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突撃!僕らのJタウン
  • 川崎フロンターレと街のかかわり。
  • 勝負に弱いと言われ続けたクラブの軌跡。
  • 前編はこちら

突撃!僕らのJタウン 川崎フロンターレ・新丸子

川崎フロンターレ・ホームタウン、新丸子。後編

と、ここまでは、街の魅力的なスポットを柿次郎視点で紹介してきたワケですが、川崎フロンターレは数あるJクラブの中でも、街とこの街に暮らす人々とより密接なクラブなんだそう。というわけで、川崎フロンターレのクラブ事務所にやってまいりました。

ここから先は、そんな地元密着型クラブのタウンコミュニケーション部プロモーションリーダーである若松さんにお話を伺っていきます。

取材・文:納谷 ロマン/写真・動画:藤原 慶/構成:関戸 直広

若松 慧(わかまつ けい)

タウンコミュニケーション部 プロモーションリーダー。神奈川県出身。大学を卒業後、吉本興業株式会社に入社。
マネジャー業務などを経て、株式会社川崎フロンターレに入社。
オフィシャルグッズショップ、ボランティア担当を経て、事業推進部集客プロモーショングループなどを経て現職に。
ホームゲームイベントや、地域のホームタウン活動に従事している。

ファン・サポーターと一緒に強くなった。
川崎フロンターレと街のかかわり。

柿次郎
一日、新丸子を回ってきたんですが、いい街ですね、新丸子って。若松さんはもう長いんですか?タウンコミュニケーション部として、街とかかわるようになってからは。
若松
そうですね。もともとはプロモーション部というところにいたんですけど、その中で街とかかわってイベントを仕掛けたりする部署が昨年の改編でできて。それがタウンコミュニケーション部なんです。部署の名前は変わりましたが、入社当時からそういう動きをしていて。だいたい6年くらいですかね。
柿次郎
Jクラブって街がらみの活動をどこもやっているんですかね。
若松
Jリーグはホームタウン活動を積極的にして、より街を活性化するというのがひとつの理念になっているんですよ。特に担当は置かずにみんなでやりましょうっていうクラブも中にはあるかもしれないですけど、街に携わっている人間がクラブの中に必ずいるはずです。
柿次郎
川崎フロンターレは、創設時からずっと川崎なんでしょうか?中には拠点が変わったり、オーナー企業が代わったクラブもあるよなあって。
若松
うちの場合は、富士通サッカー部という富士通株式会社の社会人クラブが前身なんですよ。Jリーグの立ち上げから見ると後発のクラブなんですが、97年から川崎フロンターレという名前に変わって、J2からスタートしました。

当時のユニフォームカラーはホワイトだった。

柿次郎
そうだ、川崎といえばヴェルディ川崎(現:東京ヴェルディ)ですよね。
若松
そうです。川崎って、なぜかスポーツクラブが根付きづらいエリアと言われていたんですよね。野球とか、サッカーとか競技は関係なくどのクラブも結局根付かなくて。それって、街とのかかわりが希薄だからなのでは?という仮説を立てたんです。Jリーグの中でも後発のクラブだったので、振り切ってやれたというのもあるんですが、全面的に街と密接であるというポイントに力を入れました。
柿次郎
実際、どんな活動を行っているのでしょうか?
若松
まずは、地域のみなさんに喜んでもらうのが第一です。なので、ホームゲームの全試合で、イベントを開催していて。例えば「川崎の車窓から〜東急グループフェスタ〜」と題して、スタジアムの目の前に東急電鉄の車両を運んだり。「フロンターレ牧場」と題して、地元・川崎の福田牧場や夢見ヶ崎動物公園の協力のもと牛の乳搾りやポニーの乗馬を行ったり。とにかくいろんなイベントを仕掛けていて。
柿次郎
ホームゲームの日にそんなイベントをやっているんですね。正直知りませんでした。
若松
あとは地域貢献の一環として、子どもにより勉強を楽しんでもらうために「フロンターレ算数ドリル」というのを作ったりもしています。そのほかにもいろんなホームタウン活動を行っているんですが「多摩川エコラシコ」という多摩川の美化活動にも力を入れていて。これは2008年から行っているんですが、河川敷や川の中を綺麗に清掃することで、サポーターと選手が一緒になって、環境問題を考える機会を作っています。実際川も綺麗になって、魚が戻ってきたりもしていて。

イベントには、サポーターや地域の住民が400名以上参加。

柿次郎
いや、でも凄いですね。僕らが例えば街でご飯屋さんをやっていてもそういうことは中々できない。でも、これだけ大きい組織とファン・サポーターを持てる”スポーツ”という形だからこそ、人がガッと集まって清掃活動だとか大規模なことができる。それってクラブが街にあるからこそできるっていう良い事例ですよね。
若松
まさにその通りです。あとは、震災復興支援として、毎年「陸前高田ランド」というイベントを行っています。陸前高田市とは、長らく交流があるのですが、試合の日にスタジアムの広場で地元の人達が直接来て屋台を出しています。ただの復興支援ではなくて、本当に美味しい名産品が集まっているので、毎年サポーターの方々に人気のイベントで。
柿次郎
地域貢献に復興支援……いやー、感服です。もうだいぶ川崎フロンターレを応援したい気持ちになってます。

イベントに強い、けれども
勝負に弱いと言われ続けたクラブの軌跡。

柿次郎
クラブについても少し聞かせてください。2017年の明治安田生命J1リーグ制覇を皮切りに、チーム力がグッと上がったイメージがあるのですが、それまでの川崎フロンターレというクラブはどういうクラブだったんですか?
若松
サポーターや街とは親密だけど、勝負弱いクラブだと言われていました。それまでにリーグ戦、カップ戦で合わせて8回2位になっていて。シルバーコレクターとも呼ばれていたんです。2位になるだけでもすごいんですけど、スポーツはやはり結果がすべてですから。「川崎フロンターレは選手に変なことばかりさせるからダメだ」って揶揄されることもあって。
柿次郎
地域に根ざしていることが仇となるケースもあるんですね。
若松
ただ僕たちの考え方は違うんです。やっぱりサポーターの方や地域の方々の協力あってのJクラブです。ここは曲げちゃいけないと。だから、地域に対する貢献も実績も両方突き詰めようとなって。
柿次郎
で、晴れて、2017年の初優勝ですね。
若松
ですね。優勝が決まった瞬間に僕はピッチのそばにいたんですよ。2017シーズンの最終節、鹿島アントラーズが首位で、川崎フロンターレが2位。鹿島アントラーズが引き分けたら勝点が並んで、得失点差で川崎フロンターレが優勝するという試合で。試合が終了する数十秒前に「鹿島アントラーズが引き分けた!」っていうのを無線で聞いて。もちろんピッチの選手は知らない状態で。
柿次郎
ドラマチックすぎる展開。
若松
試合終了の合図とともに、選手だけじゃなくてスタッフ一同で大号泣です。もちろん応援してくださったサポーターの方も号泣していて。当時クラブの顔だった中村憲剛選手もピッチに突っ伏して泣いている姿が印象的でした。僕もその姿に引っ張られてさらに泣いちゃって。
柿次郎
聞いてるこっちも泣きそうになるってことは、よっぽどすごかったんだろうなあ。
若松
その翌年の2018年も明治安田生命J1リーグ優勝、それから毎年なにかしらのタイトルを取るクラブへと成長しました。それこそ、つい先日まで半年以上負けてなかったくらいで。

ホームグラウンドの[等々力陸上競技場]には、
歴代の成績表がズラリ。

柿次郎
勝ちきれる自信がついているんだろうなあ。でも、こうして地域と密着しながらも勝てるクラブが作れるというモデルケースができることで、ほかのクラブの考え方も変わりそうですよね。
若松
それはそうかもしれませんね。やはり、地域に愛されるクラブであることと強いクラブであることの両立は大事ですから。
柿次郎
ぼくは、全国取材してるんですけど、サッカーに限らず地域とスポーツクラブの関係性に、元々のシビックプライドっていうんですか。“街の誇り“みたいなものは連動していくもんなんですか?川崎の下町の「俺たちはここが好きだ!」っていう気持ちがあるから、川崎フロンターレとつながって、結果強くなれた的な。
若松
うーん。それでいうと、逆に、川崎フロンターレがあるから、この街は誇らしい!そういう思いを住民の方に持ってもらうようなクラブになることが、今の川崎フロンターレの目標なのかもしれません。
柿次郎
はー、かっこいいなあ。最後になるんですが、若松さんのオススメの場所ってありますか?川崎フロンターレの試合前後に行ってみてほしい場所とか。
若松
川崎ってかなり広いエリアなので、魅力的な場所が多いんですよ。それこそ柿次郎さんがまわってこられた新丸子はこじんまりした個人経営の店が多いですし、武蔵小杉に新しくできた商業施設の[グランツリー武蔵小杉]もオススメです。ほかには[川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム]だったり、海沿いは工業地帯なので夜景が綺麗だったり……とにかく見所はたくさんあって。
柿次郎
言われてみると、川崎市という単位で見ればかなり広大ですもんね。それにアクセスもいい。
若松
スタジアムからアクセスしやすい場所でいうと[萬福飯店]というお店が個人的にオススメです。イベントの設営や試合前に必ず寄っているのですが、まず、お父さんとお母さんのキャラクターがいい。で、料理がリーズナブルでボリューミー。選手や僕らのようなクラブ関係者、サポーターの方はもちろんですが、ほかクラブのサポーターの方からも人気で。

若松さんのイチオシは「萬福焼きそば」。
黒酢の効いた黒天津飯などここでしか味わえない品多数。

柿次郎
うわー、うまそうだ。明日必ず寄って帰ります。長い時間、ありがとうございました!次は絶対試合を見にきます!

いかがでしたか?ホームタウン新丸子のオススメスポット探訪にはじまり、クラブと街のかかわりをしっかりとご紹介できたのではないでしょうか。Jクラブホームタウンの面白さを身をもって痛感しました。きっと、どのクラブのホームタウンもおもしろいんだろうなあ。次回の訪問先は未定ですが、きっとすばらしいJタウンのはずです。今から、ワクワクしてきたぞ〜!それでは、次回の『突撃!僕らのJタウン』も、お楽しみに!

今回紹介したお店はコチラ!

前編はこちら

Profile

徳谷 柿次郎
(とくたに かきじろう)

編集者 / Huuuu inc.代表取締役。『ジモコロ』編集長として全国47都道府県行脚。ヒップホップ、民俗学、郷土玩具に熱心で「やってこ!」の概念を提唱中。そのほかに、豊かな未来のきっかけを届けるメディア『Yahoo! JAPAN SDGs』、長野県の移住総合メディア『SuuHaa』など、数多のWEBメディアを手掛ける。全国で見つけた面白い価値を共有するリアルショップ『シンカイ』や雑誌『ソトコト』連載の連載も行なう。

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