※本記事は、2025年7月時点の内容です
副業をはじめた、退職した、医療費がかかった、ふるさと納税をした……そんなことをきっかけに、「確定申告が必要になる人」が増えています。でも、はじめての人ほど、思い込みや準備不足で本来もらえるはずだった還付金を逃したり申告を漏らしたりしてしまうケースも少なくありません。
今回は、確定申告初心者がつまずきやすい“3つの落とし穴”と、損をしたり申告漏れをしたりするのを防ぐために最低限おさえておきたいポイントについて、税理士の吉村知子さんに教えていただきました。
「自分には関係ないと思っていた」「会社がやってくれているはず」「少しの副収入くらいなら申告しなくていいでしょ?」などなど……。はじめての確定申告では、こうした思い込みやうろ覚えの知識が原因で、支払わなければいけない税金を納めていなかったり、もらえるはずの還付金を逃したりするケースが意外と多くあります。ここでは初心者が特につまずきやすい「3つの落とし穴」を事例とともにご紹介します。
会社員のTさんは、趣味で作っていたハンドメイド作品をフリーマーケットアプリで販売していました。収入は年々増え、今年は副業で得た所得※が約30万円になりましたが「会社で年末調整をしているし、趣味の範囲だから」と確定申告をスルー。じつはこのケース、副業の所得が年間20万円を超えているため、確定申告が必要になります。
- ※ 収入から必要経費(材料費、交通費、資料代など)を差し引いた金額
まず大切なのは、「自分は申告が必要か?」を見きわめることです。会社員やパートの方でも確定申告が必要になることがあります。年末調整をしている会社員であっても、以下の項目に当てはまる場合は確定申告が必要です。
- 給与の収入金額が年間2,000万円を超える
- 副業や投資などで、給与所得または退職所得以外の所得の合計が年間20万円を超える
- 2ヵ所以上の勤務先から給与を受け取っていて、年末調整されなかった分の給与収入や副業で得た所得など、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計が年間20万円を超える※1
- 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている
- 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている
- 源泉徴収義務のない者から給与等の支払いを受けている
- 退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる
- ※1 給与所得の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除および基礎控除を除く)を差し引いた残りの金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円以下の方は、申告は不要。
- ※ 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」をもとに当社にて作成。
上記は「申告が必要になるケース」ですが、一方で、申告義務がない場合でも、確定申告をすることでお金が戻るケースもあります。例えば、年間の副業収入が50万円で経費が40万円だった場合は、所得は10万円となり、申告義務はありません。ただし、報酬から税金が源泉徴収されている場合は、引かれ過ぎた税金が戻ってくる可能性があります。副業による所得が20万円以下だったとしても、申告により還付金を受け取れる場合があることを知っておきましょう。
自分は申告義務があるのか判断が付かない場合は、税務署や自治体、商工会議所などで行なわれる確定申告相談会に参加するのがおすすめです。相談会では、申告義務の有無や用意すべき書類などについて教えてくれます。
「自分は関係ない」と思わず、ライフスタイルに変化があった年は、申告の必要がないか一度チェックしてみましょう。
- ※ 詳しくは、国税庁のWebサイト「確定申告が必要な方」をご確認ください。
パートで働くHさんは、去年、出産や入院、子どもの歯科治療などで医療費がかさんだ年でした。自己負担で支払った医療費は家族分をあわせて約40万円。しかし、「確定申告って税金を支払うだけのものでしょ?」と申告せず。あとで医療費控除のことを知り、「やっておけば数万円のお金が戻ってきたかも」と後悔したといいます。
確定申告には、「税金を支払うため」だけでなく、「支払い過ぎた税金を取り戻す」還付申告という側面もあります。ただし、医療費控除や寄附金控除、住宅ローン控除などは申告しないと適用されません。これは、たとえ申告の義務がなくても、控除や還付を受けるために「やるべき申告」があるということ。もらえるお金を逃さないよう、該当する控除があるかしっかり把握しておきましょう。
確定申告が義務でない人でも、つぎのようなケースに該当すれば、「税金が戻ってくる」可能性があります。
- 医療費が年間10万円(または所得の5%)を超えた
- 家族全員分の医療費を合算でき、診療代や医薬品代などのほか、市販の風邪薬(治療や療養に必要なもの)や、レーシック手術の費用、不妊症の治療費や人工授精なども医療費控除の対象になります。さらに、通院時の交通費(電車・バスなど)も対象なので、領収書やメモはきちんと残しておきましょう。医療費の支払いの都度集計しておくと、申告時に慌てることがないのでおすすめです。
- 住宅ローンを利用してマイホームを購入した/リフォームした(初年度)
- 住宅ローン控除は、初年度のみ確定申告が必要です。年末時のローン残高に応じた金額が所得税から控除されます。
- ふるさと納税や寄附をした(ワンストップ特例を使っていない)
- 寄附金控除を申告すると、一定の限度額までは自己負担2,000円を除いた分が所得税・住民税から差し引かれます。また、ふるさと納税でワンストップ特例の申請書を提出している方は、原則確定申告は不要ですが、確定申告をする場合はワンストップ特例が適用となりません。確定申告時に改めてふるさと納税(寄附金)について控除の申告をする必要がある点に注意してください。同じポータルサイトで申し込むと寄附金控除証明書をまとめて発行してくれるサービスもあるので、利用してみるのもよいでしょう。
- 災害や盗難などで損害を受けた
- 雑損控除の対象となり、一定の金額を所得から差し引けます。
- 年の途中で退職し、年末調整を受けていない
- 年の途中で退職し、その後に再就職せず、または再就職先で年末調整を受けなかった場合は、源泉徴収された税金を支払い過ぎている可能性があります。
- 年末調整で保険料控除を申告し忘れた
- 生命保険料控除や地震保険料控除などを申告すると、税額を減らせることがあります。
申告をすれば、所得税が還付されるだけでなく住民税が軽減されるケースも。特に、所得が高い人ほど還付される金額が高くなる可能性があります。医療費控除やふるさと納税のシミュレーションサイトなどで事前に確認してみるとよいでしょう。また、医療費や経費の領収書などの必要書類は、控除の種類ごとに封筒やファイルなどにまとめて保管しておくと、申告時の準備がスムーズになり便利です。
- ※ 詳しくは、国税庁のWebサイト「No.2030 還付申告」「ふるさと納税をされた方へ」をご確認ください。
確定申告を見直すと同時に、
将来への備えも見直しませんか?
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副業で執筆や講演をしていたSさん。会社員として働いていたため、確定申告は必要ないと思っていましたが、申告期限直前になって「副業の所得が年間20万円を超えていた」ことに気付き、大慌てでe-Taxに挑戦。しかし、マイナンバーカードやID・パスワードを取得しておらず、必要書類の準備も不十分。申告期限に間に合いませんでした……。
e-Taxを利用して確定申告をするためには事前準備が必要です。確定申告は一年に一度。経験がないと、いつ何を準備すればいいか分からず、気付いたときには申告期限直前で大慌て……という人も少なくありません。マイナンバーカードの取得やe-Taxの設定、必要書類の収集など、「いつから何をすべきか」を早めに確認しておくことが大切です。
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スマートフォン、タブレットまたはパソコン
- ※ スマートフォンでe-Taxを利用して送信する場合は、マイナンバーカード読取対応のスマートフォンが必要になります。パソコンやタブレットでe-Taxを利用して送信する場合は、マイナンバーカード読取対応のスマートフォンか、ICカードリーダライタのいずれかが必要です。
- マイナンバーカード※
- 源泉徴収票や医療費控除の明細書、控除証明書などの書類
- ※ 2025年10月1日より、マイナンバーカードを持っていない人が申告する際に税務署でID・パスワードを発行する「ID・パスワード方式」が廃止されたため、新たにe-Taxで申告する場合は、マイナンバーカードの取得が必須になります。なお、すでに「ID・パスワード方式」の届出をしている人は、引き続き「ID・パスワード方式」を利用できます。
「e-Tax」とは、確定申告などの税金の手続きを、インターネットを通じて行なえる国税電子申告・納税システムです。
申告に必要な書類を紛失した場合、再発行に時間がかかることも。申告期限ギリギリで書類の準備が間にあわなかったということがないよう、余裕を持って計画的に準備を進めましょう。
国税庁のWebサイト「確定申告書等作成コーナー」には、簡単な入力や質問に答えることで自動的に書類を作ってくれる機能もあります。申告が必要な年の前年11月ごろには必要書類や手順を確認し、年明けの1月中には会計ソフトなどで情報を整理しておくと安心です。必要な手続きや書類を把握し、早めに準備をしておくことが、確定申告を成功させるポイントです。
- ※ 詳しくは、国税庁のWebサイト【e-Tax】国税電子申告・納税システム「ご利用の流れ」をご確認ください。
- ※ 確定申告の期限は原則毎年3月15日ですが、同日が土日祝の場合は翌日に繰り越されます。詳しくは国税庁の案内をご確認ください。
- ※ 事業を行なっている方は、売上や経費の集計は早めに行なっておくのがおすすめです。
ここまでの内容を読んで「もしかして……」と思った方は、以下のチェックリストで、自分も確定申告が必要か確認してみましょう。
- 年間の給与収入が2,000万円を超えている
- 副業や投資などで年間20万円超の所得がある
- 複数の会社から給与を受け取っている
- 年の途中で退職して再就職していない
- 年末調整を受けていない
- 医療費が年間10万円超かかった
- 住宅ローンを組んだ(初年度)
- ふるさと納税をした
(ワンストップ特例を使っていない) - 災害や盗難などで損害を受けた
- 年末調整で生命保険料控除や地震保険料控除などを申告し忘れた
- 源泉徴収された報酬(セミナーや原稿料など)がある
一つでも当てはまったら、早めに確認と準備をしましょう。
「何からはじめたらいいのか分からない」「税金のことは難しそう」と不安に思う方も多いでしょう。でも、確定申告はポイントさえおさえれば、じつはそれほど難しくありません。まずは今回の記事内で紹介した3つのポイントをしっかりおさえて、失敗のない確定申告をめざしましょう。
監修
吉村知子
監修吉村知子
税理士、事業家。“キャッシュグッドライフ”をテーマに、上場企業から個人事業主まで200社以上の顧客を支援。税務顧問などを担当。アートギャラリーやAI活用スクールを提供しているほか、講演・セミナーへの登壇、執筆、オンライン講座など幅広く活動中。
- ※本記事は、2025年7月時点の内容です。
- ※本記事は、当社が吉村知子様に監修を依頼して掲載しています。
- ※本記事は、監修者の知識や経験を踏まえて執筆しています。
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