日本代表OBたちが教えるサッカーの魅力 『完全ガイド!Jリーグプロファイル』 日本サッカーのススメ 〜 サッカー解説者 松木安太郎さん 〜 取材_牛島康之(NO-TECH)/ 撮影_大村 聡志 / 制作_マガジンハウス

ついに開幕した2018年シーズンのJリーグ。新たに昇格してきたクラブが快進撃を続けるなど各チームがしのぎを削っていますが、もっともっとJリーグ、そして日本サッカーが盛り上がるにはどうしたらよいのか。そんな命題を元Jクラブ出身者や元監督などOBの方々にお話を伺っていきます。日本サッカーがもっと熱くなるための金言をどうぞ!

視聴者の声を代弁する名解説者が
Jリーグの今と昔について語る

Jリーグの黎明期を常勝軍団の監督として経験してきた松木さん。現在は日本サッカー界を俯瞰してみる位置にいることから、Jリーグの今と昔について色々と語っていただきました。日本サッカー界がこれから抱えていく問題など考えさせられる金言は見逃せません。

Profile 松木安太郎さん

1957年生まれ東京都出身。小学生からサッカーをはじめ、DFとして日本代表も経験。引退後はラモス瑠偉、三浦知良、北澤豪らが所属する個性派集団だったヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ1969)の監督を務め、黄金期を築く。現在はサッカー解説者として、情熱のこもった解説が人気を博し、サッカー関係のテレビ番組を中心に活躍中。

Future of Soccer

個性派チームを率いた
松木さんが感じるJリーグ今昔物語

昔と比べて、Jリーグのチームはクラブとしてすごく充実してきた感があります。広報スタッフがいて選手も豊富にいて、クラブという組織としてチームを運営できているなと感じます。当時のクラブはそういった意味では手探り状態。自分が率いたヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ1969)はプロチームの先駆けとして組織で運営されてましたね。ただ私が指導していた時期も、現場や練習場などのセキュリティ面では物足りなさはありました。例えば今は練習場をクローズドにして秘密の練習じゃないですけど、セットプレーやそれに関するトレーニングなどができます。昔はそういったものはなかったですから今の環境が羨ましいですよ(笑)。

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かのバルセロナでもプレーした
若き世代の逸材に熱視線

現在、Jリーグの若手選手で注目しているのは、FC東京の久保建英選手です。もう彼は誰もが認める逸材だと思います。本音としてはあまり騒がずにそっとしておきたいですけどね。まだ高校生ですが、何年もJリーグを経験してきたような落ち着きがありますよ。試合後のコメントなどを聞いても、すごく頭のいい選手だなと思いますから、大事に育てて欲しいですね。他にも現在、U-20世代で活躍している選手も出てきているので、実際に生でスタジアムに観に来て、発見して欲しいですね。

YASUTARO MATSUKI

松木さんが提言する
今後の日本サッカー界の課題とは?

残念なのは、魅力のある選手がどんどん海外へ行ってしまうことですね。昔は日本サッカーのレベルを上げるために、海外へ武者修行に行って、海外のクラブでもレギュラーを張るというのがステータスだった時期もありました。けど今は選手が海外に出すぎてしまって、Jリーグ自体の活性化が少し足りない気がしています。一時期のブラジルみたいにほとんどの選手が国外でプレーして、国内リーグが低迷するなんて事態も起こりかねない。サッカーの先進国が抱えてきた問題を今度は日本も経験し、解決へ向け考えなければいけない時期になってきたんじゃないかなと思います。

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Jリーグだけでなく
世界を見据えたチーム作りも必要

今のJリーグのチームを見ると、各チームのコンセプトや戦術が似ている気がします。同じような基準で選手を選び、同じような戦術でプレーするチームが多い。個性のあるチームが減りましたね。戦術が似ているなら、いい選手がいるチームが勝ちますから。また、いいサッカーをしているけど負けたみたいな事態も避けるべきことですよ。現状、上位チームはACLに出場しますけど国外のチームと戦うと、なんとか勝てるけど試合内容を見ると結構やられている。だからこそ、色々なプレースタイルのチームに対応できるような戦術を作っていかないと、日本だけで通用するチームになってしまうので、そこも今後考えていかなければならないところかなと思います。

YASUTARO MATSUKI

夢は日本代表監督!?
Jリーグ監督もまだまだ視野に

もし自分がJリーグのチームで監督をするなら、優勝が狙えて選手も充実し、本気でチームを強化していく方針のクラブの監督をしてみたいですね。現在のJリーグは、このチームを解任された監督が次にこのチームの監督になるといったようなこともあるので、新しい監督が生まれにくい環境にもなっていると思います。もちろんJリーグでの経験がない監督を招へいするのはリスクもあるので仕方ないですが、いろんな監督にチャンスが生まれるようになればいいなと思います。自分もライセンスを持っているのでお声がかかればJリーグの監督に復帰してみたい気持ちはありますよ(笑)。

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日本サッカー界が迎える
大事な転換期は“今”

日本代表が強くなるには、必然的にJリーグが盛り上がることが大事。各チームともイベントなどを開催して、女性や子供も観たくなるような雰囲気づくりを頑張っていますよね。やはり選手との距離感も大事だと思うので、選手が参加して選手と身近にふれあえるイベントをもっと増やしてもいいような気がします。あとは魅力的な選手が増えれば、それを見に来るお客さんも増えますよ。自分のチームでユース世代から育てて、トップにあがる選手が増えてくれば、サッカーをやっていく上でも目標になるし、地元の選手も応援したくなるので、そういう育成の面でも色々考えていくべき岐路に立っているのかなと思いますね。

YASUTARO MATSUKI