

Jリーグサポーターのみなさまなら、選手たちの熱い競り合い、華麗なドリブル、見事なフェイント、すばらしいボール奪取……と、さまざまなプレーに目を惹かれた経験があるのではないでしょうか。そんな僕らを魅了する彼らのプレーは、類稀なる鍛錬と天性の才能が合わさることによって実現しています。ですが、もうひとつの大事な要素が筋肉なんです。
そんな選手の筋肉についてもっと詳しく知るべく『マッスル鑑定団』では、NHK『みんなで筋肉体操』でおなじみの谷本道哉さんが選手の筋肉を徹底解剖。第二回となる今回は、屈強な肉体と豊富な運動量でゴールを量産するV・ファーレン長崎のフォワード・都倉賢選手の筋肉を丸裸にしました!
※新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえ、都倉賢選手への取材はオンラインで行なっています。
取材・文/関戸ナオヒロ
恵まれた体格で敵陣を制圧、
話題になった“あのポーズ”について。

- 谷本
- 今日はよろしくお願いします。都倉選手は筋肉が鍛えあげられていることはもちろんなんですが、身体がとても大きい選手だなという印象で。身長と体重ってどのくらいなんですか?
- 都倉
- 身長は187cmで、体重が83kgです。Jリーグのフォワードの平均身長と比べると、大きい方だと思います。そして、体脂肪率を聞かれない!さすが先生。
- 谷本
- 体脂肪率は正確に測れませんからね。機種によって値は違いますし、同じ機種でも計るタイミングで変わりますから。
- 都倉
- その通りです!
- 谷本
- 話が少しそれましたが、都倉選手といったらやっぱり、海外メディアでも話題になったバロテッリポーズだと思うんですよね。どんな気持ちであのパフォーマンスをしたんですか?
- 都倉
- ゴールを決めて衝動的にとったポーズだったので、あんなに話題になるとは思っていませんでした。でも、あのポーズは正面から見ると広背筋が出るので、逆三角形の身体を見せたかったのかも。
- 谷本
- 確かに見事な広背筋でした。サッカーだと、相手選手との競り合いの場面や、相手を背負ってボールキープする場面でよく使われる筋肉ですね。プレーのときは上半身の力って意識されてますか?
- 都倉
- やっぱり、ポストプレーやゴール前の競り合い、空中戦など、体格を生かしたプレーが自分の武器なので、広背筋は重要かなと思っています。そのために、懸垂とかはほかの選手よりも多くおこなってますね。
- 谷本
- 自分の強みをよく理解して必要な筋肉を鍛えていると。すばらしいですね。広背筋はもちろんなんですけど、ネットで都倉選手の写真を見たときに思わず注目してしまったのが内腹斜筋なんですよ。すごく大きいですよね。
- 都倉
- ありがとうございます!なんだか照れますね。
- 谷本
- 腰を捻る筋肉なので、蹴る動作をおこなうサッカー選手はみなさん発達する部位なんですけど、都倉選手もやはり大きいです。ウエストは太くなるのですが、内腹斜筋はおへそあたりからベルト下にかけてもう1つのV字を作ります。広背筋と内腹斜筋の「2つのV字を持つ男」として、次にバロテッリポーズするときはパンツを少し下げて上のVだけでなく、下のVもしっかり見せてください(笑)。ダブルVでお願いします。
- 都倉
- ゴールパフォーマンスでバロテッリポーズは難しいかもしれませんが、機会があればぜひ!
理論的なトレーニングが
パフォーマンスを引き出す。
- 谷本
- フォワードは身体を張ったポストプレーのほかに、厳しいディフェンスの裏への飛び出しといった瞬発力が求められるポジションですよね。
- 都倉
- もともと小さいときから足が速かったり運動神経には自信がありました。今でもジャンプの高さや、スプリントスピードなど、瞬発的な能力の高さは自分の長所のひとつだと思います。
- 谷本
- なるほど。クラブの練習以外で瞬発力を上げるために、何か自分で行っているトレーニングはありますか?
- 都倉
- スプリントトレーニングは20代から力を入れて取組み始めました。シーズンオフの期間に陸上10種競技の右代選手と合同トレーニングをしたり。今はスプリントコーチの秋本真吾さんに指導してもらっています。
- 谷本
- 元トップスプリンターの秋本さんですね。多くのサッカー選手のご指導をされていて、スプリントの上手なサッカー選手が増えた印象があります。
- 都倉
- 20代半ばから後半に差し掛かったときに、怪我のリスクを抑えつつ、無駄な力を使わない効率的な走りのフォームを身に付けたかったんです。理論的にスプリントトレーニングを行って、芝の上でも反発の力を利用できるようになったことで、90分間走り切れる身体の使い方ができるようになりました。
- 谷本
- アキレス腱のばねを上手に使えている、という感じですね。ダッシュだけでなくラン全般が変わったんだと思います。そのほかにしているトレーニングはありますか?
- 都倉
- 重点的に取り組んでいるのはスナッチ(バーベルを素早く頭上に持ち上げるトレーニング)ですね。重いものを頑張って持ち上げるというよりは、身体を効率良く使って、いかに軽い力で持ち上げられるかっていうのを意識しています。
- 谷本
- スナッチは瞬発的な筋肉の使い方を身に付けるのに最適なトレーニングですから、非常に良いですね。でも、スナッチやスプリントトレーニングのように瞬発的パワーを鍛えるトレーニングは、関節や靭帯などにものすごく負担がかかるんです。
- 都倉
- なるほど。
- 谷本
- 関節や靭帯は筋肉に比べると回復が遅いし、軟骨はすり減ったら戻りません。筋肉がいくらあっても膝を痛めてしまったら走れませんから。負担のかかるトレーニングはある程度回数を絞って、その分1本ずつ集中して質を高めて取り組んでもらえたらと思います。野球でいう「球数制限のような考え方」が、長く続けるのには必要ですね。
- 都倉
- ありがとうございます。谷本先生が言うように、瞬発的トレーニングは量よりも質が大事なので、回数をコントロールしながら取り組んでいきたいです。
成長に怪我や年齢は関係ない、
目標は生涯現役でいること。
- 谷本
- お話を聞いていると都倉選手は、自分の身体を分析して鍛えるべき箇所をしっかりと考えてトレーニングされていますね。昔から体の仕組みなどを考えてトレーニングしていたタイプですか?
- 都倉
- プロになって1、2年目はとにかく筋肉量を重視する感覚的なトレーニングをしていました。でも、プレーに連動するように身体を使いこなせないと意義が薄いと気づいて。トレーニングを変えたことで毎年ちょっとずつ自分の身体がアップデートされているのを感じます。
- 谷本
- すばらしいですね。筋肉って万人に共通の答えはないので、自分で試行錯誤して手応えを感じたトレーニングを続けている都倉選手は、非常にいいパフォーマンスを発揮できていると思います。
- 都倉
- 以前、前十字靭帯を損傷して、シーズンを離脱した経験があって。その時期は辛かったですけど、怪我がなければここまで自分の身体と向き合えていないと思うし、長いサッカー人生で見たら大事な時間だったと感じます。今年で36歳になりますが、数値的には身体の衰えは全くないので、まだまだ自分は成長できると感じています!
- 谷本
- なるほど。Jリーガーの選手生命も昔より伸びていますからね。トレーニングや試合で疲労した身体を回復させるために、セルフケアはどういったことをしていますか?
- 都倉
- 徹底しているのは練習後にアイスバスに入って身体の熱を取って疲労を残さないことですね。やっぱり、若いときに比べたら疲れが残りやすくなっていると感じます。高強度な練習と、十分な休養をしっかりと続ければ、年齢は関係なく右肩上がりに成長できると信じています。
- 谷本
- ベテラン選手が若手に混ざってピッチで活躍している姿は、やっぱり見ている人は勇気をもらえますしね。都倉選手にはぜひ、これからも長く活躍していただきたいです。
- 都倉
- ありがとうございます。ファンの皆さんに勇気を与えることができるように、目標は生涯現役!これからも成長し続けます!
- 谷本
- これからも頑張ってください!本日はありがとうございました!


※2022年7月28日計測
いかがでしたか?筋肉から紐解くJリーグ選手のポテンシャル。谷本さんから見た都倉選手は、自分の身体を理解し、成長をし続ける理論派マッスルな選手!とのことでした。次回のマッスル鑑定団にも、筋肉自慢な選手が登場予定です!お楽しみに!