平成13年度入社式 社長挨拶(全文)

平成13年4月2日
安田生命保険相互会社
取締役社長 宮本三喜彦

全国各地よりお集まり頂いた356名の総合職・業務職・事務職の皆さん、入社おめでとう。安田生命の全役職員を代表して皆さんの入社を心から歓迎いたします。先日発表された厚生労働省の調査によれば、今春の大学・短大卒業生の約2割が就職が決まらないという厳しい昨年の就職戦線の中、見事に自分自身に勝ち抜いた皆さんを今日ここに迎える事を嬉しく思うと同時に、これからの活躍に大きな期待を寄せております。
皆さんが社会人としての第一歩を踏み出した今年は、21世紀の幕開けという記念すべき年でありますが、当社にとっても大変意義深い年であります。日本版ビックバンもおそらくこの一両年でおおかたの形を整えてくるものと予想されます。創業以来121年、安田善次郎翁以来『顧客第一主義』『進取と堅実』の社是により、多くのお客様の支持を得ている当社も更なる努力により発展していかなければなりません。その安田生命の一員として皆さんも大いに能力を発揮し活躍できる様努力して頂きたいと思います。

さて日本経済について少し話をしたいと思います。
日本経済は今、デフレ色を強めながら危機的状況にあるといえます。東京株式市場の日経平均株価は依然低迷状態に有り、完全失業率も高い数値を示しております。また東京都区部の消費者物価指数は比較可能な1971年以来最大の下げ幅となる1.1%の下落を記録するなど、先行きの不透明感はかなり強くなっているのが実状です。特に株式相場の下落は企業の資金調達力の悪化や設備投資の抑制による事業再編の遅れにつながり、また銀行の不良債権処理能力に影響を及ぼすのは避けられません。ひいてはそれらが家計所得の減少や消費者心理の悪化につながり、1400兆円の個人マネーの行方に影響を及ぼしています。
こうした中で求められているのはその場しのぎの対処ではなく、日本経済のもつ本来の潜在能力を開放するにふさわしい抜本的な民需主導型の構造改革であり、それなくしては日本経済の安定した景気回復はありえません。遅々として進まない構造改革が「失われた10年」となり、国内外からの信頼はいまや揺らいでいるのです。
このような経済状況の下、金融業界も大きなうねりの中で生き残りをかけた戦いの真っ只中にあります。都銀は4グループに再編され、損保は合併や経営統合といった形で再編が加速し、生保においては昨年4社、つい最近も1社が破綻し、また中小生保を中心に多くの会社が外資の傘下入りをするなど混沌とした状況にあります。

そのような環境の中での安田生命の現状について少しご紹介いたします。
先ず、生命保険営業の両輪の一つである普通保険部門は『健康向上計画』の事業コンセプトのもと、広く社会の要請に応える大型介護保障を主体とする新商品『健康物語』がお客様の大きな支持を得て、2年連続して新契約高が前年度実績を上回る見込です。この2年連続というのは大手中唯一当社のみの素晴らしい快挙です。またもう一方の団体保険については業界をリードする制度企画力・提案力をもとに引続きトップシェアを堅持する見込となっております。
一方、財務体質面では不良債権は相対的に少なく、また自己資本の厚みを示す内部留保率については大手の中でトップという良好な内容を誇り、内外の格付け機関による格付けにおいてもA格以上の高い評価を得ています。
厳しい経済環境ではありますが、業績面ではこのように大変健闘しており、さらに富国生命との包括的業務提携と生保・損保・年金・投信という4つの事業を柱とした独自の戦略により更に強固な基盤を築くべく、今まさに全社一丸となって色々なことにチャレンジしています。

そこで、新入職員の皆さんに21世紀における安田生命の事業展開について紹介いたします。
まず一つ目は本日からコールセンターをさらに進化させたコミュニケーションセンターを立上げたことです。

当社ではお客様からのお問い合わせに対応するインバウンドコールとアフターフォローの一環としてお客様にお電話差し上げるアウトバウンドコールの両方を98年9月からスタートしたコールセンターでおこなっておりましたが、コミュニケーションセンターはその規模とサービスをさらに拡大したものであり、将来的にはインターネット、ダイレクトメールなど顧客情報の集約・分析・発信の中核拠点にしたいと考えています。ITと人間の心の協働で、お客様に必ず満足していただけるサービスを提供することで「コミュニケーション・ナンバーワンの会社」になることを目指しています。

二つ目は、英国ダイレクトライン社との合弁会社である「安田ライフダイレクト損害保険」が、この3月7日より営業を開始したことです。
英国ダイレクトライン社はリスク細分型自動車保険のダイレクト販売分野では今や世界一といわれる会社です。世界最先端のIT技術を持ち、データの蓄積、その解析能力は他に類を見ないものを持っており、その上ヒューマンと自己表現する顧客第一主義はこれまた抜群のものであります。
新しく営業を開始した「安田ライフダイレクト損害保険」は、リスク細分型自動車保険を契約からアフターサービスまでコールセンターを通して電話一本で提供するという従来の損保にない新しい顧客サービスを目指したもので、我社独自の損保戦略として強力に展開していく予定です。損害保険のなかでも未開発で将来性ある分野に焦点を絞り込んだものであり、これまでにない最高の顧客満足度を提供し、将来は自動車保険市場において大手並みのシェアを目指していきます。

三つ目は、当社と富国生命との間の経営全般にわたる包括的な業務提携をこれまで以上に進めていくことであります。
この提携は「実利優先」の理念のもと、現在、損害保険ビジネス・投資信託ビジネスへの共同展開、確定拠出型年金への共同取組み、介護分野など色々な事業が具体化し、さらには人材交流も行っております。互いの優点を尊重しあう関係のなかで自社の優位点を更に伸ばしていき、将来に渡る持続的な成長を確保していく為さらに研鑚を積んでいきたいと考えております。

このように安田生命では「主体性」「独自性」を維持しつつ、自社の強みを最大限発揮し、提携すべきところは世界的に力のある、ノウハウのある企業と提携していくというスタンスで事業展開を行っています。当社がまず今やるべきことは、自社の強みを伸ばしていくことに全力を傾け、企業価値を高めていくことだと考えています。

さて、ここで安田生命の一員になられた皆さんに、これから仕事をする上で是非心に留めておいてもらいたいことを申し上げたいと思います。
まず一つ目は会社の中での、仕事との関わり、人との関わりを大切にして欲しいということです。この仕事や人との関わりとは、お客様との関わり、先輩との関わり、同期の人との関わり、後輩との関わりを通じて人間というのは成長していくのであるということを先ずもって言っておきたいと思います。

「協働」という概念を用いた成長理論があります。これは、会社の成長は会社の従業員一人ひとりの成長の結果である。しかもその一人ひとりの成長というのはその会社の中で一緒にお客様の為に一生懸命仕事をする事、いわゆる「協働」によってのみ実現できるというものです。この様に人との関わりの中で仕事に励んでいただきながら自分の成長、自己実現を図っていくことが必要であると思います。

二つ目は時間の使い方についてです。

私もそうでしたが、学生の時は何でも思うように時間を使えたのに対し、会社に入ると自分で自由に使える時間が少なくなり、極端な言い方をすると当初「自由の喪失」を感じる時があるかもしれません。しかしそういう決められた時間の中で色々な人と関わりながら、いかに自分自身が自立的に主体的に活動していくかと言うことが非常に大切だと思います。まず会社の中でのそういう意味での時間の使い方、仕事のこなし方、これを自分流に作ってもらいたい。

三つ目は「強い意志」と「集中力」を持てということです。

仕事と言うのは机上の空論ではダメであり、いくら素晴らしい意見があってもそれが実現できなければ何にもなりません。具体的に自らが行動して実証していく事が求められます。その為には目標は何があってもやり抜く強い意志、またそのように努力し続ける粘り強さと集中力が非常に大切になります。私は人間の持っている潜在的な能力というものはほとんど変らないと考えています。変るとすれば、物事を最後までやり抜くという強い意志と集中力。これが非常に大切であるということです。

さて、最後になりますが、今次中期経営計画は、「新世紀中期経営計画-スーパークオリティ21-」、その意味するところは超品質。つまり「通常のクオリティーを超えた商品・お客様サービス・人材・組織・システムを備え、独自性ある経営を推進する会社」になるという事であります。
競争環境がますます厳しくなる中、大手を含めて保険料の値下げによって状況を好転させようとする会社が出てきておりますが、我社はお客様が本当に求めているのは単なる値引きではなく、超品質の人材がお客様の立場に立って最高の商品とサービスをご提供することであると考えております。そしてそのような信念の下で社会の要請に応えていく事こそが「お客様第一主義」の本当の具現となる訳です。
そして、平成13年度のスローガンはここに掲げてある「顧客とともに新世紀、一人ひとりが安田ブランド」であります。
日本版ビックバンの最終段階を迎えようとしている今、安田生命が今言われている「勝ち組」から「万全の勝者」となる為には、皆さん一人ひとりが集中力を持って努力し、そして成長し、自分自身の能力を最大限に発揮できるかどうかにかかっています。安田生命という広いフィールドで、過去の概念にとらわれない「革新的な発想」と新しい事に挑戦する「チャレンジ精神」をいかんなく発揮してもらいたいと思います。そしてこの21世紀が安田生命にとって、また皆さんにとって素晴らしく希望に満ちた時代であることを祈念しまして、歓迎の言葉と致します。