
老後を快適に、かつ安心して過ごすためのリフォームをするためには、やるべきことの優先順位をよく考えることがポイント。では、何を優先すべきかというと、まずは家の寿命を延ばすためのメンテナンスをしっかりと行ないます。次に、断熱性能を高めて快適に住める家にし、そして生涯安心して暮らせるようにバリアフリー環境を整えます。あとは予算に応じてやりたいことを盛り込んでいきます。
メンテナンスで「生涯住める家」に

一戸建ての場合、家を長持ちさせるためのメンテナンスを最優先で考えましょう。そのためにも家の構造体に関するメンテナンスは重要です。
例えば、屋根の老朽化による雨漏りなどは、突然起こります。そうなると屋根だけの問題でなく、家全体に影響が及んでしまうので、先手を打つ必要があります。屋根には、和瓦、スレート、金属などが使われています。各材料の耐久性や下地の状態によって寿命は異なりますが、概ね屋根の寿命は30年が目安になります。それまでには葺き直しや葺き替えをしておくのが良いといえます。
また、屋根のほか、注意しておきたいのが水道管です。なぜなら、鉄が使われている昔の鋼管といわれる水道管は、そのままにしていると管のなかが錆びて水漏れ事故につながる可能性があるからです。2000年代からは、水道管は耐用年数の長い樹脂管が主流となり、錆びの心配もなくなりました。もし鋼管を使っている場合は、いずれ交換が必要になることは変わりないため、早めに樹脂管に交換し、メンテナンスを行なうことをおすすめします。
断熱性能を高めて快適・安心な家に

断熱リフォームはぜひ前向きに検討したいポイント。冷暖房効率が高まることで光熱費を抑えられるうえに、家のなかの温度差をなくすことで快適に過ごせて、心臓への負担が少ない安心な暮らしが手に入ります。
内窓の設置や床下や天井裏は、既存の建物に断熱材などをプラスするだけで断熱性能を高められるので、コストパフォーマンスの高い断熱リフォームといえます。外壁の断熱は、壁を剥がしてまた戻す作業が発生するので、例えば外装材を張り替える、間取りの変更で壁を動かすなど、ほかの工事とあわせて行なえば、手間と費用を抑えることができます。
特に窓の断熱は今、国を挙げての補助金制度が充実しているので要チェックです。
バリアフリー化で暮らしやすさを高める

老後を見据えて暮らしやすい家にするためには、バリアフリー化も大事。例えば、下記のようなバリアフリー改修を行なっておくと良いでしょう。
一戸建てなら、寝室にできるような部屋を1階につくっておきましょう。浴室はユニットバスにして段差と温度差のない状態にするのがおすすめです。床の段差の解消などのバリアフリー化については、工事が大掛かりになりやすいため、大型リフォームを計画するときに同時に行なっておくと良いでしょう。手すりの設置などは後からでもできます。
収納の「高さ」も重要。高齢になると、高い場所まで手を上げにくくなったり、低い場所からものを引き上げにくくなったりするので、キッチンの吊り戸棚や床下収納、はしごを使う小屋裏収納などは出し入れの作業が難しくなります。収納は肩から膝の高さまでに収まるようにつくりましょう。
また、年を重ねると視力が下がってくるので、照明のバリアフリー化も重要。キッチンの手元や玄関などのほか、階段や廊下などの足元を明るくするフットライトを設置するなどして、照明はできるだけ明るくするのがポイントです。照明を変更するには壁や天井の裏にある電気配線の変更も必要になるため、壁紙の貼り替えついでに照明について見直してみるのも良いでしょう。

老後に備えたリフォームをするベストなタイミングは、それぞれの家族や家の状態などによって変わりますが、定年退職前後となる60代に行なう人が多く、それ以降に行なうのに比べてさまざまなメリットがあるため、早くからリフォームをするのがおすすめ。

国土交通省『令和4年度 住宅市場動向調査』によれば、新築で取得した住宅をリフォームした人の平均築後年数は26.3年となっており、リフォーム住宅に住む世帯主の平均年齢は60.2歳。定年退職でまとまった資金が手に入る、家で過ごす時間が長くなって家に目が向くなど、ライフステージが大きく変化するタイミングでリフォームを考える人が多い傾向があります。
また、60代は、子どもの独立、親との同居などライフステージの変化が生まれやすく、結婚して建築・購入した家の老朽化が気になる時期でもあります。こうしたさまざまな要因が重なり、大型リフォームを検討する一つのタイミングとなります。

例えば住宅の断熱性能を高めるリフォームは、サッシの寿命などにもよりますが、だいたい30年はもちます。つまり70代、80代になってからやるより、60代のうちにやっておいたほうが、早くかつ長く快適な生活を送ることができます。詳しくは後述しますが、特に断熱リフォームに関しては、国の補助金制度が充実しているのも注目ポイントです。
また、高齢になるに従って体の不調にあわせた改修がメインになったり、家はあと10年もてばいいと最低限のリフォームだけになったりと、リフォームのモチベーションが下がってくることも。現代の60代は気力や体力、資金や時間にも余裕があるので、できるだけ元気なうちに計画することが老後の安心につながります。
以上、早めにリフォームを行なうメリットをご紹介しましたが、リフォームは、「一度やれば終わり」というものではありません。機器類には寿命があるため、一度リフォームを行なっても、生きている間にまたリフォームが必要になる場合があることを想定しておくことも大切です。
「今やらなきゃ」という意識だけでまだ十分使えるものまでリフォームしてしまったり、「今リフォームしておけばもう大丈夫」と資金を使い切ってしまい、今後のリフォームに対応するための予算がなくなってしまうなど、早めにリフォームを行なうことでかえってデメリットが生じてしまうことも。リフォームは、計画的に行なうことがとても重要です。
安心して暮らせる住まいづくりに
プラスして健康リスクにも備えませんか
快適で安心できる住まいづくりとともに大切なのが、やはり体の健康です。年齢を重ねて身体機能が衰えてくると、病気やケガのリスクも高まります。明治安田では、認知症や介護など、老後の健康リスクに備えた保険をご用意しています。

やるべきことがわかったところで気になるのが、リフォームにかかる費用。近年は資材の高騰などもありますが、例えば築30年の一戸建てのリフォームの場合の目安としては、概算で下記の費用がかかるといわれています。

屋根
スレート屋根・瓦屋根の葺き替え
150万円〜
屋根材や下地材の傷みがひどい場合や、カバー工法による重ね葺きをしている場合などに、新しい屋根材を下地から葺き替える工事を行ないます。
外壁
モルタル外壁の塗装
100万円〜
ひび割れなどの不具合が生じたり、塗膜の寿命がつきる前に行ないましょう。また、一般的にシーリングは10年、サイディングは30年程度が交換の目安。
バルコニー
防水メンテナンス
30万円〜
行なった方が良いのは、トップコートの塗り替え。ルーフバルコニーなどの紫外線を受けやすい場所は劣化がしやすいため、10年ごとに再塗装をしましょう。
防蟻
防蟻処理(5年ごと)
15万円〜
シロアリによる被害は表から見えないため、予防に徹することが大切。薬剤を散布する防蟻処理などは5年ごとに行ないましょう。

窓
内窓の設置
140万円〜
室内側に新たに断熱性の高い樹脂製のサッシを追加。内窓自体の断熱性能に加え、既存の窓との空間にある空気層によってより断熱効果を発揮できます。
玄関ドア
断熱玄関ドアに交換(カバー工法)
45万円〜
玄関の断熱・気密性を高め、電子ロックシステムなどの最新機能をつければ防犯にもつながります。
床下
床下から断熱材を充填
40万円〜
屋根
天井裏または屋根裏への断熱材充填
40万円〜
外壁
外壁に断熱材充填(内部より)
150万円〜
床下断熱と天井裏または屋根裏への断熱材充填を同時に行なうと、断熱効果が高まります。
換気
標準的な換気システムの設置
15万円〜
断熱工事によって家中の気密性が高まるため、断熱工事を行なった際には必要になってくる工事。

耐震
耐震補強工事
100万円〜
建築基準法改定前に建てられた家は耐震基準が現行よりも緩いため、耐震補強工事が必要な場合があります。
制震
制震システムの設置
50万円〜
制振システムを備えると、地震のときの揺れを小さく抑えられるというメリットがあります。
水道管
水道管(鋼管)を樹脂管へ更新
30万円〜
樹脂管の想定寿命は55年以上。鋼管を使用している場合、できるだけ早めに交換をすることをおすすめします。
浴室
在来浴室からユニットバスへの改修
120万円〜
床段差を解消し、浴室を断熱化することができます。
設備機器
キッチン、洗面化粧台、トイレの交換
150万円〜
内装
天井・壁クロス張替、床フローリング張替、建具交換等
350万円〜
電気・ガス等
スイッチ・コンセント・分電盤交換、配線・配管等
65万円〜
- ※ 高橋みちる『やらなければいけない一戸建てリフォーム』をもとに、編集部が数値を調整し掲載。
- ※ 掲載した価格は目安の金額です。リフォーム会社によってかかる費用も変わるため、実際の金額とは大きく異なる場合があります。個別のケースはリフォーム会社に相談しましょう。
例えば、水道管が鋼管の場合は、配管工事の際にはキッチンやトイレ、洗面化粧台などを外して工事を行なうことがあるため、設備機器類の交換と同時に水道管も交換すると余計な工事を行なう手間が省けます。工事を行なう際に、外装材、内装材、設備を同時にまとめて交換すれば、コストパフォーマンス良くリフォームを行なうことができます。

負担の大きいリフォーム費用を抑える方法として、補助金制度や税負担を軽減する制度の活用があります。特に省エネに関しては、手厚い制度が充実しています。予算に達し次第終了する制度もあるため、情報はしっかりチェックすることをおすすめします。次にご紹介する制度のほかにも独自の制度を設けている自治体もあるので、詳しくはリフォーム会社に確認しましょう。

省エネ性を高めるリフォームに対する補助金制度。対象となる4つの事業のうち、特に補助額の大きい「先進的窓リノベ2024事業」では、既存窓のガラスを複層ガラスに交換、内窓を設置、外窓を交換するなどで基準を満たす性能にすれば、最大200万円の補助金が受けられます。さらに高効率給湯器の設置に対して受けられる補助金制度などもあります。
長期にわたって安全で快適に住める家にするためのリフォームに対する補助金制度。家の耐震性を高める耐震補強工事、断熱性や気密性を高める断熱工事、バリアフリー化のためのエレベーター設置や段差解消工事などが対象となり、最大210万円までの補助金が受けられます。
要介護または要支援の認定を受けた人と住む家の、介護を目的としたリフォームが対象。手すりの設置、段差の解消、通路の拡大や転倒防止を目的とした床材への変更などの工事に対して、最大18万円が給付されます。


快適で安心な暮らしのためには、性能が高く、家族にあった住まいが欠かせません。リフォームによって、生涯にわたり安心できる住まいを手に入れるには、信頼できるリフォーム会社を味方にすることが大切です。プロの知恵を借りつつ、対等な立場で相談できるよう、積極的に情報収集をして知識を身に付けましょう。

監修
高橋みちる
監修高橋みちる
職業訓練校、設計事務所、地元の不動産建売業者、ゼネコンのリフォーム子会社などを経て、独立。ハウスメーカーのオーナーや一般住宅のリフォームプランニング、住宅瑕疵保険の現場検査、既存住宅状況調査(インスペクション)などを行なう。2015年にはハウスメーカーにてHOUSE OF THE YEAR 2014リフォーム部門最優秀賞を受賞。リフォームセミナーの講師として全国各地で活動中。
- ※本記事は、2024年5月時点の内容です。
- ※本記事は、当社が高橋みちる様に監修を依頼して掲載しています。
安心して暮らせる住まいづくりに
プラスして健康リスクにも備えませんか
快適で安心できる住まいづくりとともに大切なのが、やはり体の健康です。年齢を重ねて身体機能が衰えてくると、病気やケガのリスクも高まります。明治安田では、認知症や介護など、老後の健康リスクに備えた保険をご用意しています。住まいだけではなく、健康に関しても「もしも」に備え、より安心な将来をめざしませんか。
募Ⅱ2401038ダイマ推