“仕事であり、趣味であり、生きがい 『いちばん幸せなのは、食べているとき』 “食”にこだわり続けたぶれない35年間 ~ タレント ギャル曽根さん ~ 取材_岸良ゆか
撮影_赤澤昂宥 スタイリスト_松川茜 制作_マガジンハウス

華奢な身体にギャル風メイクの女の子が、信じられない量の食べ物を次から次へと平らげていく──。2005年、突如テレビの世界に現れたギャル曽根さん。その人気は一時的なブームにとどまらず、16年が経ち35歳になったいまも第一線で活躍。結婚と出産と経験し、家族のためのレシピ本を出版したり、家族と共演するYouTubeをはじめたりと、さらに活躍の場を広げています。デビュー当時、周囲から「すぐに飽きられる」と揶揄されたという彼女が人気タレントとして定着した背景には、“食べること”への徹底したこだわりがありました。

食べるのが好きな女の子

たとえ大食い対決の場でも、好きな食べ物が出てくると「おいしそう!」と満面の笑みを浮かべてペロリ。お茶の間を魅了する無邪気な食べっぷりは、幼いころからの自然な行為。とにかく食べることが好きなうえ、母子家庭で育ったこともあって料理を早くに覚えたギャル曽根さんは、いつしか食べ物に携わる仕事を志すようになったそう。

「調理師の専門学校を卒業して、学生時代にバイトしていた店にそのまま就職して調理の仕事をしていたら、店長がテレビの大食い大会に応募してくれたんです。当時、ラーメンを10杯食べたら1万円、パフェを5キロ食べたら5000円、みたいなチャレンジメニューをこなしているうちに、巷で有名な『よく食べる子』になっていて(笑)」

はじめて挑戦する大食い大会で、見事に予選通過。本選はテレビ東京の「元祖!大食い王決定戦」で放映され、それがギャル曽根さんのテレビデビューとなります。

Profile

ギャル曽根さん

1985年、京都府出身。2005年、テレビ東京の「元祖!大食い王決定戦」でデビューし、一躍売れっ子大食いタレントに。現在は日本テレビ「有吉ゼミ」、TBSテレビ「ラヴィット!」「バナナマンのせっかくグルメ!!」、フジテレビ「林修のニッポンドリル」、テレビ静岡「くさデカ」にレギュラー出演するほか、『ギャル曽根流 もっと大食いHAPPYダイエット』『ギャル曽根さんといっしょにはじめての離乳食』などのレシピ本の監修も手がける。2021年4月にはYouTubeチャンネル「ごはんは残さず食べましょう」を開設。

Special Interview GAL SONE

大食いタレントとして“食べる”プロに

「元祖!大食い王決定戦」への出場で、テレビデビューを果たすことになったギャル曽根さん。けれど、その日の大食い対決のメニューは、あまり得意ではない「そば」でした。

「いまでこそ好き嫌いはほとんどありませんが、当時はそばがあまり好きではなくて。途中で飽きてしまったので、箸休め的に置かれていた天ぷらを食べたらすごくおいしかった。それで、対決に関係のない天ぷらばかり食べていたら負けちゃいました(笑)」

フードファイトに勝つことよりも、おいしく食べることのほうが大事。その姿勢は、テレビの常連となってからも変わらなかったといいます。

「自分はいわゆるフードファイターではなく、食べるのが好きな大食いの女の子。その後の大食い対決でも『勝ちたい』という思いよりも、『次はなにが食べられるんだろう』という楽しみのほうが大きかったです。

ただ、テレビに出るようになった直後から、周囲の人たちに『大食いタレントなんてすぐ飽きられる』と言われつづけていて。そのときホンジャマカの石塚英彦さんのテレビ番組が好きでよく見ていたんですけど、石塚さんは本当においしそうに食べる。私も自分の感じるおいしさが多くの人に伝わるように食べればいいのかな、そうすれば『飽きられる』と言われなくて済むのかなと、少しずつプロ意識のようなものが芽生えていったかもしれません」

お腹いっぱい食べて-15kgの減量に成功

2012年には、はじめてのレシピ本『ギャル曽根流 大食いHAPPYダイエット』を出版。きっかけになったのは、2011年に結婚した夫との出会いでした。

「夫と付き合うようになって同棲しはじめたある日、彼が健康診断で脂肪肝の診断を受けたんです。このままではマズイ、痩せたいから協力してほしいと言われて。私は食べるのが好きだけれど、さすがに食事をがまんしている夫の隣でバクバク食べるわけにはいかない(笑)。彼がおいしく満腹になれて、かつ痩せる方法はないかと、ダイエット料理のレシピを考えるようになりました。

すでに調理師免許は持っていたので栄養についての知識はありましたが、それに加えて野菜ソムリエの資格と食育インストラクターの資格をとって。しらたきや豆腐、おからといった低カロリーの食材でかさ増しした料理を食べてもらっていたら、なんと夫が半年で15kgも痩せたんです。それを人に話したのがきっかけで、レシピ本を出すことになりました」

Special Interview GAL SONE

食べる、会話する、が夫婦円満の秘訣

結婚して10年が経ったいまも、おしどり夫婦として知られるギャル曽根さんと夫。ふたりの仲睦まじい様子は、ギャル曽根さんが今年4月にはじめたYouTubeチャンネル「ごはんは残さず食べましょう」の料理動画でも確認することができます。

そんなギャル曽根家の夫婦円満の秘訣は?

「お互いにうそをつかない、隠し事をしない、ですかね。例えば日々の食卓でも、『今日はちょっと味が薄い』とか『これはあまり好きじゃない』とか、感じたことはその場で包み隠さずはっきり言ってもらうようにしています。

おかげで、彼も私も小さな不満を溜め込まないで済むので、爆発して大喧嘩に、といったことが起こりません。その関係を築くにはコミュニケーションの場が必要なので、うちではどんなに忙しくても朝ごはんは必ず家族全員で食べると決めているんです。朝から魚を焼いて、卵焼きを巻いて、がんばってますよ」

気兼ねなく食べたいから、食費は自分で出す

気兼ねなく食べたいから、食費は自分で出す

もう一つ、ギャル曽根家の夫婦円満を語るうえで大きいのは「夫婦が対等であること」。家計も貯金も基本的にすべて夫と折半。ただし、光熱費は夫が出して、食費はギャル曽根さんが出す。ここにもギャル曽根さんならではのこだわりがあるのだそう。

「うちは私もよく食べるし、子どもたちも私に似てよく食べる。エンゲル係数が一般的な家庭に比べて圧倒的に高いはずなんですね。けど、食費を自分で出せば、どれだけ食べてもだれにも文句は言われないですから。人って最初は『たくさん食べてもいいよ』と言ってくれていても、時間が経つと『どれだけ食べるんだ』と態度を変えたりするじゃないですか。そうなるのはぜったいにいやだった。だから食費はすべて自分で出すと結婚前から決めていました。いまも夫が私を見て『おいしそうに食べるね』なんて余裕たっぷりに言ってくれるのは、私が食費を出しているからだと思っています(笑)」

仕事でも家でも食べる楽しさ

人生の経験を重ねるうちに、仕事の幅も少しずつ広がってきたというギャル曽根さん。ここ数年は、ごはんを食べたり料理をつくったりする仕事のほかに、2児の母として、妻としてのコメントを求められる機会も増えてきているのだとか。

「基本的に仕事が好きなので、どのお仕事も楽しんでさせてもらっていますが、やっぱり食べているときがいちばん幸せです。仕事で食べるのも大好きだし、もちろん家で家族と食べるのも好き。最近は5歳の娘が料理を手伝ってくれるようになったので、毎日一緒にごはんをつくってるんですよ。器用に包丁を使って野菜の皮をむいて切ってくれたり、卵を割って混ぜてくれたり。女の子だからか、料理をしてみたいようで。家で食べる行為と外で食べる行為は自分にとって別物ですが、どちらにも違った楽しさがあります」

人生の経験を重ねるうちに、仕事の幅も少しずつ広がってきたというギャル曽根さん。ここ数年は、ごはんを食べたり料理をつくったりする仕事のほかに、2児の母として、妻としてのコメントを求められる機会も増えてきているのだとか。

「基本的に仕事が好きなので、どのお仕事も楽しんでさせてもらっていますが、やっぱり食べているときがいちばん幸せです。仕事で食べるのも大好きだし、もちろん家で家族と食べるのも好き。最近は5歳の娘が料理を手伝ってくれるようになったので、毎日一緒にごはんをつくってるんですよ。器用に包丁を使って野菜の皮をむいて切ってくれたり、卵を割って混ぜてくれたり。女の子だからか、料理をしてみたいようで。家で食べる行為と外で食べる行為は自分にとって別物ですが、どちらにも違った楽しさがあります」

100歳になっても食べていたい

タレントとしてのキャリアも今年で17年目。もはや周囲から「大食いタレントはすぐ飽きられる」などと言われることはなくなったいま、ギャル曽根さんが掲げるこの先の目標は?

「戦略的にタレント活動をやってきたわけではないので、具体的な目標ってないんです。ただ、いろいろなお仕事のなかでも、大食いは今後も続けていきたい。大食いの仕事が幹で、食に関連するさまざまな仕事が枝のように広がって……というかたちで今後も細く長く仕事ができるのであれば、それが理想かもしれません」

あくまで自然体でマイペース。けれど、揺るぎない自分を持っていて、とことん貫く。それが、ギャル曽根さんがほとんど唯一無二の“大食いタレント”として活躍を続けられる理由なのでしょう。

「例えば瀬戸内寂聴さんはもうすぐ100歳になられますが、いまもガンガン食べているそうです。やっぱり食べることって人生の幸せであり、長生きの秘訣なんだな、と。だから私もいくつになってもたくさん食べるのが目標……と言いつつ、直近の目標はYouTubeのチャンネル登録者数20万人を達成することだったりします(笑)」