Jリーグ最前線レポート 『クローズアップJプレイヤーズ!』 一流現役選手が語るサッカーの魅力 ~ 浦和レッズ 柏木陽介さん ~ 取材_牛島康之(NO-TECH) 撮影_比嘉研一郎 制作_マガジンハウス

明治安田生命Jリーグ2019シーズンも優勝の行方が気になってくる佳境に突入。上位のチームは、優勝争いはもちろんACL出場権獲得に向けての勝ち点獲得も大事になってきます。今回も鹿島アントラーズの内田篤人選手、ジュビロ磐田の川又堅碁選手に引き続き、現役選手のインタビューを敢行。シーズン中だからこそ語れる本音、そしてJリーグや所属チームに関してはもちろん、自分自身に関しても深く語っていただきました。

チームを引っ張る
キャプテンとしての重圧

2017年の攻撃面のキープレーヤーとしてAFCチャンピオンズリーグ制覇に貢献、現在も替えのきかない存在である柏木陽介さん。昨シーズンからキャプテンを任されるも、今シーズンは自身のケガやコンディションの悪さから試合に出られない時期を過ごしていました。最近はケガからも復帰し、コンディションを上げつつも自身の“感覚”を取り戻すことに重きを置いています。その柏木さんが感じた、自分自身の環境や気持ちの変化やJリーグの盛り上げ方について語っていただきました。

Profile柏木陽介さん

1987年12月15日生まれ。兵庫県神戸市出身。U-17、U-18日本代表にも選出されながら、サンフレッチェ広島を経て、2009年12月、浦和レッズへ加わる。主戦場はトップ下やボランチで、チームの攻撃のタクトを振るう役割を担う。高度なパスセンスと高い位置で奪い取るディフェンスで、攻守に貢献。AFCチャンピオンズリーグ2017で浦和の10年ぶりの優勝に果たし、大会MVPも受賞。2018年には史上52人目となるJ1通算350試合出場を達成した。昨シーズンからはキャプテンも任される浦和レッズになくてはならない存在。

Close Up Players YOSUKE KASHIWAGI

時間がかかったケガからの復帰
今はまだ “感覚”を戻している最中

「やっと練習にも復帰できましたが、今のコンディションはまだまだですね。手術して長い時間休んでいたので、感覚が戻ってない感じはあります。ボールタッチうんぬんというよりも、守備の時に相手に対して寄せるのか、寄せないのかみたいなフィーリングという面では、戻ってない感じ。監督が代わって、大槻毅監督のもとチームの方向性もより明確になってきた雰囲気はあります。僕がまだピッチに立ててないので、何とも言えないですけどね(笑)」

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著名選手が来ても変わらない
Jリーグのパワーバランス

「シーズン前から海外の有名選手が続々とJリーグに参戦していますが、それらのチームのレベルが格段にあがったかというと、そんな感じはしないですね。Jリーグは元々、どのチームの力も均衡しているので、そこは変わらないまま。もちろん、観に来てくださる方はかなり増えたと思います。ただ、そういった有名選手を補強してもチームは勝てないんだな……というのは感じましたね。ヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタ選手やダビド・ビジャ選手は一瞬で違いが生み出せる選手なので、早く一緒にピッチで対戦してみたいですね」

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“キャプテン”という重圧に
打ち勝つことが課題

「昨シーズンからキャプテンを任されていますが、自分に求められているのは特に攻撃の場面でゴールに絡んだり、違いを生み出すこと。ただ、この1年半ぐらいは自分の良さを出せず、歯がゆい思いをしているのは事実です。もちろん負ければキャプテンのせいだし、チーム的にも負けは許されない部分もあるので、自分のなかでネガティブになることも多かったですね。一生懸命やっても伝わらないし、自分のプレーも上手くいかないし……という悪循環に陥った時期もありました。ただ、伝統ある“浦和レッズ”でキャプテンを任せてもらえるのは誰もができることではないので、そのプレッシャーに打ち勝っていくのも今後の課題のひとつですね」

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サッカー人生の暗黒期を
どう乗り越えていくか

「この1年半は自分のサッカー人生の中でも、かなり調子が良くない時期です。プレー面でも経験値的にも、30代に入ったころが一番いいのかなと予想していましたが、それができていないし感じられないので、かなりもどかしいです。元々、自分はひとりでどうにかできるタイプではないんですよ。周りがいいから自分も活きてくるし、周りも活かせることができるプレーヤーだということはわかっていましたが、その両方を再認識した1年半だったなと思いました。負傷した箇所はもう違和感はないです。自分の中では正直、苦しい時期でのケガだったので、神様が“今は休んでおけ”といってくれてるんだなと捉えて、変に早く復帰しようとか焦ることはなかったです。ただ、復帰した時には自分を100%出せるように仕上げて行ければいいなと思っていました。とにかく、負傷も癒えて、監督も代わって、これからいい方向に向かっていくだけです!」

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柏木流のリラックス方法は
美味しいご飯とひとり旅

「普段、幸せを感じるときは、美味しいご飯を食べているときですね(笑)。最近は食通の人とご飯に行くことが多いので、普段行ったことがないお店や、食べたことのない料理が出てくるとテンションもあがるし、本当に楽しいです。コンディション作りの要である食事が、気分転換にもつながっていますね。もちろん家族と一緒に温泉とか行ったりしますけど、非現実を感じるためにひとりでふらっと遠出したりすることも自分をリラックスさせる方法のひとつになっています」

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浦和が強くなければ
Jリーグは盛り上がらない!

「やはり“浦和レッズが強くなる”ということが、Jリーグが盛り上がるひとつのポイントになると思います。例えば、Jリーグもリーガ・エスパニョーラのFCバルセロナやレアル・マドリードのように2強と呼ばれるような突出したチームが出てきても面白い。そういったクラブになれるのが浦和レッズですし、なれるポテンシャルも持っていると思います。あと、最近は若い選手が半年ぐらい活躍して、すぐ海外に行ってしまいます。少なくとも1~2年Jリーグで活躍してから世界に行ってくれると、間近に観られる機会が増えて、盛り上がりますよね。Jリーグ、そして日本サッカーが進化していくにはそういったことも大事になってくるかなと思います」

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