日本国内の機関投資家として初本格的な電子トレーディングをスタート

平成15年3月13日

安田生命保険相互会社(社長 宮本三喜彦)が、安田投資顧問株式会社(社長 阿部一誠)、ブルームバーグL.P. (CEO レックス・フェニック)、および日本フィッツ株式会社(社長 村住直孝)と共同プロジェクトとして開発を進めて参りました「有価証券フロントシステム」が、この度、本稼働しましたのでお知らせ致します。

各社概要

当システムの稼働に伴い、ブルームバーグL.P.のブルームバーグ™ ポートフォリオ・トレード・オーダー・マネジメント・システム(以下POMS)を利用した証券会社12社とのFIXプロトコル(注1)による株式電子取引を開始致しましたが、FIXプロトコルを使った本格的な電子取引の実施は日本国内の機関投資家として初めてのケースになります。

安田生命グループでは、運用業務の効率化、今後想定される証券決済制度改革への対応準備を目的として当プロジェクトを一昨年より進めて参りました。システム開発を昨秋までに完了させ、2ヶ月にわたる試験運用を実施した上で有価証券フロントシステムを本稼働致しました。これにより、今後加速するであろう証券取引の電子化、証券決済インフラの制度改革にも充分対応できるシステムを確立したことになります。

なお、有価証券フロントシステムの特徴、安田投資顧問、ブルームバーグL.P.および日本フィッツ社との共同プロジェクトの内容は次項以降の通りです。

(注1)FIX(Financial Information eXchange)プロトコル
証券取引の際にリアルタイムな電子メッセージ交換を実現するために開発された国際的な標準規約です。

当プロジェクト実施の背景

ここ数年来の資産運用業界におけるシステム問題の最大関心事として、証券取引のプロセスを電子的に処理する「End to End のストレート・スルー・プロセッシング(STP:注2)の確立」が挙げられます。STP化の背景には、決済リスク・事務処理コストの低減を目的として、日本のみならず全世界で取り組まれている証券決済制度改革、証券取引の電子化の進展があります。

(注2)STP(Straight Through Processing)
STPとは執行、約定、清算、決済などに関わる企業間および企業内の手続きを電子化して、一貫した業務処理を実現する自動連動処理を表わします。金融機関においては、STP化により約定から決済までのリスクを減らし、コストを抑えながら業務の効率化を図ることが可能となります。

経緯

安田生命グループでは上述のような業界動向にいち早く対応すべく、平成12年8月に社内プロジェクトチームを発足させ証券決済制度改革への対応について検討を重ねてきました。その結果、トレーディングシステムの基幹インフラとしてブルームバーグL.P.のPOMSを採用し、また、約定照合やシステム間のデータ接続を行なうサポートシステムを日本フィッツ社に開発委託する方針を決定し、4社合同の開発プロジェクトを平成13年8月よりスタートさせました。
POMSを採用した理由としては、証券電子取引の標準仕様であるFIXプロトコルの対応についてすでに米国で高い実績があり、日本国内の証券会社ともすでに接続・稼働実績があること、国内外を問わずグローバルな資産の銘柄・価格情報、分析ツールを一元管理できる点、トレーディングシステム自体にコンプライアンスチェック機能が盛り込まれている点を考慮致しました。
また、開発委託先として日本フィッツ社を採用した理由は、証券、銀行など金融/証券業界において多数のシステム構築の実績があり、T+1(注3)/STPソリューションに早くから取り組んでいる点、および安田生命グループの勘定系システム関連や、ブルームバーグL.P.のシステム関連における開発実績がある点を考慮致しました。

(注3)T+1
約定日の翌営業日が決済日であることを意味します。また、約定から決済までの期間短縮という証券決済制度改革そのものを示す場合もあります。資金ショート等の決済リスクの低減を目的として、全世界の市場関係者が証券決済制度改革に取り組んでおります。

スキーム

当プロジェクトのスキームの概略は「有価証券フロントシステム概要」の通りとなります。

有価証券フロントシステム概要

(1)FIXプロトコルを利用した電子トレーディング

ブルームバーグL.P.の専用回線ネットワークを活用してファンドマネージャー/トレーダー間の注文・執行状況連絡、トレーダーによる取引管理、証券会社への電子発注、リアルタイムの出来情報の受信などを行ないます。特に、証券会社との電子発注はグローバルスタンダードであるFIXプロトコルを利用して行ないます。

(2)社内STPの実現

日本フィッツ社が今回開発したサポートシステムにおいて、POMSで受信した出来情報と証券会社から受け取る約定連絡との照合を行なうとともに、POMSと勘定系システム間の各種コード変換、勘定系システムへの接続データの作成を行ないます。
POMSとサポートシステムを組み合わせることにより、発注から約定照合、そして勘定系システムへの取引データ入力までの処理において極力手入力を排除することが可能になり、約定事務処理の精緻化、効率化を実現しております。

今後の展開について

当プロジェクトの目的は、今後加速するであろう証券取引の電子化、証券決済制度改革等の環境変化に対応できる業務システムを構築するとともに、当システムを軸として運用パフォーマンスの向上、運用業務の効率化によるコストの低減に努め、ひいては安田生命グループのお客様のニーズに対してより高い運用競争力でお応えすることにあります。また、外部STPを実現するための鍵となる電子発注先証券会社につきましてもシステム環境が整い次第順次拡大していく予定です。
なお、安田生命は明治生命保険相互会社と、総代会の承認と関係当局の認可等を前提とし、平成16年1月1日に「明治安田生命」として合併することに基本合意しておりますが、合併後の新会社におきましても当システムをフロントオフィスの業務システムとして利用する予定です。

以上