マンガ化で新しい読者にアピール!『漫画 君たちはどう生きるか』 ベストセラー立ち読み企画 〜大人にこそ読んでほしい、人生読本の決定版〜

2017年8月の発売からわずか半年で、発行部数は145万部を突破。その後も飛躍的に売れ続けている話題の『漫画 君たちはどう生きるか』は、1937年に出版された吉野源三郎による同名の著作をコミカライズした作品です。内容は原作通り、主人公「コペル君」に「おじさん」が人生の伴走者としてアドバイスをおくるというもの。80年も前のお話が、なぜいまベストセラーとなっているのでしょう。その要因のひとつはもちろん「マンガになったから」。でも、本書は決して「名著を安直にマンガ化した本」ではないのです。

原作は「コペル君」が小さな事件を通じて成長していく物語と、それを見守る「おじさん」による手記を交互に読ませる構成です。マンガ版では成長物語をマンガにした一方で、手記は原作と同じ文章を収録。マンガと文章を交互に配する仕掛けで、物語の躍動感と手記の深みを際立たせることに成功しています。また、コペル君と一緒におじさんも成長していく点を強調し、大人にも気づきを与える一冊に。さっそく試し読みを……と言いたいところですが、その前に、登場人物はだれか、なにが起こるのかを簡単にご紹介。

コペル君(本田潤一)

旧制中学に通う15歳の少年。父親は3年前に他界したため、母親とお手伝いさんと一緒に暮らしている。成績は優秀だけど、落ち着きがなくていたずら好き。目下の悩みは背が小さいこと。「おじさん」と仲が良く、いつも2人で話したり、遊んだりしている。

おじさん

コペル君のお母さんの実弟。少し前まで出版社で働いていたがいまは無職。潤一くんにコペルニクスにちなんだ「コペル君」というあだ名を付けた張本人。編集者らしく自宅には大量の本がある。コペル君と話すことで得た気づきをノートに記す。

どんな「事件」が起こる?

では、コペル君の日常で起こる「小さな事件」とはどんなものなのでしょうか。なかには友人がいじめられたといった「事件然」としたものもありますが、その多くはささやかな出来事。おじさんと話していてなにかに気づいたとか、友人と接していて教えられたとか、そんなことです。言い換えれば、だれの日常にも起こりえること。その一つひとつが次章の伏線となり、クライマックスの「雪の日の出来事」に向けて積み上がっていきます。

へんな経験

おじさんと一緒に銀座へ出かけたコペル君は、デパートの屋上から小さく見える車列や人々を眺めながら「人間って、水の分子みたいなものかも」と話します。彼には、屋上から見える人の流れがまるで水の流れのように見え、それならば自分の存在も分子ではないかと感じたのです。

おじさんのノート

ものの見方について

コペル君の気づきは、「地球は宇宙の中心ではなく、地球が太陽の周りを回っている」という地道説を唱えたコペルニクスのように勇気ある発見だった──おじさんはそうノートに書き記します。この日以来、潤一君を「コペル君」と呼ぶようになりました。

ニュートンの林檎と粉ミルク

コペル君は同級生が実家の豆腐屋を手伝っているところを目撃します。自宅に帰ったコペル君は、世の中の営みについて考えずにはいられませんでした。たとえば台所の粉ミルクは外国産。海外でとれた牛乳が粉ミルクとなり、日本に輸入され、自宅に届くまでに、どれほどの人を介するのだろう……。

おじさんのノート

人間の結びつきについて

おじさんは、コペル君が発見した「人と人の結びつき」の法則は、経済学や社会学で「生産関係」と呼ばれているもので、すでに存在する概念だと教えつつ、自分で考え、答えにたどり着いたことのすばらしさを褒めました。

雪の日の出来事

ある雪の日、コペル君の友人が上級生たちに喧嘩を売られます。その友人を助けに行った別の友人を含め、3人が上級生に囲まれ、殴られているのを見たコペル君。自分も助けに行かなければという意に反して彼の体は動こうとせず、友人たちは彼の元を去っていくのでした。

おじさんのノート

人間の悩みと、過ちと、偉大さについて

おじさんはパスカルを引きつつ、人間がつらさや苦しさにどう立ち向かうべきかを説きます。人間は、自分で自分を決定する力をもっている。だから過ちを犯すこともある。しかし、自分で自分を決定することができるからこそ、過ちから立ち直ることもできるのだと。

マンガ化の魅力を凝縮した巻頭10ページを立ち読み!

マンガ化の魅力を凝縮した

巻頭10ページを立ち読み!

繰り返しますが、本書が大ヒットしている要因のひとつは「マンガ化というアイデア」。そのことを如実に表しているのが物語の冒頭です。雪の日、泣きながらひとりで下校するコペル君。「大事な友だちを裏切ってしまった」という独白。これはクライマックスの「雪の日の出来事」の断片で、読者はわけがわからずも「この子になにが起こったんだろう」と物語にぐぐっと引き込まれることになりますが、じつはこれ、マンガ版ならではの構成で、原作ではこのシーンからは始まりません。ね、マンガの力ってすごいでしょ? というわけで、その冒頭1Oページを立ち読みでどうぞ。