お金とは何か?著者_池上彰 イラスト_白根ゆたんぽ 制作_マガジンハウス お金のさまざまなカタチ

世の中の不思議を、お金から考える。

池上彰さんの著書『14歳からのお金の話』からお届けしている連載企画「お金とは何か?」。最終回となる今回は、クレジットカードや電子マネー、地域通貨から金利までお金のさまざまな形態を池上さんがわかりやすく教えてくれます。「天下の回りもの」と言われるお金。きちんと理解を深めてお役立てください!

1 「お金の形をしていないお金」も誕生

  • クレジットカード!現金いらずで買い物がラクチン!!
  • プリペイドカード!1枚で電車にバスにのれて駅で買い物をできたり!!
  • おサイフケータイ話せてメールもできてお金ははらえるなんてもーステキ!!
  • で、どれがいくら使えるんだっけ?たくさんあるとわからなくなるね…

最近は、「お金の形をしていないお金」が次々に誕生しています。クレジットカードや、電子マネーです。クレジットカードで買い物をすると、その場ではお金を払う必要がありません。まるで「魔法のカード」のように見えますが、後で銀行口座から引き落とされるのです。クレジットカードの「クレジット」とは、「信用」。そのカードを持っている人を信用して、「現金の支払いは後でいいですよ」という仕組みになっているのです。

そこで、カードを持ったばかりの人は、1ヵ月に使える金額が少なく、きちんと支払いを続けていると、やがて使える金額が多くなる、という仕組みになっています。それだけ「信用」されたことになります。でも、気軽にカードを使うと、後で支払いに苦労することにもなります。

一方、クレジットカードとは別に、鉄道やバスで使えるICカード(SuicaやICOCA、PASMOなど)でも、店で買い物ができるようになってきました。携帯電話をかざすだけで買い物ができるという、「おサイフケータイ」まで登場しました。

こうしたカードは、「プリペイド」(あらかじめ払っている)という種類のカード。事前にお金を払ってあります。これなら、払った分のお金しか使えないので、支払い能力を超える買い物をしてしまう、ということが避けられます。

2 「地域通貨」も誕生した

お金は、その国の中では、どこでも使えます。ところが、ある地域だけでしか使えませんという「地域通貨」の試みが全国各地で始まっています。

たとえば、子どもたちがボランティアでお年寄りの世話をすると、その町でだけ通用する「お金」を受け取り、その「お金」で、今度は大学生の家庭教師に払う、などという仕組みです。また、大学生は、その「お金」で、近くの商店で買い物ができたりします。一方、商店の人は、受け取った「お金」を、家にいるお年寄りの世話をしてもらうために、ボランティアに来てくれた人に払います。

どうですか。地域の中を、「お金」がグルグル回っているでしょう。日本のお金「円」ですと、支払ったお金は、どこへ行くかわかりません。でも、その地域でしか通用しない「地域通貨」なら、いつも地域の中を回っています。みんなが働いて作り出した「富」が、いつも町の中にあって、その町で買い物に使われ、みんなの暮らしが豊かになっていく。

こんな試みが、各地で始まっているのです。「地域通貨」の名前には、それぞれの地域でユニークなものがあります。あなたの住んでいる町や、近くの町にあるかな。調べてみると、おもしろいですよ。

3 お金は天下の回りもの

あなたのお金が世の中をグルグルまわってる

あなたが、コンビニで買い物をします。払ったお金は、いったんはコンビニに入りますが、その後、その商品を製造している会社にお金が支払われます。その会社は、商品を売ったお金が入ってくることで、社員に給料を払うことができますし、新しい商品を製造するための材料を買うことができます。

それによって、今度は材料を製造している会社にもお金が入ります。その会社の社員の給料も支払われます。社員の家族が買い物をすれば、買った商品を製造している会社にもお金が払われることになりますね。あなたのお父さんやお母さんが働いている会社にも、そうやってお金が入り、給料を受け取れることで、あなたにおこづかいが渡されます。

一方、あなたがコンビニで買い物をしたときに、いっしょに消費税も払っています。消費税分は、いったんコンビニが預かった後、国に納税します。国は、そうやって集まった税金で、学校を建てたり、道路を建設したりします。
※2021年現在、消費税は社会保障費に充てられます

どうですか。あなたが買い物をして、お金を使うことで、お金は世の中をグルグルと回っていくのです。「お金は天下の回りもの」という言い方をするのは、こういうことなのです。どうせお金を使うのだったら、世の中に役立つ使い方をしたいものです。

著者

池上 彰
(いけがみ・あきら)

1950年長野県松本市生まれ。1973年にNHKに入局し、2005年まで報道記者としてさまざまな事件、災害、消費者問題、教育問題等を担当。1994年から11年間は「週刊こどもニュース」のお父さん役としても活躍した。現在は、フリーのジャーナリストとして各メディアで活躍。名城大学教授、東京工業大学特命教授、東京大学客員教授ほか。『14歳からの政治入門』(マガジンハウス)など著作多数。

Information

お金の成り立ちからはじまって、貯蓄と投資の違い/会社はだれのもの/景気をよくするには/年金とは/環境を守るにも経済の考え方が必要・・・。と、現代のお金とそれにまつわる社会問題を、幅広く紹介。新聞を読むために絶対必要な知識が、わかりやすくスラスラ身につきます。

・ページ数:168頁
・ISBN:9784838716548
・定価:1,430円 (税込)
・発売:2008.04.24
・ジャンル:実用

https://magazineworld.jp/books/paper/1654/

募Ⅱ2100200営企