Jリーグ最前線レポート 『クローズアップJプレイヤーズ!』 一流現役選手が語るサッカーの魅力 ~ ヴィッセル神戸 酒井高徳さん ~ 取材_牛島康之(NO-TECH) 撮影_木村華子 制作_マガジンハウス

混戦をきわめた明治安田生命Jリーグ2019シーズン。今年も数多くのドラマがフィールドで生まれました。各チームから来季に向けた動きもだんだんと見えてくるなか、今回も浦和レッズの柏木陽介選手に続き、元日本代表の現役選手のインタビューを敢行!シーズン途中に加入したからこそ語れる本音、そしてドイツ・ブンデスリーガとJリーグの違いや日本とドイツのサッカー観の違いなど、いろいろと語っていただきました。

守備面でのチームにおける自らの役割
ドイツと日本のサッカー観の違いを語る

フィジカルが強く、長い距離をアップダウンすることができるスタミナが持ち味で、サイドにおいて左右どちらのポジションでもプレーできるのが強みの酒井高徳さん。2019シーズンの8月からヴィッセル神戸に加入してからは、対人守備おいても絶対的な安定感を見せ、守備面に不安を抱えるチームからの信頼は厚く、期待度も高い。そんな酒井高徳さんが、自らの経験則から語るブンデスリーガとJリーグの異なる部分や、ドイツと日本のサッカー観の違い、そしてこれからのJリーグが繁栄していくために必要なことを語ってくれた。

Profile酒井高徳さん

1991年3月14日生まれ。新潟県三条市出身。アルビレックス新潟からキャリアをスタートさせ、2011年にはドイツ・ブンデスリーガのVfBシュトゥットガルトに期限付き移籍。また2015年からはハンブルガーSVへと移籍し、2016年からはチームキャプテンも務める。2019年8月にヴィッセル神戸への移籍を決断し、Jリーグへ復帰した。日本代表としてもU-22のロンドンオリンピックやブラジル、ロシアの世界的サッカーの祭典を経験。

Jリーグに復帰した理由
そして次の段階のチャレンジへ

「夏から日本に復帰しましたが、海外に残るという選択肢もあるなかで、ハンブルガーSV以上にチャレンジできる環境やオファーがありませんでした。またハンブルガーSVに残って、1部復帰に向けて昇格争いをするというモチベーションを保つことも難しくて……。そこで自分がタイトルを獲ったり、チャレンジするうえでの選択肢を考えた時、その中に“ヴィッセル神戸”がありました。海外の著名選手を獲得して、チームを強化し、日本を代表するチームになっていきたいというヴィッセル神戸の強い意志や未来に対するビジョンも、自分もそのピースの一つとして加わりたいと自分の背中を押してくれる一因になりました」

Close Up Players GOTOKU SAKAI

スーパースターが多数所属する
ヴィッセル神戸に加入して感じたこと

「ヴィッセル神戸にはアンドレイス・イニエスタをはじめ、ダビド・ビジャやトーマス・フェルマーレンなど海外でも活躍したスター選手が所属しています。一緒にプレーしてみて、もちろん巧いし、局面を打開するようなプレーは流石だなという部分もあります。ただ、彼らはそれ以上に人間性がすばらしいと感じました。練習も100%で取り組むし、若手に対しての指導や人との接し方もそうだし、ファンサービスもしっかりしている。どんな環境でもプロとしてやるべきことをしっかりやっているのは、当たり前だけどすごく尊敬できる部分ですね。一流選手の振る舞いだからこそ、自分も見習わなければいけないと思いました」

GOTOKU SAKAI

守備に不安定さを残すチームに
これまで培ってきた経験を還元する

「自分がチームに求められているのは、やはり守備面のところです。攻撃はタレントが揃っているので、やはり不安定な守備をどうにかしたいと思いました。すぐに自分ができることは、これまで培ってきた経験を活かしながら、ラインをしっかり上げたり、声をかけながら崩されないように守備をするという部分で、そこがチームに加入して意識したところです。もちろん言葉の問題で、外国人選手と日本人選手が分断されないように、チームの雰囲気が和気あいあいとなることも心掛けています。試合だけでなく普段から選手同士がコミュニケーションをとることも大事なので。だからこそそういった橋渡し的存在になれればいいと思いますけどね」

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文化、歴史、サッカー観
すべてが異なるドイツ・ブンデスリーガ

「文化はもちろん、サッカー観自体が異なるので一概にはいえませんが、ブンデスリーガとJリーグの違いを感じたのは攻守の切り替えの速さですね。ドイツで8年間プレーしてきて、ブンデスリーガではチームがボールをとられたとき、逆にボールを奪ったときの次のプレーに移るための選手の反応が段違いに速いんです。ドイツでプレーしていた時はその切り替えを刷り込まれてきたので。そういった戦術的インテンシティの部分も高いし、パワーも迫力も全く違うと感じました。もちろん足先の技術など日本が優れている部分もありますが、ボールを止める技術だったり、局面局面でのパスの強弱だったり、シュートを打つための予備動作など、そういったテクニック面では動きながら流れの中でそのプレーができている分、ドイツのほうが数歩先にいる感覚があります」

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至福のひとときは子供と遊ぶ時間と
ゆっくりコーヒーを飲む時間

「普段、幸せを感じるときは、やはり子供と一緒に遊んでいるときですね。それ以上のものはこの世に存在しないと思います(笑)。それ以外のリラックス法としてはゆっくりとコーヒーを飲むことですね。正直、日本はどこにいっても騒がしくて落ち着けるところがあまりないです……(苦笑)。ドイツは、中心街から少し離れれば車どおりも人どおりも少ないので、ゆっくりとした時間が流れていて、コーヒーを飲みながら落ち着いてリラックスできていましたけど、日本ではなかなかそういった時間がとれていません。早くお気に入りのコーヒーと落ち着ける場所を見つけたいですね。あとは服も好きなので、服を買いに行ったりすることも気分転換になっています」

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選手とファンの位置関係が微妙なドイツ
選手ファーストの日本

「いい面も悪い面もあるのですが、日本では“選手ファースト”でファンが選手より高い位置にいないのですが、ドイツはファンが選手よりも高い位置にいて、しかも強い(笑)。ドイツではチームに対して、ホームタウンだけではなく国内に公民館とかをベースにした私設のファンクラブが数百数千と存在しています。選手たちは実際にそのベースへふたり組とかで訪問して、ファンにサインカードをプレゼントしたり、一緒に食事をしたりしています。日本もこういう状態になるのが正解かどうかわかりませんが、練習を公開して見に来てくれたファンにサインするとか一緒に写真を撮ったりというのは、地味だけど重要な気がします。もちろん下部組織を充実させたり、サッカースクールを開催するなど、競技人口の裾野を広げることも大事ですが、やはり一番重要なのは、自分たちのプレーを見てもらえるように、強くて魅力的なチームになっていくことだと思いますね。そういった役割を担えるようにこれからも頑張っていきたいです」

GOTOKU SAKAI