お金とはなにか?著者_池上彰 イラスト_白根ゆたんぽ 制作_マガジンハウス お金の役割と仕組み

世の中の不思議を、お金から考える。

池上彰さんの著書『14歳からのお金の話』からお届けしている連載企画「お金とは何か?」。3回目となる今回は、お金の役割から金融機関の定義、そして利子や利息といった金利について、池上さんがわかりやすく教えてくれます。当たり前に存在するお金についてちゃんと知ることができれば、その向き合い方も変わります。なにが起こるかわからない現代だからこそ、お金についてじっくり考えてみましょう!

1 お金には3つの役割がある

私たちが使っているお金には、3つの役割があります。そんなこと、考えたことがないかな。

その第一は、「交換」です。私たちは、お金があるおかげで、欲しい物を買うことができます。このとき、実は、あなたのお金と、商品を交換しているのです。お金があるおかげで、私たちは、さまざまな商品を交換できます。交換によって、私たちの経済が成り立っているのです。

第二は、「価値を計る」働きです。商品を売り買いするときに、それがいくらだかわからないと困りますね。お金があるおかげで、「これは1500円」「こちらは1350円」などという値段がつきます。どちらが安いか、これでわかるのです。これも、お金があるからわかるのです。

第三は、「価値を貯める」働きです。物々交換をしていたむかしのことを思い出してみてください。肉や魚を交換しているうちに、肉や魚は腐ってしまうおそれがあります。塩漬けにして保存する方法もありますが、いつまでもとっておけませんし、「古いのはイヤ」と言われてしまうかもしれません。

その点、お金の形になっていれば、いつまでもとっておけます。価値を貯めておけるのですね。こうして、お金をせっせと貯めておけば、お金が必要になったときに、困りません。「お金を貯めておいて、欲しい物を買おう」という、計画性も生まれてくるでしょう。

2 お金を借りると利子がつく

お金をいくら貯めていても、自動車や住宅のような大きな買い物をするときには、銀行からお金を借りることもあるでしょう。お金を借りたときは、返すときに、「利子」と呼ばれるお金の分だけ余計にお金を払います。お金を借りたのですから、その「お礼」なのですね。

これを銀行から見れば、お金を貸すと、返してもらうときに、「お礼」のお金がついて戻ってくることになります。この「お礼」は、「利息」と呼ばれます。借りた側が払うのが利子で、貸した側がもらうのが利息。言い方が変わるのですね。ですから、銀行などがお金を貸した場合、どれだけの利息を受け取れるかを定めた法律は、「利息制限法」といいます。

でも、実際には、利子と利息も同じ意味で使われていますから、どちらを使っても構いませんよ。利子や利息がいくらになるのか。それを比較しやすくするため、「金利」が使われます。借りたり貸したりしたお金(これを元本または元金といいます)に対して、どれくらいの利子(利息)を払うか、という割合のことで、1年間に払う金利は「年利」と呼ばれます。100万円借りて金利が5%だったら、1年間に5万円の利子を払う必要がある、という意味です。

お金を借りたら、利子を払わなければならない。大変ですが、そのために、人は一生懸命働くことになります(そのはずですが)。その結果、経済は発展してきたのです。「金利は経済発展の原動力」という言い方があるくらいです。

3 金融機関はどんな仕事をしている?

あなたがおこづかいを銀行に預けたとしましょう。そのお金は、どうなるのでしょうか。「銀行がずっと大事に金庫にしまっておく」ということはないのですね。銀行は、そのお金を、「お金を借りたい」と思っている個人や会社に貸しているのです。

いますぐには使う予定がないお金を銀行に預けると、銀行は、そのお金をすぐにお金が必要な人に貸し出すのです。銀行は、お金を貸した相手から、お礼の利息を受け取ります。そのうちの一部を、今度は銀行にお金を預けた人に利子として払います。利息と利子の差額が、銀行の収入になります。銀行の仕事は、こうして成り立っているのですね。

銀行は、「お金を貸してもいい」と思っている人と、「お金を借りたい」と思っている人の橋渡しをしているのです。「お金を融通」する仕事をしているので、銀行は「金融機関」とも呼ばれます。銀行以外にも、信用金庫、信用組合など、金融機関にはいろいろな種類があります。

東京の都心に次々に建つ高層ビル。その建設資金は、銀行が貸しているはずです。つまり、あなたが銀行に預けたお金も、その中に含まれているかもしれません。あなたがおこづかいを自宅の貯金箱に入れたままでは、お金は増えません。あなたが金融機関にお金を預けたことによって、高層ビルが建設され、経済は発展し、その結果、あなたは利息をもらえるのです。

4 保険会社も金融機関

金融機関は、「○○銀行」という名前が付いているものばかりではありません。生命保険会社や損害保険会社も金融機関なのです。

生命保険会社は、みんなの生命保険を扱っています。例えば、あなたのお父さんやお母さんが生命保険に入って保険料を払っていると、万一、大けがをしたり、亡くなったりしたときに、保険金が受け取れます。損害保険会社は、自動車保険や火災保険などを扱っています。自動車事故を起こしたり、家が火事になったりしたときに、保険金が出る仕組みです。

大勢の人が保険に入っていれば、亡くなったり、事故にあったりする人の割合は、ごくわずか。みんなから集めた保険料の一部を使うだけで保険金を払うことができるのです。社会のみんなで助け合い、支えあう仕組みですね。みんなから多額の保険料が入ってきますから、これを少しでも増やせれば、それだけ保険金を支払うことができます。そこで、生命保険会社や損害保険会社も、「みんなから集めたお金を貸したりして増やす」という仕事をしているのです。これが、金融機関の特徴です。

保険に入る人は、長い間保険料を払い続けますから、生命保険会社や損害保険会社は、長い期間にわたって資金を貸し出すことができます。一般の銀行よりも、長期間お金を貸し出すという仕事をすることが多いのです。

5 高い金利に要注意

お金を借りると、利子を払わなければいけない、という話を前にしましたね。街を歩くと、「お金がすぐに借りられます」という、ローンやクレジットの広告をよく見かけます。消費者金融という会社もあります。子どもには縁がありませんが、こうした会社でお金を借りる大人もいます。その際気をつけなければいけないのは、「すぐに借りられる」場合は、金利がとても高いということです。

消費者金融は、一般の銀行に比べて、かなり簡単にお金が借りられます。ということは、お金を借りた人の中には、お金を返せない人も大勢いるはずです。消費者金融会社は、そういう人を見込んで、その分だけ金利を高くしているのです。つまり、お金を借りる人は、「お金を返せない人」の分まで利子を払っているのです。そのことを知っておきましょう。

もう一つ大事なこと。それは、金利は複利だということです。金利が年15%だとしましょう。100万円借りると、1年後の支払いは全部で115万円です。でも、もし返さないで、次の1年がたつと、さて、返すお金はいくらでしょう。次の年も利子が15万円だから計130万円、というわけではないのです。次の年は、115万円の15%の利子がつくのです。つまり、合計で132万2500円を返さないといけないのです。さらに次の年になると、152万875円にもなります。借金が、雪だるまのようにふくれ上がるおそれがあるのです。

著者

池上 彰
(いけがみ・あきら)

1950年長野県松本市生まれ。1973年にNHKに入局し、2005年まで報道記者としてさまざまな事件、災害、消費者問題、教育問題等を担当。1994年から11年間は「週刊こどもニュース」のお父さん役としても活躍した。現在は、フリーのジャーナリストとして各メディアで活躍。名城大学教授、東京工業大学特命教授、東京大学客員教授ほか。『14歳からの政治入門』(マガジンハウス)など著作多数。

Information

お金の成り立ちからはじまって、貯蓄と投資の違い/会社はだれのもの/景気をよくするには/年金とは/環境を守るにも経済の考え方が必要・・・。と、現代のお金とそれにまつわる社会問題を、幅広く紹介。新聞を読むために絶対必要な知識が、わかりやすくスラスラ身につきます。

・ページ数:168頁
・ISBN:9784838716548
・定価:1,430円 (税込)
・発売:2008.04.24
・ジャンル:実用

https://magazineworld.jp/books/paper/1654/

募Ⅱ2001717営企