざわざ集まるよりも、年末年始やお盆など家族が揃う機会が絶好のチャンスです。兄弟がいないひとりっ子家庭の場合は、おじ・おばや、話の内容によってはケアマネジャーなどに同席してもらうのもよいでしょう。
兄弟姉妹など介護するメンバーそれぞれの仕事や生活状況も把握しておくと、話しあいがスムーズです。「今年は子どもが受験生」など、それぞれの状況や得意不得意にあわせて役割分担ができます。できれば事前に、介護に対する考え方やどこまで協力できるかも、話しあっておくとよいでしょう。SNSなどのグループを作って、メンバー間のやりとりをすべてそこで行なえば、参加が難しい兄弟姉妹にも全体の流れを把握してもらいやすくなります。
元気なうちに話を切り出そうとしても、「まだ元気だから大丈夫」とはぐらかされたり、拒否されたりしてしまうこともあります。最初は「最近暮らしで困っていることはない?」といった、身近な話題からはじめるのがポイント。少しずつ会話を重ねていき、話に慣れてきたら、医療や介護についての希望など、踏み込んだ内容にもつなげていきましょう。芸能人の病気の話題や訃報に触れたとき、親戚や知人の法事のあとなどには、「お父さん達はどうしたい?」と切り出しても抵抗なく話ができることもあります。
家族がどれだけ介護の必要性を説いても、本人が素直に受け入れるとは限りません。「まだ自分には介護は必要ない」と感じている人も多いものです。そんなときは正論をぶつけるよりも、思わず行動したくなるような、気持ちに寄り添ったアプローチが効果的です。例えば、「ヘルパーさんを頼もうか?」とストレートに言うよりも、「隣の○○さんも介護サービスを利用しているらしいよ」とさりげなく興味を引いてみるのがおすすめです。
介護や終末期、お金の話となると、ときには感情的になってしまうことも。そんなときには、自宅からレストランに場所を移してよそ行きの気分で話したり、疲れが少ない朝の時間帯に話したりなど、場所や時間を工夫することで冷静に話しあいができることもあります。子どもたちの意見になかなか納得しない場合は、親が信頼する親類や知人を会議に呼ぶのも手。信頼する人に事前に話を通しておくことで、うまく話がまとまることもあります。
「会議そのもののハードルが高い」という人は、家族みんなでエンディングノートを書くのも一案。エンディングノートは、自分自身のもしもに備えて、家族が判断や手続きを進める際に必要な情報を残したノートのこと。家族のためだけでなく、本人が望む最期を迎えるための意思表示としても役立ちます。
家族会議で親の今後について話しあうことは、将来やってくる遠距離介護や、仕事と介護の両立への備えとなり、親も子どもも自分らしい生活を送るためにとても大切です。そして、一回の話しあいだけで終わらせないことも、大事なポイント。人の考えは時間とともに変わるうえ、本人の健康状態、介護する側の家庭環境にも左右されるものだからです。ぜひ年末年始やお盆などの節目に、みんなで話しあいを重ねてみてください。
監修
神戸貴子
監修神戸貴子
看護師、ケアマネジャー。N.K.Cナーシングコアコーポレーション合同会社代表。自らの子育てや介護の経験から、介護保険適用サービスでは“介護をする側”にサービスが行き届いていないことを実感。介護を理由に夢や希望をあきらめない社会の実現に向けて、2014年、ビジネスケアラーを支援する看護師サービス「わたしの看護師さん®」を創業。2021年から行政とともにヤングケアラー支援事業も行なう。ビジネスケアラー支援のため、各企業の介護相談窓口や研修も担当している。共著に『介護のことになると親子はなぜすれ違うのか』(学研)。
- ※本記事は、2025年7月時点の内容です。
- ※本記事は、当社が神戸貴子様に監修を依頼して掲載しています。
- ※本記事は、監修者の知識や経験を踏まえて執筆しています。
急な介護で慌てないために。
元気なうちから介護への備え、はじめませんか?
家族会議で本人の希望を整理することは大切ですが、同時に欠かせないのが経済的な備えです。介護は心の支えとお金の両方が必要になるため、「話しあい」と「保障の準備」をセットで考えておくと安心です。明治安田では老後をサポートする保険をご用意しています。