はましゃかの生活向上委員会

〜3軍の服が大変身?洋服のリメイク&アップサイクル編〜
取材・文:納谷ロマン/写真:澤田詩園/イラスト:百瀬ガンジィ

突然ですが、みなさんの生活は充実していますか?仕事を精一杯がんばりながら、衣食住を整える。これって実はとっても大変だと思うんです。このお話は、仕事はがんばっているけれど、生活が苦手なマルチクリエイター・はましゃかさんの家に現れた“向上くん”が彼女の生活をどんどん良くしていく物語です。第1回となる今回は、衣食住の「衣」に注目!みなさんも自分の家に“向上くん”がやってきた!と、思いながら読み進めていってください。それでは、愉快な物語のはじまりはじまり〜〜〜!

向上くんは、ある日突然やってくる。


とある昼下がり。昨日も遅くまで原稿を執筆していたはましゃかは、いつものように大好きなお布団ですやすや眠っていました。このまま夕方まで、眠ってしまう日もしばしばあるのだとか。

  • 「はましゃかちゃん!起きて!もう12時すぎだよ!ずーっと寝てたら1日があっという間に終わっちゃうよ!」
  • 「…………スヤァ…………」
  • 「お!き!て!あ!さ!だ!よ!」
  • 「ん……………あなた、いったいだれですか……ここ私のおうちですけど……」
向上くんの突然の訪問に、怯えるはましゃか。
生活に困っている人のもとへどこからともなく現れる、向上くん。どうやら「コウイカ」らしい。
  • 「はましゃかちゃんは、いろんなお仕事で活躍しているけど生活が苦手ってウワサを耳にしてさ。手助けしてあげようって思ってやってきたんだ。まあまあ、とにかく起きて話を聞かせておくれよ」
  • 「状況がぜんぜん飲み込めません……それに、まだまだ眠いし、とりあえずいったん帰ってもらえませんか……?」
  • 「なんでそんなこと言うのさ、せっかくはましゃかちゃんの生活を向上させてあげよう!ってやってきたのに。そんなふうに言われたら悲しくなっちゃうよ!」
  • 「(なんだか、悪い奴ではなさそうだな……)じゃ、じゃあお話だけでも聞いてみようかな……。とりあえず、お腹が空いちゃったからご飯を食べながらでもいいですか……?」
  • 「しょうがない人だなあ……」

3軍の服を1軍にしたい……!


ようやく起きてくれたはましゃかに安堵する向上くん。そして、焼きそばパンを頬張るはましゃか。
  • 「モグモグ……で、あなたは一体なにものなんですか?」
  • 「人の生活を向上させるために生まれたんだ。何か生活で困っていることがあったら相談に乗って、その人を助けてくれる場所へ連れてってあげる。それが使命なんだ」
  • 「めっちゃいい奴じゃん……。じゃあ、私が困っていることを向上くんに伝えたら、助けてくれるの?」
  • 「そうだよ!なんでも悩みを言ってごらん!こんな見た目だけど、意外と物知りだし役に立つんだよ!」
「あれ見て」と、指を差すはましゃか。
  • 「ブリーチ剤で脱色したり、裾をカットオフしたり……いろいろとリメイク(※1)したんだけど結局着なくなっちゃった洋服。あの子たちには申し訳ないけど、あそこはお洋服の3軍が置かれる場所なの。なんだかかわいそうだなって思うからどうにかしたいんだけど、ずっとあそこに起きっぱなしで」
  • 「ブリーチ?カットオフ?」
  • 「市販のブリーチ剤ってあるでしょ?100円とかで売られているやつ。あれを使って、ゴムで縛ったTシャツに適当にブリーチ剤をかけるとこんな感じに色が抜けるの。簡単だし、服の雰囲気がガラッと変わるから重宝してるリメイク術で」
ブリーチ剤をかける前と、ブリーチ剤をかけてすすいだあと。
で、こちらが完成品!「縛り方によって、色の抜け具合が変わるからたのしいよ」と、はましゃか。
  • 「簡単にできるし、とってもいいリメイク術だね!」
  • 「これは、ブリーチしたのをさらにカットオフしたパーカー!普通にショート丈にしてもよかったんだけど、ポケットがなくなっちゃうし、お腹も冷えそうだなって思って後ろだけ短くして。インナーがちらっと見えるしかわいいよね。カットオフはハサミさえあればできるから簡単でおすすめ!」
  • 「たしかにかわいいね!でも、着なくなっちゃったんだ……。ここまで変化したアイテムをさらに良くするって、なかなか難題だね」
  • 「そう!どこかにリメイクの依頼を出すお金もないし……どうせなら自分の手でかわいくしてあげたい」
「閃いた!」と、笑顔を見せる向上くん。
  • 「それなら、シルクスクリーンでイラストをプリントしてみるのはどう?自分の手で好きな箇所に好きなイラストが入れられたら、また新しい気持ちで着れるんじゃないかな……?」
着用し「うん、やっぱり3軍だな」と、一言。
  • 「たしかに、自分でイラストを書いて、好きなところにプリントする。しかも自分の手でやれるなら愛着が湧きそう!それに、実はシルクスクリーンやったことなくて、興味はあったの!向上くんが連れてってくれるならいってみたいかも!」
  • 「そうと決まれば、善は急げ!ともだちがシルクスクリーンの工房をやっているから、そこへ連れていくよ。さぁさぁ、お出かけできる準備を進めて〜!」
  • 「(いい奴だけど、せっかちだなぁ……)それじゃ、ちょっと待ってね。準備するから!」

はじめてのシルクスクリーンにドキドキ!


はましゃかが向上くんとともに、向かった先はシルクスクリーンの体験工房[SURUTOCO]。こちらは、ボディを購入してシルクスクリーンを体験できたり、持ち込みのアイテムにシルクスクリーンを施したりできる施設。気になる方は、公式HPをチェックしてみてネ!

  • 「なんだか、楽しそうなところだね。ちょっとワクワクしてきちゃった!はやく中に入ろうよ向上くん!」
  • 「さっそく入ってみようか!工房が使えるように、予約しておいたからご安心を(えっへん)。まずは、どんな色でプリントするか決めるところからはじめよう〜!」
色数があまりに多すぎて頭を抱えるはましゃか。
  • 「向上くん。まず色が多すぎて全然決められないんだけど……どうしよう……」
  • 「お洋服の色とあわせて考えたらいいんじゃないかな?はましゃかちゃんは色の組み合わせが上手だから、自分のセンスに従ったらきっとかわいくできるよ!」
  • 「(向上くんってば、自己肯定感上げてくれるジャン……)じゃあ、カットオフしたブルーのパーカーは蛍光グリーン。ブリーチ染めしたTシャツはブラックにしようかな……!」
  • 「よし、決まったね!次は、プリントする絵を描こうか!」
工房では、イラスト用のペンや紙などが無料で借りられます。嬉しい!
  • 「このウネウネのやつは、乾杯したすぎて体がのびちゃった奴。ぬるぬる〜って乾杯しにくるんだよ。人の隙間をぬるぬる〜って」
  • 「へんなやつだなあ。下描きが終わったら、清書してスタッフさんに版にしてもらおっか」
清書するはましゃかと、見守る向上くん。
  • 「完成〜〜〜〜!!!できたよ!!!向上くん!!!次は何をすればいいの?」
  • 「シルクスクリーンの版をセットするアイテムを取りに行って、セッティングしたらいよいよプリントだね!そこにある、カゴに必要な道具をどんどん入れていって。必要なアイテムはカゴに貼られた紙に書いてあるから、それを全部持ってくるんだよ〜!」
  • 「本当に向上くんは物知りだなあ。洋服、着てないのになんでシルクスクリーンとか知ってるんだろう」
シルクスクリーンの枠に版をセット。専用のゴムをローラーで押し込んで、版がピーンと貼ったらでき上がり!
  • 「はましゃかちゃん、上手だね!プリントする位置が決まったらシワができないように、洋服の中に滑り止めをつけた板を入れて、いよいよプリントだよ!」
  • 「なんだかドキドキしてきちゃった。上手にできるカナァ……」
スタッフさんにインクの量を教えてもらって……。
専用のヘラで擦る……!一度擦ったら、もう一度同じ要領で擦って……
垂直に版を持ち上げたら、プリント完了!
「ぎゃあああああ、かわいいいいい」と、笑いが止まらなくなるはましゃか。
1枚目のシルクスクリーンが完成!水色と蛍光グリーンの相性がナイス!
  • 「向上くん!みてみて!めっちゃかわいいんだけど!!!!」
  • 「ほんとだ、とってもかわいい!Tシャツもかわいくなるかなあ?楽しみだね!」
同じようにインクを乗せて、二度刷りをしたら……
1枚目と同様にかわいすぎて笑いが止まらない、はましゃか。
乾杯しにいくために体が伸びてしまった奴。キュートである。
  • 「こっちの方が、うまくいったかも!色の組み合わせが絶妙〜〜〜〜〜!!!これは最高だ〜〜〜!」
  • 「あとは乾かせば、完成だね!さっき使った版も洗えば繰り返し使えるから、おうちに持って帰るといいよ。そうだ、せっかくだからおうちでもできるシルクスクリーンキットをプレゼントするよ。それさえあれば、3軍になっちゃった洋服たちをいつでもアップサイクル(※2)できるようになっちゃうね!」
シルクスクリーンのキットとインクは、[SURUTOCO]にて購入できますゾ!
  • 「いい奴すぎる〜〜〜!向上くんほんとうにありがとう〜〜〜〜!」

おわりに


  • 「いやぁ、突然おうちにやってきて『正直なんなの??』って思ってたけど、めちゃくちゃ楽しかったし、最高の1日になったよ〜。それにしても、かわいくできたなあ」
  • 「はましゃかちゃんよかったね!どう?生活は向上したかな?」
  • 「うん!とっても向上した!せっかくだから、かわいいものが集まっているゾーンに飾ろう……ゴソゴソ……」
シルクスクリーンのでき栄えにご満悦なはましゃか。
  • 「よかった、よかった!じゃあ、僕はそろそろ次のおうちにいってくるね」
  • 「えっ!お茶でも飲んでいきなよ!せっかくおうちに帰ってきたんだしさ……!」
  • 「また、はましゃかちゃんの生活を向上させにくるからさ!そのときにお茶ちょうだい!この世には生活で悩んでいる人がまだまだたくさんいるんだ」
次のおうちへ向かう向上くんを見送るはましゃか。

……と、いうわけで!はましゃかが自宅で眠らせていた3軍な洋服たちは、向上くんの手助けによって無事にお気に入りの1軍へと昇格したのであった。次回は、はましゃかの何を向上させてくれるのか......!お楽しみに〜!

  • ※1 リメイク……古い製品にアレンジを加えることで元の特性や素材を活かすこと。
  • ※2 アップサイクル……本来は捨てられる製品に新たな価値を付与し再生すること。ものとしての寿命があがるため、製品のアップグレードとも捉えられる。

【取材協力】

SURUTOCO
住所:東京都豊島区高田1-16-11
営業時間:10:30-18:30
定休日:水曜日
TEL:03-6718-4522
E-mail:surutoco@jam-p.com 
HP:https://www.surutoco.jam-p.com/

Profile

はましゃか

北海道生まれ、多摩美卒。肩書きと髪型を定めないフリースタイル自営業が見ていてヒヤヒヤすると話題に(なっていません)。人の家と冷麺が好き。最近始めた、似顔絵屋さんが楽しすぎてハマっている。

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向上くん

人の生活を向上させるために生まれた、コウイカ。生きがいは、誰かの生活を豊かにすること。好きな食べ物は、焼きそば。苦手な食べ物は辛いもの。未だどうやって生まれたかは解明されていない。

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