

Jリーグサポーターのみなさまなら、選手たちの熱い競り合い、華麗なドリブル、見事なフェイント、すばらしいボール奪取……と、様々なプレーに目を惹かれた経験があるのではないでしょうか。そんな僕らを魅了する彼らのプレーは、類稀なる鍛錬と天性の才能が合わさることによって実現しています。ですが、もうひとつの大事な要素が筋肉なんです。
そんな選手の筋肉についてもっと詳しく知るべく『マッスル鑑定団』では、NHK『みんなで筋肉体操』でおなじみの谷本道哉さんが選手の筋肉を徹底解剖。そして第一回のゲストには名古屋グランパスのサイドバックで、鋼の肉体を持つ男としても知られる吉田豊選手をお招きして、彼の筋肉を丸裸にしました!
※新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえ、吉田豊選手への取材はオンラインで行なっています。
全身の筋肉量が
吉田選手のフィジカルの源!

- 谷本
- 今日は、よろしくお願いします。吉田選手を拝見すると、まず胴体が太い。それでいて絞れているなあという印象がありまして。まず、身長と体重、そして筋肉量をお聞きできますか?
- 吉田
- 2022年の3月18日にクラブで計測したデータなのですが、身長が168cm、体重は73.2kg、除脂肪体重が59.9kg、骨格筋量は34.3kg、体脂肪率は11%でした。
- 谷本
- やはり、かなり絞れていて筋肉量も多いですよね。30代の男性平均体重が69kgくらいで、骨格筋量はその40%程度の28キロくらいとされますからね。一般の方と比べて筋肉が6kg強多いことになります。
- 吉田
- そうやって言われると、たしかに多いですね……!
- 谷本
- ちなみに、クラブでの練習以外でトレーニングはされていらっしゃるんですか?
- 吉田
- 実は、去年までは筋トレらしいことはしていなくて。今年から、ベンチプレスやスクワットなどのトレーニングも始めたんです。とはいえ、まだ数回程度なので、純粋にサッカーで培った筋肉が体に付いているんだと思います。
- 谷本
- 競技だけでもそれなりに筋肉はつきますが、当たり負けをしない強いフィジカルには筋トレでそこから上乗せするのが得策です。だから、トレーニングをされている選手も多いはずなのですが、筋トレなしで今の体型を持ち合わせているのは、筋肉がもとから多くてつきやすい天性の素質といえますね。羨ましい。
- 吉田
- そう言われると少し照れますね。
- 谷本
- ちなみに、食事などで気にかけていることはありますか?
- 吉田
- 健康的な食事を心がけるようにはしています。昨日の朝は、ごはんに卵にシャケに味噌汁、いわゆる朝食ですね。昼は練習後にバナナ1本食べるようにしていて。お昼もきまったものはないけど、パスタだったり、白米だったり。ただ、揚げ物はたべないですね。夜は基本的に妻が5種類くらいの小鉢を細かくだしてくれて、それを食べています。
- 谷本
- 朝ごはんが良いですね。他の選手にはないこだわりとかありますか?
- 吉田
- 強いて言うなら、今はコロナ禍で食べる機会が少ないのですが、ちっちゃい頃からジビエ料理を食べていて。それは変わったところかも。ちなみに、プロテインやサプリも飲んでないですね。
- 谷本
- やはり、ナチュラル。野生ですね。イメージを裏切りませんね(笑)
自分の筋肉で一番好きなパーツはお尻。

- 谷本
- 各筋肉のサイズもお教えいただけますか?
- 吉田
- 上腕が30センチ、前腕が27.5センチ。ウエストが84センチで、ヒップが100センチ。太ももが61.5センチで、ふくらはぎが40.5センチです。
- 谷本
- ウェストが太いですね。あとヒップも大きい。吉田選手が得意とするコンタクトプレイや、瞬発的なスプリントが実現するのにも納得がいきます。ちなみに、一番好きなパーツはありますか?
- 吉田
- お尻の筋肉ですね。ふくらはぎや太ももを褒められることは多いんですが、僕のお尻ってキュッと上がっていて、外国人のスポーツ選手みたいなんです。ここは自慢です。
- 谷本
- お尻の上部に筋肉がついてるのでしょう。骨盤が前傾しているのもありますね。ダッシュや切り返しといったサイドバック特有の動きは、お尻の上のほうの大臀筋上部や中臀筋の発達を促します。なので競技のなかで発達して進化してきた筋肉だと言えますね。そして、その筋肉の発達はプレーにもいい影響を与えているはずです。あと、シンプルにお尻が上についているとかっこいいですもんね。
- 吉田
- プレー中に鍛えられていたんですね。それに、それがいい影響を与えてくれているのは嬉しいですね。僕のお尻も褒められて喜んでいると思います。
小さい体で、大きな選手に打ち勝つ。
吉田選手ならではのプレースタイル。

- 谷本
- 吉田選手自身が感じる、プレーのなかで一番気持ちいい瞬間もお伺いできればと。
- 吉田
- 一番気持ちいい瞬間ですか……。やっぱり、大きな選手に打ち勝つときですかね。それも、タッチラインを割りに行くプレーではなくしっかりぶつかりにいって、ボール奪取するところまでできた瞬間は気持ちいいですね。
- 谷本
- やはり、大きな選手との戦いは燃えますよね。サポーターも一番熱狂できる瞬間。負けないように工夫されているところはあるんですか?
- 吉田
- そもそも180cmを超える選手とぶつかるとき、身長的に肩と肩ではぶつからないんです。だから、相手選手とボールの間に体を入れる時に突き上げるように下から潜り込むことは意識していますね。
- 谷本
- それは力学的に大正解なんですよ。下から突き上げると相手の体が浮くので踏ん張れなくなる。一方で突き上げている自分は上から押し返される分強く地面を押すので、めっちゃ踏ん張りが効くんですよ。「相手の踏ん張りを殺して、自分の踏ん張りを効かせる」ちなみにこの原理を存分に活かしているのが相撲の回しの取り合いなんです。
- 吉田
- なるほど、まわしを持つときは下からですもんね。
- 谷本
- そうです。まわしを持つ主なの理由は相手を持ち上げることなんですね。その間自分は強く踏ん張れて浮かされた方は踏ん張れなくなる。だからお互いをもちあげ合う。アメフトのラインのぶつかり方も一緒で、突き上げる。相手は浮いて、踏ん張れない。自分はより踏ん張れる。なので、吉田選手は自分が身長が低いところをうまく利用してプレーしてる。
- 吉田
- こうして説明を受けると自分のプレーがクリアになって楽しいです。
- 谷本
- 相撲の閂(かんぬき)のような上から吊り上げる方法もありますが、サッカーではそれは反則ですからね(笑)。下からいける身長の低さが、武器にできる場面があるわけです。そしてそのためには、下半身を中心に強い筋肉があったほうがもちろんよくて、吉田選手にはそれがあります。
- 吉田
- そういっていただけると僕も励みになります。自分のプレースタイルがめっちゃ好きですし。小さくても大きい選手に勝てる選手にもっともっとならないといけない。一対一の勝率をあげて、絶対負けない選手になっていきたい。そう考えると、筋力トレーニングを適度に取り入れていくことも必要なのかもしれませんね。
- 谷本
- そうですね。シーズン中に劇的な変化を与えるのは、ちょっとリスクがあっておすすめできませんが、次のオフに本格的に取り組んでニューバージョン吉田に、というのはアリかもしれません。ところで、吉田選手はふくらはぎの筋肉も強いので、フォアフットランに変えてプレーするのも適応できそうですよね。
- 吉田
- フォアフットラン……?
- 谷本
- 陸上の短距離選手の走り方なんですけど、最近は長距離の選手もやるようになって。サッカーって短距離長距離組み合わせのスポーツですから。慣れると短距離も早くなるし、長距離も楽になる走方です。
- 吉田
- そこまで考えたことないけど、前傾なんですよね常に。なので、どちらかというとつま先でたってるのかなって、今振り返って思いました。低姿勢で獲物を狩るような感じで狙ってるので。とはいえ、ちゃんと意識したらプレーのパフォーマンスもあがるのかも。
- 谷本
- とは言いましたが、吉田選手は感覚重視ですよね。なので己の感覚を信じるってのも一つのやり方なのでいいと思います。ただ、サプリやトレーニング、新たな走法にもそれぞれいいところがあります。これからベテランになっていくときに、新しいことにチャレンジしてみてもいいかなと。
- 吉田
- ですね。これからもファンのみなさんを喜ばせられるプレイができるよう精進していきます!
- 谷本
- 期待しています!今日はありがとうございました!


※2022年4月30日計測
いかがでしたか?筋肉から紐解くJリーグ選手のポテンシャル。谷本さんから見た、吉田選手は筋肉量が非常に多くマッスル度が高い選手!そして、中でも瞬発力が優れている!とのことでした。次回のマッスル鑑定団にも、筋肉自慢な選手が登場予定です!お楽しみに!