編集者 / Huuuu inc.代表取締役。『ジモコロ』編集長として全国47都道府県行脚。ヒップホップ、民俗学、郷土玩具に熱心で「やってこ!」の概念を提唱中。そのほかに、豊かな未来のきっかけを届けるメディア『Yahoo! JAPAN SDGs』、長野県の移住総合メディア『SuuHaa』など、数多のWEBメディアを手掛ける。全国で見つけた面白い価値を共有するリアルショップ『シンカイ』や雑誌『ソトコト』連載の連載も行なう。


「突撃!僕らのJタウン」は、ナビゲーターに編集者の徳谷柿次郎さんをお招きし、Jクラブのホームタウンを散策。前編パートでは、その街の魅力的なお店やスポットを紹介し、後編パートでは、クラブ関係者のインタビューを敢行。外から見る街の魅力と、なかから見る街の魅力、そして、Jクラブについてをまるっと知ることができるコンテンツです。
第一弾は川崎、第二弾は松本……と、Jタウンをナビゲートしてきましたが、シリーズ第三弾となる今回は京都サンガF.C.のホームタウンである京都へ!歴史と文化が入り混じった街……きっと面白い出会いがあるに違いないゾ!
取材・文:関戸ナオヒロ/写真・動画:木村華子/編集・構成:納谷ロマン
京都サンガF.C.・ ホームタウン京都。

風情ある京都の町って歩いているだけでワクワクするよなあ。ということで、明治安田ライフフィールドマガジンをご覧のみなさん、いかがお過ごしでしょうか!Jタウンナビゲーターの徳谷柿次郎です。
『突撃!ぼくらのJタウン』第三回目に選んだのは京都サンガF.C.のホームタウンである、古都・京都。
ご存じのとおり、京都は寺社など数多くの文化財が残る世界屈指の観光都市。歴史的文化の面を持ちながらも、日々新しいカルチャーが活発に芽吹き、伝統と革新が街に溶けこんでいる……とにかく今、すごく盛り上がっているアツい街なんです。
川崎、松本と旅をして初の関西となる京都。さっそく、注目のスポットを紹介していきましょう!
銭湯ニューカルチャーを
沸かし続ける「サウナの梅湯」

訪れて、すぐに入浴する柿次郎。気持ち良さは、この表情から汲み取ってほしい!
まずはじめに訪れたのは、京都市下京区にある[サウナの梅湯]。近年のサウナ・銭湯ブームのトップランナーとして、全国から多くの人々が癒しを求めて足を運ぶ公衆浴場です。今回はサウナの梅湯の経営者であり、銭湯活動家でもある湊三次郎さんにお話を聞きました。

- 柿次郎
- いやあ、いい湯でした。やっぱり京都は水がいいから、違うねえ。湊くんにお話を聞くのは多分2年ぶりくらいだと思うんですけど、最近の京都の銭湯事情ってどうなんですか?
- 湊
- 相変わらず減少傾向にあって、だいたい年間7件のペースで廃業しています。今は京都府内の銭湯は100軒以上あるのですが、単純計算でも10年後には30軒以下になってしまうんです。
- 柿次郎
- 近年、サウナや銭湯ブームもあってすごい盛り上がりを見せているのに、それでも減っているんですね。
- 湊
- やっぱり一番の問題は高齢化で、銭湯経営者の全国平均年齢は69歳くらいって言われてます。体力的に決して楽な仕事ではないので……。
- 柿次郎
- それでも湊くんみたいに銭湯を経営してみたいっていう若い子とか結構いるんじゃない?
- 湊
- そこが難しいところなんです。銭湯が廃業した後、ご家族全員が「この銭湯を絶対に残したい!」っていう思いで一致していないと借りることが難しい。大体はマンションにしたり、売ってお金にしたり……そっちの方が単純にお金がもらえるし相続しやすいですからね。なによりリスクが少ない。
- 柿次郎
- そうか、相続とかで家族の意向も入ってくるんですね。その視点で考えたことはなかったけど、話を聞くと避けられないことなのかもって思ってしまいますね。
- 湊
- 銭湯経営者としてある程度の実績がある僕らでさえ難しいことなので、なかなか厳しいと思います。
- 柿次郎
- サウナの梅湯はいつごろから経営しはじめたんでしたっけ?
- 湊
- 2015年からで、当時は24歳でした。最初の1年間は仕事が山積みで家に帰れなかったので、ほとんどロビーで寝泊まりしていました。あのときはキツかったですね……。
- 柿次郎
- ココに泊まっていたんですか!?湊くんの銭湯に対する熱い想いはどこから湧き上がってくるんですか?
- 湊
- やっぱりイチ銭湯ファンとして、この文化を継承していきたいんです。自分で経営していたら絶対に残るじゃないですか。だから、47都道府県すべてに銭湯を残したい。
- 柿次郎
- さすが銭湯活動家ですね。文化の守り人だ。今は何店舗くらい経営してるんでしたっけ?
- 湊
- コンサルも含めると全部で7店舗ですね。ウチから独立して経営している人もいます。
- 柿次郎
- 経営者としてスタッフのマネジメントの面では、どのような事を意識してやっていますか?
- 湊
- 同じような気持ちを持っている人をスカウトして働いてもらうことが多いから、そもそも気持ちの部分では変にズレたりしないんですよね。募集して面接をするときも、将来は銭湯経営者をめざしている人を優先して雇うようにしています。元々、僕自身がワンマンでどんどんやっちゃうタイプなので、それを見てみんながついて来てくれているのかなって思います。
- 柿次郎
- 今後の具体的な目標って何かありますか?
- 湊
- 「今年は絶対に1軒は関東進出しよう!」って動き出していて、できれば東京23区内でやりたいって思っています。柿次郎さん、実現したらぜひ遊びに来てくださいね!
- 柿次郎
- うわあ楽しみだ。ぜひ身体を癒しに行きます!
雅な京都の街でのんびりと、
地元と旅人が溶け合うホテル。

続いて訪れたのは[梅小路ポテル京都]。1年ちょっと前にできたコチラの宿泊施設は、地域の人と旅の人をつなげるような空間づくりで評判で、早くも京都の街に馴染んでいるそう。そんな施設の成り立ちや見所を、広報の岸本舞さんに伺いました。
- 柿次郎
- 前からこの場所は気になっていて、今日こうしてお話できるのがとても嬉しいです。
- 岸本
- ありがとうございます。港っていう意味のportとhotelを掛け合わせたネーミングになっていて、港のように価値のある出会いが行き交い、地域の人と旅人のご縁をつなぎ、のんびりポーッと寛いでもらえるような、そんな3つのコンセプトで作られた場所がここ梅小路ポテル京都になっております。

- 柿次郎
- 「宿泊施設で地域の人とのご縁をつなぐ」少しイメージがしづらいのですが、どういったことをされているんでしょうか。
- 岸本
- 人と人との関係を親密にするのは、お酒か裸の付き合いのどちらかではないかという仮説を立てて。宿泊者さんじゃなくてもご利用いただける銭湯と、梅小路発酵所という立ち飲みができるスペースをご用意しております。
- 柿次郎
- 風呂とお酒。たしかに、めっちゃいいですね。先ほど銭湯も見させていただきましたけど、ロッカーの鍵だったり、固定式のシャワーだったり、細かいところがちゃんと町の銭湯っていう感じに作られていて良かったです。
- 岸本
- 銭湯文化の継承ということで、だいぶ話し合いながら作り込みました。3世代でこちらの銭湯を利用しに来てくれるお客さまもいて、徐々に地域のみなさまに馴染んできているのかなと。銭湯ビギナーの方がウチのぽて湯で体験をして、どんどん町の銭湯にも行ってみてほしいです。
- 柿次郎
- いい意味でホテルっぽくないというか……いやあ、令和の時代にあえて銭湯ですか。いいですね。
- 岸本
- そもそものこのポテルのプロジェクト自体も、構想から開業まで5年ほどかかっています。雰囲気だけそれっぽく仕上げるのは簡単ですが、最初にお話ししたコンセプトからズレないように施設に備えているアイテムをひとつひとつ徹底的に選んで空間づくりを行いました。その甲斐あって、地域の人々の日常利用から宿泊利用までしていただける施設になってきており、ポテルだから体験できる時間を楽しんでいただけていると感じています。

銭湯のほかにも、レコード、ボードゲーム、壁一面の本棚など、
思い思いのひとときを過ごすためのアイテムが揃う。
- 柿次郎
- 来るまではここまで胆力があるプロジェクトだとは思っていませんでした。正直、めちゃくちゃ感動しています。ホテルに泊まるとき食事も気になるんですが、レストランはどういったコンセプトでしょうか。
- 岸本
- 夕食は地域の方もご利用することができるレストランになっておりまして、“発酵”と“炭焼き”をテーマに食材のうまみを存分に引き出すメニューとなっております。「お酒を飲みすぎた〜」なんて人も、ポテルに泊まって、銭湯に入って、発酵のお食事を召し上がってもらえれば翌朝万全な状態で旅に出発できますよ!
- 柿次郎
- 呑兵衛の自分には楽園のようだ……。まいりました!
本と人をつなぐ
京都が誇る名書店。

最後に足を運んだのは、「世界で最も素晴らしい本屋10選」に日本で唯一選ばれたことがある、京都を代表する書店の恵文社一乗寺店。今回は、書店員の藤林さんに話を伺いました。

- 柿次郎
- この辺りは市内の中心地から少し離れていて、落ち着いた雰囲気ですよね。訪れるお客さんはどんな方が多いですか?
- 藤林
- 芸大が近いので学生さんや教授さんが来てくれたり。あとはなにかモノづくりしているクリエイターさんが多いですね。なので、揃えている本も「そういう方の刺激になる本を」と、思って選書しています。
- 柿次郎
- パッと見た感じ、あまりほかの本屋さんでは扱わないような本が多くて面白い。ずっとウズウズしてます。この祭の本とかすごい尖ってるなあ。
- 藤林
- ありがとうございます。本は直接仕入れさせてもらっているものが多くて。人と同じことはやりたくないっていう弊社の社長の考えなんです。例えば、ベストセラーの本は置かないとか。一冊一冊、担当スタッフがしっかりと選んでいます。
- 柿次郎
- 何年ごろからお店をやっているんですか?
- 藤林
- 1975年にオープンしたので、47年前からですね。はじめは書店のスペースだけだったんですけど、隣の場所が空く度に拡張していって。今は書店のほかに、生活にまつわる書籍や雑貨を揃えた「生活館」、カフェやトークショーなどのためのイベントスペース「コテージ」、ふたつのギャラリーを併設する「ギャラリーアンフェール」があります。展示の内容は1〜2週間で変わっていくので、いつ来ても新しい発見があって楽しんでもらえるようになっています。
- 柿次郎
- いやあ、この規模でギャラリーもカフェも雑貨もあるっていうボリューム感はなかなかないですよね。しかもそれがこまめに入れ替わって。アンティークな家具やインテリアが多くてステキだし、丸一日過ごせちゃいますね。
- 藤林
- ありがとうございます。でも当時はこういうお店がなかったので、結構反対されたみたいで……。社長は今年で75歳になるんですけど、今でも元気で街をずーっとウロウロして面白いモノを見つけてきます。まだまだやりたいことの欲求が尽きないようで、お店も拡大していくかもしれませんね。
- 柿次郎
- すごいなあ!編集者としてとても刺激になります!……お話はこの辺りで、ちょっとお買い物させてもらってもいいでしょうか?
- 藤林
- ありがとうございます!ぜひ色々見ていってください!


Profile
徳谷 柿次郎
(とくたに かきじろう)
