in Town
突撃!僕らのJタウン
  • Jリーグ発足当時からの名門クラブ、サンフレッチェ広島F.C。
  • 苦戦してきた地域との交流を革新する今シーズン。
  • 前編はこちら

突撃!僕らのJタウン サンフレッチェ広島F.C

カルチャーと自然が交差する、中四国の中心地・広島市。<後編>

前半では街の魅力的なスポットを柿次郎視点で紹介してきたワケですが、後半はクラブの紹介です。サンフレッチェ広島は、企画が始まって以来初となるJリーグが発足されたときから参戦しているオリジナル10と呼ばれるクラブで、Jリーグが発足したときから加入しているクラブのひとつ。クラブの沿革や街との関係性は今まで取材してきたクラブとは一味違いそうです。と、いうわけで!市内のサンフレッチェ広島の事務所の方にやってまいりました。

ここから先はサンフレッチェ広島の地域社会連携部の佐々木温さん、河野圭子さんにお話を伺っていきます。

取材・文:関戸 ナオヒロ/写真・動画・構成:納谷 ロマン

佐々木 温(ささき ゆたか)

大学卒業後、イギリス留学を経て入社。サンフレッチェ広島歴25年。スクールコーチやトップチーム主務、運営部やセールスプロモーション部の部長などを歴任。2022年6月1日より地域社会連携部の部長を務める。

河野 圭子(こうの けいこ)

前職は四季株式会社(劇団四季)にてロングラン公演や全国ツアー公演を担当。2018年にサンフレッチェ広島に転職。営業部を経て、現在は地域社会連携部に所属。

Jリーグ発足当時からの
名門クラブ、サンフレッチェ広島F.C。

柿次郎
今日はクラブのことや地域交流のことなどいろいろと聞けたらと思っています。個人的な印象ですけど、サンフレッチェ広島ってすごい名門クラブな感じがしていて。
佐々木
ありがとうございます。サンフレッチェ広島はJリーグ発足当時から参戦していた、いわゆるオリジナル10のクラブなんです。広島サッカーの歴史は古くて、Jリーグの前身のリーグでは、前身の東洋工業サッカー部が初年度からの4連覇を含む、6年間で5回も優勝したんですよ。
柿次郎
6年で5回って偉業ですよね。
佐々木
広島はカープのイメージが強いかもしれませんが、昔は埼玉、静岡と共にサッカー御三家と呼ばれていたんですよ。オリジナル10としてJリーグに参戦できたのも、地元の県民・市民の署名活動や行政の財政支援があって叶ったことだと聞いています。
柿次郎
Jリーグはどのクラブも地域に根ざしたクラブを目指していると思いますが、サンフレッチェ広島は地域交流の部分ではどのような活動をされているんですか?
佐々木
現在は休止中ですが、コロナの前はクラブの練習を一般公開して、練習後は選手との撮影やサインも基本的にオープンで行っていました。ウチのレベルまでサポーターが選手と交流できるのは、なかなか首都圏のほかのクラブでは見られないと思います。
柿次郎
サポーターにとってはめっちゃ嬉しいですね。
河野
サポーターとの距離が近いクラブという評価をいただいていました。コロナ前は、地元の子どもたちとのふれあいサッカー教室にも、前日の公式戦に出た選手たちがリカバリートレーニングの一環として積極的に参加していましたね。
柿次郎
コロナや、監督の方針などで地域活動も変わってくると思いますが、今はどういった活動をしているんですか?
河野
現在は選手の地域活動が難しいので、広島出身でユースからの生え抜き選手だった森﨑和幸CRMと浩司アンバサダーが、小学校でのサッカー教室や、各地でのイベントに参加しています。

森崎浩司選手が、
地域の子供にサッカーを教えた時の一コマ。

柿次郎
オリジナル10のクラブに取材をするのが今回初めてなんですけど、オリジナル10ならではの悩みってありますか?
佐々木
やっぱり、なんとしてもJ1の地位は守らないといけないっていうプレッシャーはあるのかなと思います。降格も2度経験したのですが……。

名門でも降格するのか……と、
スポーツの難しさを痛感する柿次郎。

佐々木
でも、降格したからといって、サポーターやパートナー企業のみなさんはクラブを見放すのではなく、逆に熱を入れて応援してくれたんですよ。スポンサーが減ってしまうんじゃないかと危惧していましたが、契約をそのまま継続してくれて。2度とも翌シーズンにJ1に復帰をしてきました。本当にありがたいことだなあと。
柿次郎
降格してしまったらサポーターは減りそうなイメージだったので驚きました。
佐々木
熱しやすくて冷めやすい広島の県民性もあるのかもしれませんね。我々が感じる印象なんですけど、優勝や降格争いに絡むとすごい盛り上げてくれるんです。特に2012年の初優勝のときは、みなさん熱狂してくれて。

事務所にはリーグ制覇の輝かしい
トロフィーが飾られている。

柿次郎
サッカーの街として歴史も古く、しかも強豪でサポーターの盛り上がりも熱い。すごく魅力的なクラブですね。いやー、それにしてもJリーグはクラブによって本当に色がハッキリと違うから取材が楽しいです。

苦戦してきた地域との交流を
革新する今シーズン。

柿次郎
クラブとして歴史もあって、サポーターやスポンサーからも支持されていて。あとはリーグを制覇するのみっていう感じな気がしますけど。
佐々木
いや、実はサンフレッチェ広島には大きな課題が残されているんですよ。
柿次郎
課題、ですか。
佐々木
われわれサンフレッチェ広島には「サッカー事業を通じて夢と感動を共有し、地域に貢献する」っていうクラブ理念があるんです。正直いうと、リーグ優勝したことで“夢と感動”は共有できたと思うのですが、“地域に貢献する”という部分ができていたかと言われると……。
柿次郎
……そこまでできてこなかった、と。
河野
いままでにもホームタウン活動を行ってはきていたのですが、どれも単発や、ちょっとした期間のなかでの活動で終わってしまっていて。継続的にひとつの活動をやってこれたかっていうところではあまり自信がないんです。
柿次郎
なるほど……。監督が変わったり、クラブの方針が変わる中でなかなか続けることが難しいってことはありそうですね。
河野
もちろん、コアなサポーターの方々も大勢いらっしゃるんですけど、それ以上にサンフレッチェ広島を知らない人の方が圧倒的に多いんですよね。
佐々木
先日も県内のある小学校に紫のオリジナルキャップを贈呈しに行ったのですが、「サンフレッチェ広島の事を知ってる人ー?」って聞いたらキャップを被せてもらった1年生の半分しか手が上がらなくて……。ショックでしたけど、現実を受け止めてもっと地域のみんなに知ってもらうために、頑張って活動していかなければと思いました。

サンフレッチェ広島の30周年を記念して
クラブをより身近に感じてもらえるように、
今回初めて実施した。県内の約2万4千人の
新小学1年生全員に配布した。

柿次郎
でも、もともとサッカー御三家だったから、サンフレッチェ広島を根付かせるポテンシャルはすごく高そうですよね。
佐々木
そうなんですよ。なので、クラブ創設30周年を期に新たな取組みとして、トップチームとレジーナ選手に協力してもらう、30区市町のシティープロモーションを企画しているんです。
柿次郎
どういった活動なのか、少し教えていただけませんか?
河野
県内の30ある区市町を選手が訪問。その土地の魅力をPRする動画を作成し、ホームページで紹介する活動です。一方的にこちらから発信するのではなく、地域の人が主体となって、その地域の要望に我々が応えるという企画です。今までは選手が広島市外に出向いていくこと、サッカー教室以外の活動があまりできてなかったので、大きな革新になると思います。
柿次郎
すごく良い企画ですね。地域とクラブが連携して良い関係性を作り出せそう。
佐々木
地域のみなさんの支援のおかげで我々クラブが成り立ってるので、還元をしたいし、もっと大勢の方々に知ってもらいたい。今年中にはできないかもしれませんが、30地域すべてを周りきって、ようやく次のステップに進めると思っています。
柿次郎
新スタジアムももうすぐ完成するということで、サンフレッチェ広島が盛り上がるためのキーポイントですね。
佐々木
2024年に完成予定なので、もうすぐですね。でも、新スタジアムはあくまできっかけにすぎません。スタジアムが完成する前に地域の人たちとの関係性を作ることが大事です。チームの成績に左右されずに安定して多くの方々に応援してもらうために、サンフレッチェ広島を今よりもぶち盛り上げていきます!
柿次郎
新スタジアムに新しい地域活動。クラブとして伸び代がまだまだあるサンフレッチェ広島の、今後の活躍がとても楽しみです!長い時間ありがとうございました!

いかがでしたか?ホームタウンのオススメスポット探訪にはじまり、クラブと街のかかわりをしっかりとご紹介できたのではないでしょうか。Jクラブホームタウンの面白さを身をもって痛感しました。次に訪ねる街も、きっとすばらしいJタウンのはずです。今から、ワクワクしてきたぞ〜!それでは、次回の『突撃!僕らのJタウン』も、お楽しみに!

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前編はこちら

Profile

徳谷 柿次郎
(とくたに かきじろう)

編集者 / Huuuu inc.代表取締役。『ジモコロ』編集長として全国47都道府県行脚。ヒップホップ、民俗学、郷土玩具に熱心で「やってこ!」の概念を提唱中。そのほかに、豊かな未来のきっかけを届けるメディア『Yahoo! JAPAN SDGs』、長野県の移住総合メディア『SuuHaa』など、数多のWEBメディアを手掛ける。全国で見つけた面白い価値を共有するリアルショップ『シンカイ』や雑誌『ソトコト』連載の連載も行なう。広島で食べた生牡蠣のウマさに感動!

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