深い睡眠を得るのに理想的な入浴のタイミングは、人間の体内温度の変化と深くかかわっている。

「人間の体温は、早朝の最も低い状態から少しずつ上昇をはじめ、夕方頃に最高になり、そこからまた下がりはじめます。就寝時に体温を下げることが、質のよい眠りには必須。入浴によって一時的に体温を上げると、1～2時間後に体温はその分大きく下がろうとします。つまり、就寝の1～2時間前が入浴のベストタイミング。湯冷めしやすい冬場は就寝の1時間前、夏は1～2時間前に入浴するのが理想的です。また、空腹時や食後すぐの入浴は、貧血や消化不良を起こすので避けましょう」

入浴は副交感神経を優位にする効果も。リラックスした状態のまま、床につくことを心がけよう。

入浴時のお湯の温度の大事な目安となるのが40℃だ。

「40℃以下のお湯だと副交感神経が優位になりリラックスモードに、40℃より高いと交感神経が優位になり、覚醒モードになると言われています。夜ぐっすり眠るためには、40℃、もしくはそれより少しぬるめのお湯に肩まで10～15分つかるのがおすすめです」

なぜ、湯船に肩までつかったほうがいいのだろうか。

「からだ全体を温めることで血の巡りがよくなるのです。また、お湯の浮力によって、いつもはからだを支えている筋肉などへの負荷がかからず、全身がリラックスします」

理想の入浴時間は約10分だが、こだわりすぎなくても大丈夫。

「途中でからだを洗ったりしながら合計10分でもいいですし、たとえ10分未満でも、全くつからないよりは効果があります」

「忙しい人が優先すべきは、入浴よりも睡眠。夜遅くに帰宅して眠いのであれば、無理して入浴せず、寝たほうがいいでしょう」

湯船につかる時間がない日は、シャワーを浴びるだけでも意味はあるという。

「シャワーでからだを少しでも温めれば、血流がよくなります。コツは心臓のあたりに30秒～1分ほどシャワーを当てること。温められた血液が体内を巡り、からだもほぐれます」

もう一つ、血流をよくするためにおすすめなのが手浴だ。

「洗面器もしくは洗面台に42℃くらいのお湯を張り、5分ほど手首までつけるだけ。フェイシャルパックなどをしながらでもできますし、準備や後片づけも楽なので、ぜひ試してみてください」

長時間のぼせずに湯船につかっていられる半身浴は、からだによさそう。なんとなくそんなイメージを抱きがちだが、

「実際には上半身が冷えてしまい、からだ全体が温まりきらないので、特に冷え性の人にはおすすめしません。心臓に疾患がある場合を除き、からだ全体を温めて弛緩させる全身浴のほうが効果的です」

ただし、湯船で読書するなど、長時間のリラックスを目的に入浴したい人もいるだろう。

「その場合はからだが冷えないよう、全身浴と半身浴を組み合わせるといいでしょう。入浴中はからだが弛緩し、ほぐれやすくなっています。半身浴中にからだや頭皮をマッサージして、さらに血行をよくするのもおすすめの過ごし方です」

「入浴剤には、からだの症状への効果を記載できる“医薬部外品”、化粧品としての効果を記載できる“浴用化粧料”、効能効果を記載できない“雑貨”の3種類があります。パッケージの表示を見て、目的に合ったものを選びましょう」

不調解消におすすめなのが、血行促進が期待できる炭酸入り入浴剤と、硫酸マグネシウムの結晶・エプソムソルトだ。

「ストレスによる体内のマグネシウム不足は、骨粗しょう症や高血圧、イライラの原因になると言われています。エプソムソルトでマグネシウムを補給できます」

香りでリラックスしたいときは、

「塩ひとつかみに好きなアロマオイルを10滴ほど垂らすだけで、手軽に手づくり入浴剤がつくれます」