マガジンハウス発行の『クロワッサン』が監修する「解消!からだトラブル」の特別配信前編。毎日、特に意識せず行なっている睡眠と入浴ですが、実は良質な睡眠と入浴はからだの不調解消のためには切り離せない関係にあります。
「睡眠にとって何より大切なのは、量よりも質。深く眠ると、その間に成長ホルモンが分泌されたり、新陳代謝が活性化されたり、新しく血液が作られたりして、からだがととのえられるのです。では、深く眠るためにはどうすればいいか。それには寝る前に副交感神経を優位にすること、つまりからだをリラックスモードにすることが必要です。適切な入浴時間と温度、タイミングを守れば、入浴は“リラックススイッチ”を入れる最適な手段になります」
そう話すのは、ホリスティックビューティエキスパートの尾野真美子さん。睡眠と入浴、それぞれのコツを知って、不調知らずのからだを作りましょう!今回はまず睡眠に的を絞ってよくある疑問にお答えしていきます。
よく耳にするのが「午後10時から午前2時は睡眠のゴールデンタイム。この時間帯に寝ないと健康にも美容にも悪い」という説。これは本当なのだろうか。
「厳密に言えば、人によって違います。例えば仕事が夜勤の人の場合、午後10時に寝るのは難しいですよね。睡眠にとって最も大事なのは、時間帯より質のよい眠りをとること。深く眠ることができれば、寝ている間に体内で成長ホルモンの分泌、造血、免疫細胞の生成、新陳代謝の活性化が行なわれるのです」
ただし人間のからだは本来、日中の明るい時間は活動モードに、夜の暗い時間は休息モードになっているのも事実。
「可能であれば、せめて午後10時から午前2時の間に入眠するのが理想的です」
理想の睡眠時間も、体質などによって個人差があるもの。
「7時間を目安として、朝すっきり目覚められるかどうか、午前中に眠くならないかどうかをチェック。しばらく様子を見ながら、自分にとって最適な睡眠時間を判断するといいでしょう」
なお、翌日忙しく寝られそうにないからと、前日にたくさん寝ておく、いわゆる“寝だめ”は、
「全く効果がありません。本来、人間が持っている体内リズムは約24時間周期で眠くなるようにできています。睡眠中に行なわれる成長ホルモンの分泌なども、事前にためておけるものではないのです」
健康を保つには、日々良質な睡眠をとること、すなわち毎日の体内リズムを整えることが大切だ。
「ただし女性の場合、ホルモンバランスによって睡眠の量も質も変わりやすくなります。特に閉経時は眠りが浅くなりがちです。あまり悲観せず、『そういうものだ』と思って昼寝などで睡眠を補うようにしましょう」
人間は約24時間周期の体内リズムを持ち、昼は活動的に、夜は休息するようにできている。海外へ行くと時差により体内リズムが崩れるため、寝つきにくくなる。いわゆる「時差ボケ」だ。
「これを防ぐには、起床時間を一定にして、乱れてしまった体内時計をリセットすることが必要です。旅先では眠くても、朝は一度起きてカーテンを開け、太陽の光を浴びましょう。からだに『今から朝だ』と教えるのです。二度寝する場合でも、カーテンは開けたまま、光が入るようにしてください」
また、環境が変わると緊張してしまって眠れないという人も。
「いつものパジャマや香りを持っていくなど、なるべく普段と同じ環境に近づけるのも大切です」
「少量のお酒は、人によってはからだを弛緩させる効果も。でも、顔が赤くなったり動悸がしたりするのは交感神経が刺激されている証拠。眠りが浅くなり、睡眠の効果を充分に得られません。飲むならほろ酔いになる手前、ほんの少量にとどめましょう」
また、睡眠導入剤を用いるのにも注意が必要だ。
「睡眠導入剤のなかには良質な睡眠に不可欠なホルモン、メラトニンに似た作用を持つ薬もあります。これを常用すると、からだが自らメラトニンを作らないことに慣れてしまいます。服用する場合は医師と相談のうえ、期間を決めて」
なるべくお酒や薬などに依存しすぎず、自然に眠れるようなからだづくりをめざしたい。
「日によって寝つくまでの時間にはバラツキがあるのは当然です。あまり気にしすぎると、かえって眠れないことに。からだに任せるような、ゆったりとした気持ちで過ごすといいでしょう」
尾野さんおすすめのリラックス方法は、深呼吸とツボ押しだ。
「両方とも副交感神経を刺激する効果があります。深呼吸は、仰向けの姿勢で5秒吸って7秒吐く腹式呼吸を20回ほどを目安に行ないます。胸とお腹に空気を入れ、それを吐き出すイメージです」
副交感神経を刺激するツボは、手足ともに、薬指以外の爪の生え際の両サイドだ。
「1カ所につき、10~20秒ほどかけて、“イタ気持ちいい”と感じるくらいの強さで押してください」
副交感神経を優位にし、自然と眠くなるようにするためには、心身をリラックスさせてくれるアイテムを選びたい。最近、人気なのがスマホにダウンロードできる“瞑想アプリ”。静かな音楽を流したり、音声で瞑想法を案内したりと、種類も豊富だ。
「ただし、スマホを枕元に置いたまま眠ると電磁波がからだに影響を与える可能性もあります。寝る際は50cm以上離れたところに置くようにしましょう」
アロマオイルなど、香りもリラックスするのに有効だ。
「効果効能を気にするより、自分が好きだと感じる香りを選ぶのが一番。『寝室で使う香りはこれ』と決めておけば、使い続けるうちに、その香りを嗅ぐだけで休息モードに切り替えられます」
日中に眠くなったからといって深い睡眠をとると、夜の睡眠の質が悪くなってしまう。
「人の体温は早朝から上がりはじめて夕方にピークに達し、そこから徐々に下がっていきます。この下がり方の勾配が大きいほど、睡眠の質が高まるのです。日中、深く寝るとそこでいったん体温が下がるため、その後の勾配が緩やかになってしまいます。結果として夜の眠りが浅くなるのです」
そのため、昼寝をするなら、20分ほどの浅い眠りにとどめたい。
「横にならず、座ったまま机に突っ伏して寝る、昼寝をする前にコーヒーなどのカフェインをとり、すっきり覚醒できるようにするなどの工夫をしましょう」
美は高いレベルの健康、と考えるNPO法人日本ホリスティックビューティ協会所属。働く女性や母親向けの講座を多数開催している。
クロワッサン No. 1006
『日々の習慣で、不調を解消。』
・定価:550円 (税込)
・発売:発売:2019.09.25
・ジャンル:実用
https://croissant-online.jp/