“何”をするかより、“誰”とするか。 『僕の笑顔をつくる、僕の友だち』 笑顔の内訳は“親友・仲間・家族” ~ 俳優 小泉孝太郎さん ~ 取材_藤田佳奈美 撮影_赤澤昂宥 ヘアメイク_石川武 スタイリスト_北村勝彦 制作_マガジンハウス

キラキラ光る瞳に見つめられ、紡ぎ出す言葉はどれもまっすぐ。「この人には嘘がつけない」と思わず身構えてしまうほどに、心をフルオープンにして取材陣に接してくれた小泉孝太郎さん。「誰に対しても自分を開示する」という小泉さんのまわりには、いつも気心の知れた“友だち”がいます。相手を肩書きや経歴で判断しない、相手によって態度を変えない、“君と僕”で向き合うことを大事にしてきた飾り気のない小泉さんに、友だちのつくりかたや心の開き方を伺いました。

人生は、何をするかより誰と過ごすか

小泉さんの笑顔の内訳を尋ねると、おいしいごはんでもなく、趣味でもなく、「親友・仲間・家族がすべて」と即答。小泉さんの幸福は、身近な人たちによって生まれていました。

「そんなに物欲も強くないし、もちろんおいしいごはんも食べたいけど、誰と食べるかのほうが大事なんです。人生誰と一緒に過ごすか。仲間とどれだけこの先過ごせるんだろうって思うと、とても愛おしい。君が楽しければ僕は楽しいし、君が悲しければ僕は悲しい。思い合うことで成り立っている。それだけでなんて幸せな人生なんだろうと思いますね」

Profile

小泉孝太郎さん

1978年7月10日生まれ、神奈川県出身。2002年、テレビドラマ『初体験』(フジテレビ)で俳優デビュー。特番『小泉孝太郎&ムロツヨシ 自由気ままに2人旅』(同)では芸能界きっての大親友・ムロツヨシさんとの“素”のやりとりが話題に。2016年から放送中の人気テレビドラマシリーズ『警視庁ゼロ係~生活安全課なんでも相談室~』(テレビ東京)で主演を務める。2021年4月から同ドラマのSEASON5がスタート。

Special Interview KOTARO KOIZUMI

心を開けないのは、自分の見せ方を気にしてるから

目上の人や憧れの人に対して緊張したり、なかなか距離を縮められなかったりした人は少なくないはず。小泉さんの、年齢や肩書きを超えた心を掴むコミュニケーションスキルを分解すると“自意識の解放”に行き着きました。

「相手に心を開けないのは、自分の見せ方を気にしてしまっているから。自分がある人は、たとえ未熟でも勘違いでも思い上がりでも、相手の肩書きや地位に揺らがない。ただ、そういう緊張感がある経験は、自分の大きさに気付かされるので悪くないと思いますよ」

相手に興味を持つと、人生が花開く

常にオープンマインドな小泉さんですが、コミュニケーションを取る時に意識していることが。

「今でこそリラックスして人と話せるようになったけど、僕も若い時は自意識過剰な部分があって。だけど40年以上生きてきてわかったのは、このご時世何があるかもわからない中で、人との出会いって本当に奇跡的だってこと。人に歴史あり。だからこそ、自分に向けていた意識を人に向けて、興味を持って接することが大切だと思っています。人とふれあうことで、人生は豊かになっていくから」

Special Interview KOTARO KOIZUMI

まずは自分を知らないと、相手の心は開けない

「仲良くなれないと思った人と仲良くなる経験もしてきた」という小泉さん。きっかけは、自分の思いを伝えたことからでした。

「テレビドラマの監督と合わないことがあって。でも作品についてディスカッションしていくうちに心を開いてくれたんです。同じ目標に向かって作品を作っている同志なんだと分かち合えた瞬間が確かにあった。それは自分の思っていることを伝えられたのが大きいと思う。だから人と向き合う前に、まず自分を持つこと。自分ってどういう人間なのかを知って、剥き出しの自分を相手に伝えることが大事なんだと思います」

フレンドリーさは信用があってこそ

フレンドリーな小泉さんを形成した要因に、小泉さんの父・純一郎さんの存在がありました。

「人付き合いにおいては、父親から『信用が一番大事』と言われて育ってきました。一番簡単なのは信用をなくすこと。信用は一つの大きな仕事を成し遂げたら得られるものじゃない。常々見られ、評価されているものなんです。だから常日頃時間や約束を守ることを徹底し、地道に積み重ねていく。すべては信用につながっているといっても過言ではなくて、信用にはお金も仕事もついてくる。それに、相手が僕を信じて仕事を任せてくれる、その信じる気持ちに応えることにやりがいを感じているんです」

Special Interview KOTARO KOIZUMI

会わなくてもつながっていられるのが戦友

2016年から放送中の人気テレビドラマシリーズ『警視庁ゼロ係~生活安全課なんでも相談室~』(テレビ東京)で主演を務める小泉さん。長年続くドラマなだけあって、ここにも小泉さんの友情物語がありました。

「ゼロ係のメンバーは戦友ですね。僕は共演者とプライベートで会わないし、連絡先すら知りません。ドラマのLINEグループにも入ってない。僕らが求められているのは、集まった時にいい仕事をすること。その分久しぶりの撮影で会えた時は喜びもひとしおで。だから連絡を取らなくても大丈夫なんです。それが戦友だと思っています」

ずっと友だちでいるために

ずっと友だちでいるために

「ずっと友だちでいるために、無理やりつなぎとめちゃうことってあると思うんですよ。たとえばSNSとかでね。でも自分にとってストレスならやめちゃえばいい。“僕は君に伝えたい”っていう、剥き出しの本心で接することが大事。それが信用を、ひいては友情を育むんだと思います」

大人になってから出会った人も、仲良くなれなさそうなあの人も、変わってしまったかつての友だちも、自分次第で関係性は変えていけるのかもしれません。

スーツ132,000円、シャツ19,800円、ネクタイ13,200円 (すべてPaul Smith/Paul Smith Limited/ https://www.paulsmith.co.jp) チーフスタイリスト私物