平成14年 社長年頭挨拶(本文)

安田生命保険相互会社
取締役社長 宮本三喜彦

皆さん、あけましておめでとうございます。
21世紀の幕開けにあたる昨年は、当社にとって厳しい試練の年となりましたが、全員の努力により、しっかりとした成果を残せました。まずもって皆さんの1年の働きに対し、感謝の意を表したいと思います。

はじめに、平成13年の環境と生保業界の動きを振り返りたいと思います。
経済環境については、米国経済の減速の影響を受けるかたちで景気が一段と低迷し、厳しいものとなりました。小泉政権の構造改革に期待する一方で、現実には企業の業績悪化に伴うリストラの進行と失業率の悪化が、国民の不安感を一層募らせています。
社会環境については、少子・高齢化の進展が従来型の社会保障制度の継続を困難なものにし、年金、医療、介護制度などの抜本的な見直しが推し進められています。
これらの経済・社会環境の変化は、「自助努力社会」の到来を一段と早め、個人は主体的に保障・貯蓄を準備することが求められるようになりました。その結果、自助努力の受け皿を提供する保険会社の使命はさらに重要になったと言えます。
また昨年は「米国同時多発テロ」という大惨事が起こりました。我々は、普段の生活の中に存在するリスクが想像を超えるほど多様且つ巨大なものであることを痛感し、リスクに備えることに十分過ぎることはないことを再認識しました。国内においても、新宿歌舞伎町での火災をはじめ多種多様な人災や自然災害などが我々の身の回りで起きています。こういう中で改めて国民の保険加入状況を見ると、世帯主の平均加入額が約2,500万円であり、平均的な家族の必要生活資金額といわれる7,000万円強には程遠い状況にあります。昨今、保険会社の破綻が続いてきた中で、保険評論家あるいは生活評論家と称する人達によって「保険の入り過ぎ」とか「保険の整理」とかが盛んに言われ、更にはそれを助長するような報道も一部見られました。しかし、まだまだ"保障の不足"の状態にあるのが現状です。「自助努力の必要性」と「リスクの多様化」が進む現在だからこそ、皆さん一人ひとりの毎日の仕事がますます意義深いものになっているのです。「不安の時代」こそ保険事業に従事していることに誇りを持ち、保険商品の提供は社会的使命であることを改めて認識いただきたいと思います。
続いて生保業界の動きを振り返ると、本邦生保を筆頭に各社が厳しい経営を強いられる中、業界再編の動きが一段と進みました。背景には、景気低迷による企業・家計のリストラがもたらした保有契約の減少と株安・低金利といった運用環境の中で生保業界の抱える逆鞘問題が益々重くのしかかっていることがあります。そして再編の主な特徴として以下の2点があります。1点目は、外資による日本市場進出をねらった破綻生保の継承であり、2点目は、熾烈な競争で脆弱化した体力や信用力の改善を企図した経営統合またはそれに向けた足がかりの構築であります。まさに競争原理がもたらした動きと言えます。一方当社に関しては、その流れとは一線を画し、一貫して独自のアライアンス戦略を遂行しています。その柱となるのが、当社の健全性と信用力を背景に進めた様々な優良企業との機能別部分提携であります。ご存知のとおり富国生命との包括業務提携で様々な成果を積み上げた他、英国ダイレクトライン社との損保事業の本格展開、スイスUBS社との海外運用委託を中心とする提携など、提携は広範囲に渡っており、当社の事業基盤の強化に寄与することを確信しています。

平成14年には、このようなアライアンス戦略の成果の摘み取りとともに、いくつかの取り組むべき重要課題があります。ここでその重要課題について3点確認します。
1点目は、何と言っても「保有純増の実現」です。平成13年度上半期の実績では、団体保険の堅調な推移、個人保険・個人年金保険の新契約高の伸展確保と、確かな手応えを掴んだ一方で、個人保険・個人年金保険の減少契約高の高止まりという課題が残りました。減少抑止なくして保有純増の実現は為し得ません。会社は今年から、保有契約を守る体制をさらに強化しますので、皆さんにおいても、お客さま一人ひとり、ご契約1件1件を守り抜く強い信念を持って仕事に励んでいただきたいと思います。
2点目は、「運用環境への柔軟な対応」です。昨年の運用環境の低迷は、ある部分経営努力の範囲を超えるものがあったかと思います。その中にあって当社は、国内株式を中心とするリスク性資産の圧縮と近年収益性の低下が著しい団体年金一般勘定資産の削減という高度なテーマに取り組んでいます。今年も引き続き、環境変化の影響を最小限に抑えるため、この取り組みを推し進める必要があります。
3点目は、「コンプライアンスの再徹底」です。近年、競争の自由化と国際化に伴い、消費者保護の観点から、コンプライアンスへの取組強化の要請は厳しさを増しています。昨年の保険業界を振り返ると、ルール違反を犯した会社が容赦のない批判・処分に晒されたことは周知のことであります。間違った行動により、今まで築き上げてきた会社の信用が一瞬にして地に落ちることも有り得ることを認識する必要があります。
以上のとおりやるべきことは山積していますが、当社はソルベンシーマージン比率や健全な財務体質にみるとおり内外から高い評価を受けています。いかに競争環境が厳しくなろうと、当社は勝ち抜く力とやり抜く力を有しています。是非、この3点の課題を解決して、さらに輝きのある会社にしようではありませんか。

お客さまのために一生懸命頑張る。すると会社が良くなる。そしてその結果、一生懸命頑張った人が良くなる。この不変の、真実の構図を今年より確かなものにする為に、敢えて昨年に引き続き、あのピーター・ドラッカーの素晴らしい言葉を引用したいと思います。
「自らの仕事をし、自らのキャリアを決めていくのは自分である。自らの得るべきところを知るのは自分である。組織への貢献において、自らに高い要求を課するのも自分である。飽きることを自分に許さないよう、予防策を講ずるのも自分である。仕事を心踊るものにするのも自分である。」
最後にこの新しい年が安田生命と皆さんにとって素晴らしい年でありますよう祈念して、私の年頭の挨拶とさせていただきます。

以上