長引く自粛に緊張感と塞ぎ込んだムードが漂うなか、気さくに振る舞い周囲を盛り上げ、笑顔の絶えない現場をつくってくれた石田ニコルさん。3月12日公開の映画『すくってごらん』では、息を飲む妖艶さと圧倒的歌唱力で存在感を放っています。本作は金魚すくいをテーマに、サイケデリックな色彩とミュージカル調の演出が織りなす新感覚ムービー。本作をなぞりながら、石田さんのエネルギーの源や“豊かな人生”とは何かを伺いました。
ー本作では登場人物が金魚すくいに魅了され、いきいきしていく様子が描かれていました。実際にすくってみてどうでしたか?
「金魚すくいって、心が落ち着くんですよ。華麗に泳ぐ金魚の動きを見ながら、一対一で全集中で向き合い、水に触れてすくうという行為が癒やしなんです。今では30匹くらいすくえるようになりました。これまでお祭りや縁日でしかすくったことがなかったのですが、なんでもやってみるものですね。すごく穏やかな気持ちを得られました」
1990年5月29日、山口県生まれ。2010年にモデルデビュー。「sweet」「Gina」をはじめとするファッション誌で活躍。「パラレルワールド・ラブストーリー」(2019/森義隆監督) などの映画のほか、「RENT」(2012)、「FACTORY GIRLS~私が描く物語~」(2019)、「フラッシュダンス」(2020) といったミュージカルにも出演するなど、女優としても活躍。2021年3月12日には、映画「すくってごらん」の公開、 春には ブロードウェイミュージカル「IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ」の出演を控えている。
ー金魚すくいもそうですが、何かに夢中になっている人は魅力的に見えます。石田さんは海好きですが、どうしたら夢中になれるものを見つけられますか?
「実は海好きになるまでは無趣味だったんです。だけど友達と旅行先で体験したダイビングがきっかけで、はっきりと“海好き”を自覚できました。最初は水中に入って呼吸するのも怖くてパニックだったのですが、海底に足がついた瞬間すごくリラックスしている自分がいたんです」
ー夢中になれるものって、今自分が興味を持っていること以外のなかに眠っているのかもしれませんね。
「そうですね。いろいろ挑戦していくなかで見つかるものだと思います。嫌いだと思い込んでいたものが、実は好きだったり。いろいろやってみたら何か見つかるかもしれません」
ー本作では、東京本社から左遷され腐っていた主人公が、金魚すくいを介して成長していく様子が描かれていました。石田さんにとって、成長させてくれたエピソードを教えてください。
「はじめてミュージカルに出演した時、知識も経験もなくてとにかく大変でした。ストレスで全身じんましんが出たり点滴を打ったり、心身ともにボロボロで。終わってからもトラウマのようにその時の記憶に取り憑かれていたのですが、数年後、ふと振り返った時に、自分に芯ができてたくましくなっていることに気付きました。それからは、何かあっても舞台の経験で培った強さで乗り切れるようになったんです。あの時、何が正解かなんてわからなかったけど、挑戦してよかった。どんな経験も、得られるものは必ずありますから」
ー本作では“和の世界”を艶やかに表現している石田さんの姿が印象的でした。石田さんが思う、美の定義を教えてください。
「ありがとうございます。それ、私が一番知りたいです(笑)。ただ、本当にキレイな人って、自分のことが好きな人だと思うんですよ。自分に自信があって、自分の良いところが言える人。実は私も自分の良いところが言えなくて……」
ー石田さんは自分に自信を持ってないのですか?
「実はそうなんです。だから、まずは自分を大事にしようと思っています。自分を好きになる。自分の内側に興味を持つ。他人と比べない。自分自身を肯定する力が、キレイの近道になるんじゃないかなって」
ーところで、コロナ禍によってライフスタイルや価値観などに変化はありましたか?
「私は普段から引きこもりだったので、コロナ禍になる前と比べて生活に大きな変化はなくて。むしろ、何の気負いもなく大好きなゲームができるようになりました。インドア生活捗っています……」
ーネガティブな変化はなかったんですね。でも家にずっといると、生活リズムが崩れませんか?
「なるべく日中は日に当たることを心がけていました。ベランダで日光浴をしたり、散歩したり。人とのコミュニケーションは、オンラインゲームでプレイしながら会話しているので、オンラインのコミュニケーションにはコロナ禍前から慣れていたかもしれません」
ーリアルなコミュニケーションが取りづらく、ひとりでの外出も憚(はばか)られる状況が続くなか、どうやって毎日発散していますか?
「コロナ禍になってから、自炊の頻度を上げました。台所でつくりながらお酒を飲むのが楽しいです。韓流ドラマが流行った時は、自作のキンパ(韓国風海苔巻き)を食べながら韓流ドラマを見て、韓国旅行気分を味わいました。そういう、自分だけの小さいイベントを意識的につくるようにしています」
ー日々の楽しみの予定をつくることが大事なんですね。
「はい。だからコロナ禍でも心身のバランスは取れています。元々インドアだし、おうち時間に耐性があるのかもしれませんが。それでもしんどい時は、セルフイベントで気持ちを盛り上げています」
ー最後に、石田さんが普段から心がけていることを教えてください。
「いろんなものにチャレンジして経験すること、失敗すること、そして自分のためにおいしいものを食べること。食わず嫌いは自分で自分の型を決めつけちゃうことになるから、とりあえず目の前のことをやってみる。そしたら案外楽しめちゃったりするかもしれない」
ーチャレンジしていくことで、好きなものが見つかりそうですよね。
「そうですね。そうして好きなものを見つけたら、きっとその先に豊かな人生が広がっているんだと思います。まずは挑戦あるのみ!」