平成15年 社長年頭挨拶(全文)

平成15年1月6日

安田生命保険相互会社
取締役社長 宮本三喜彦

皆さん あけましておめでとうございます。
いよいよ合併まであと1年となりました。私の社長としての年頭挨拶は、今回が最後となります。統合に向けたこれまでの皆さんの真摯な努力に対し、心より感謝いたします。

さて、まず冒頭に昨年の経済環境について振返りたいと思います。日本経済は、過去に例を見ないような急速かつ大幅な生産調整が行われたなかで、世界経済の回復を背景に輸出が増加を示し一旦は、景気が底入れしたかに見えました。しかし、他方で、企業や銀行のバランスシートの悪化や雇用の調整が引き続き進行し、これを受け家計の消費行動も沈滞している状況が続いています。下期になると世界的な株価下落が見られるなかで、世界経済の先行き不透明感が強まり、日本の株式市場においても株価が持ち直すどころかバブル崩壊後最安値を更新する状態で推移しました。デフレ対策、不良債権問題も長期化の様相を呈してきています。今年は不良債権問題についてもその副作用が心配であります。このような状況では景気回復に対しては悲観的にならざるを得ないでしょう。そして勿論このようなデフレ経済の長期化の、生保業界に与える影響も計り知れないものがあります。
生保業界は個人所得の伸び悩み、少子・高齢化の急速な進展による、死亡保障マーケットの縮小、規制緩和による競争の激化、保有純減、逆ザヤ、株の評価損等依然様々な経営課題を解消できない厳しい状況が続いています。
生保会社がこのような厳しい経済環境にあっても、お客さまの負託に応え、新しいサービスを提供し続けるためには、本格的、抜本的な「次なる手」を大胆に打ち出す必要があります。

その意味でも、私たちにとって平成15年は特別な年になります。安田生命として最後の年となりますが、一方で明治生命との合併という、歴史的なビッグプロジェクトを成功させる非常に重要な年であります。このプロジェクトのもつ社会的な影響力は極めて大きなものがあります。私は、明治生命との合併が社会の生命保険に対する不信感の払拭、さらには業界の活性化に大きな影響を与えるものと確信しております。そのために重要なのは、より早く合併効果を実現し、新会社が社会から高く評価される存在になることです。今年は組織や業務運営においても、できるかぎり一体運営を行います。実体的に合併モードに入ることにより、両社の融和を図りスムーズな合併ができるよう対応していきます。皆さんもこの大きなものを創造するための意識の切り替えをお願いしたいと思います。

私は、両社が「イコールパートナーにふさわしい業績と高品質態勢を構築すること」「現在より少しでも良い会社になって新しい会社に引き継ぐこと」こそ相手に対する礼儀であると常々言ってきました。より良い形で明治生命と一緒になるということは、具体的には営業純増反転、事業費効率の改善という重要課題を解決することです。
先ず営業純増反転でありますが、営業部門においては企業収益や個人消費も伸び悩む厳しい環境の中、営業純増反転の実現に向け奮闘いただいております。昨年は減少マネジメントの改革として乗換対策等減少抑止への取り組み強化により、解約は減少し、減少契約高は改善の方向にあります。しかし失効Sは改善されておらず、まだ十分な成果が出ているとはいえません。今年も継続して取り組み強化をお願いします。
当然ですが営業純増反転は減少契約高の減少、新契約高の増加があってはじめて達成できるものです。その点で減少契約は改善を見ているものの、個人保険の新契約高はなかなか目標レベルに達せず、大変厳しい状況であります。こういう厳しいときこそ「健康物語フルケア」で高品質提案を徹底して行い、新規顧客を発掘し、新契約生産力をアップすることが重要です。営業純増反転の完達に向け、更なる努力をお願いします。
次に事業費効率の改善でありますが、昨年度も全社総合収益力の向上に向け、徹底した事業費縮減に取り組んできました。上位他社と比較し、事業費効率面で劣位にあるのは明らかであります。今年も、再度経営資源配分の徹底的な見直しに着手します。皆さんも自分自身の課題として、事業費縮減に向けた本気の取組みをお願いします。

合併の意味を一言で申せば「変革と創造」の実現であります。しかし、応々にしてその志を妨げるものがあります。そこで、次に五つのことを列挙して、注意を促したいと思います。

第一点。
自社内での評価を重視するあまり、全ての行動を顧客や相手の会社という外部ではなく、内向きに焦点を合わせ、内と外とのズレに目を閉ざしていないか。
第二点。
さまざまな言い訳を使い、あの手この手で改革を回避しようとしていないか。
第三点。
自分の担当を超える視野を持たず、閉じこもったまま、他者からの関与を拒否していないか。
第四点。
可能性を潰して、百点満点の絵を見ないと動き出せず、具体的なアクションが後手にまわっていないか。
第五点。
新しい会社にふさわしいあるべき姿を追求せずに現状に固執し、そのやり方を押しつけていないか。

気付かない中で心に潜むこのようなやっかいなものを追い出して、真の変革と創造のフィールドで思いっきり活動して欲しいと思います。

最後に、サムエル・ウルマンの「"青春"とは」という詩から一節を引用します。

「揺るがない意志、豊かな創造力、
抑えようのない情熱、
臆する心を斥ける果敢な勇気、安易さを拒む飽くなき冒険心」

この様な心の様相を青春というのだ、と彼は言っています。

「揺るがない意志、豊かな創造力、
抑えようのない情熱、
臆する心を斥ける果敢な勇気、安易さを拒む飽くなき冒険心」

こうした心をもって統合の一大事業を完遂してもらいたいと思います。

この新しい年が安田生命と皆さんにとって素晴らしい年でありますよう祈念して、私の年頭の挨拶とさせていただきます。

以上