Jリーグ最前線レポート『クローズアップJプレイヤーズ!』~ 鹿島アントラーズ 内田篤人さん ~ 取材_牛島康之(NO-TECH) 撮影_土佐麻理子 制作_マガジンハウス

熱戦続く明治安田生命Jリーグ2019シーズン。海外の大物選手が続々リーグに参戦するなどシーズン開幕から多くの脚光を浴びてきました。サポーターの皆さんもリーグ戦の盛り上がりを肌で感じていらっしゃると思います。今回は新企画として、ついに現役選手のインタビューに成功。注目を浴びるJリーグや所属チーム、そして自身のことに関して色々と伺ってきました。

稀代のクラッキが語る
Jリーグと自分自身の気持ちの変化

鹿島アントラーズはもちろん、ドイツ・ブンデスリーガのシャルケ04でも右サイドを主戦場とし、そのスピードと攻撃力で世界の強豪と渡り合った経験を持つ、内田篤人さん。昨シーズンから、古巣である鹿島アントラーズに復帰し、今シーズンはキャプテンとしてチームを牽引する。その内田さんが感じたJリーグと自分自身の環境、そして気持ちの変化について語っていただいた。

Profile内田篤人さん

1988年3月27日生まれ。静岡県出身。10代のころからアンダー世代の日本代表を経験し、2006年に鹿島アントラーズに入団。その年の開幕戦でクラブ史上初となる高卒ルーキーでのスタメン出場を果たす。2010年7月1日にドイツ・ブンデスリーガのシャルケ04へ移籍。日本代表でも南アフリカ、ブラジルと2大会のFIFAワールドカップを経験する。昨シーズンから鹿島アントラーズに復帰。今シーズンからはキャプテンを任される。

Close Up Players ATSUTO UCHIDA

チームの調子を
上げるのはこれから

「今のコンディションはまずまずといったところ。膝は状態を見ながらうまく付き合っていくしかないですね。コンディションが良くても試合に出る出ないは監督が決めることなので、そこは任せています。チームにはほかにも怪我人が出ていますが、怪我した選手はしっかり状態を回復させて戻ってきて欲しいし、戻ってきた選手がどんどん活躍していけばと思います。現状、チームにもいい選手がいるし、2チーム分は作れるようなシステムがあるので、そこはローテーションさせながら、うまくやっていけば調子も上がってくると思います」

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クオリティを保つのが
最重要課題

クオリティを保つのが
最重要課題

「昨年、ドイツから鹿島アントラーズに復帰しましたけど、Jリーグもだいぶ環境が変わった気がしますね。第2節の川崎フロンターレとの試合でも、スタジアムの雰囲気だとか、ロッカールームの施設の充実みたいなものは、以前とは違うなと感じました。とくにあの試合は金曜日という平日の開催だったにもかかわらず、サポーターも大勢駆けつけてくれて、観客も沢山入っていましたから。Jリーグはエンターテインメントであり、違う側面から見るとある意味ビジネスなので、審判も選手もクオリティの高いものを見せ続けないと、お客さんも面白いと思ってくれないし、スタジアムに足を運んでくれないと思います。だからこそ、そのレベルだったり、サッカーの質をどんどん上げていかなければいけないと思いました」

ピンチをチャンスに
変える好機

「今シーズンは、(小笠原)満男さんからキャプテンを受け継ぎましたけど、自分は満男さんの代わりにはなれない。満男さんは満男さんのやり方でやってきたはずなので、満男さんに追いつくとかそういうことではなく、自分の思ったやり方でやっていくだけですね。やり方というか、自分が感じてきた全員で勝ちに行くという鹿島のスタイルを気持ちとかで見せていければな……と思いますね。自分はキャプテンとかやったことがないので、とにかくやるだけ。正直、満男さんが抜けた穴は大きい。チームがうまくいかないときに満男さんを見れば、なんとかなるかなと思っていた部分も大きいし、ずっとタイトルを獲り続けてきた人がいなくなるのは、チームの過渡期だと思います。ただ、それをピンチではなくチャンスと捉えて、自分がそのポジションになってやるという若い選手がどれだけ出てくるかが大事ですね」

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チームも進化しなければ
いけない

チームも進化しなければ
いけない

「Jリーグ自体も少しずつ変化が出てきています。ヴィッセル神戸のように大物外国人選手で補強したり、川崎フロンターレや名古屋グランパスみたいにヨーロッパ流のサッカーを取り入れるチームも多いですよね。最近ではスペイン人の監督も増えたので、戦術を試合によって変えてくるスタイルも増えてくると思います。もちろん、鹿島も少しずつ進化していかないといけない。ただ鹿島には、フォーメーションは4-4-2でブラジル人選手を生かすスタイルが伝統としてありますので、それも面白いと思います。チームがうまくいかないときに戻れるスタイルがあるのは強みですけど、今シーズンは“変化”という部分もテーマに掲げているので、少しずつでも現代サッカーにフィットできるように状況ごとで臨機応変に対応していければと思います」

かけがえのない家族の存在が
優先順位の第一位に

「サッカー以外のリラックス法としては、最近は子供と遊ぶことですね。子供を公園に連れて行ったりしますよ。もちろん、周りの人にはバレていると思いますけど“話しかけないで”オーラが出ているらしく、声をかけられることはあまりないですね(笑)。変化といえば、家族ができてからは自分の中では家族が第一になりましたね。昔はなによりもサッカーのほうが大事でしたけど、結婚してからは優先順位の一番が家族に変わりました。ヨーロッパで暮らしているときも、選手のみんなから“家族が大事”という雰囲気が伝わってきました。そういった気持ちが家族をもって、初めてわかった気がします」

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今シーズンは必ずJリーグの
タイトルを獲りたい!

今シーズンは必ずJリーグの
タイトルを獲りたい!

「昔はボールを蹴ること、サッカーをすることが純粋に楽しかった。ただプロに入ってお金をもらうようになってからは、残念ながら少しずつですけど向き合い方が変わっていって“これは仕事だ”という感情も芽生えてきたのは事実です。理想はいつでもサッカー小僧でいられること。それが幸せだと思います。ただ、自分みたいにサッカーを一度でも“仕事”だと感じてしまうと、今まで楽しめてきたこともワクワクしなくなったり、感情の起伏も少なくなってきた気がします。優勝すればまた、それは格別でしょうけど。最近はサッカーで“幸せ”を感じることも少なくなってきました。けど、自分が引退したときに“あのとき、ボールを蹴られていたこと自体が幸せだったんだな”と気づくんだと思いますね。まだまだ引退はしないですけど(笑)。今年は特にJリーグのタイトルを獲りたいです。リーグ3連覇をしているのはウチ(鹿島アントラーズ)だけなので。それを川崎フロンターレにさせちゃいけないと思います。とにかく、やるだけです」