マナーを知っていようといまいと、人生の儀式はおかまいなしにやってくる。そんな「いざ」に備える、大人の心得。マガジンハウスのライフスタイル誌『クロワッサン』が監修する「大人のマナー新常識。」の特別配信2回目。
冠・婚・葬・祭の儀式や行事の知っておくべきルールをマナーデザイナー岩下宣子さんがクイズ形式で指南してくれます。今回は「婚」編。長らく正しいと思っていた習慣も現代ではすっかり変わっていることも。
気軽に楽しみながら大人のマナーを学んでみましょう。難問揃いなので、6~7割正解すれば、優秀です!
結婚式で乾杯をするときには、たいていビールやシャンパンが注がれる。薄くてデリケートなグラスが多く、カチッと合わせてヒビが入ってしまうおそれも。「ヒビが入るのは縁起の悪いこととされます。グラスは合わせずに軽く持ち上げ、両隣の人とアイコンタクトをしてから口に運びましょう」
バッグは背もたれと腰のあいだに置いて、椅子の背にもたれずに姿勢よく座るのが正解。腰の部分が空いていてバッグが落ちてしまう椅子の場合は、バッグを膝に乗せ、その上からナプキンをかける。「テーブル間を動き回ってサーブする人のためにも、椅子には深く腰掛けるようにします」
遠方からの招待客みんなにお車代を出す必要はない。「お渡しするのは、主賓、仲人さん、乾杯の音頭をお願いする人の3組、つまり、その人がいないと披露宴が成り立たない方々に対しては、お車代を出します」。そのほかの親戚や友人とは「お互いさま」。相手のお祝いのときにはこちらも交通費をかけて出席するということでいい。お車代の考え方は、主賓には自宅から会場までのタクシー代、ないし新幹線代などは実費の1.5倍。仲人に対しては謝礼とお車代を別に用意する。
席札、席次表、メニューなどは、テーブルに置いたまま帰らず、引き出物の紙袋に入れるなどして持ち帰るのが正しいマナー。「これらは、新郎新婦があなたのために用意してくれたもの。会場に残していくのは失礼にあたります。処分するにしても必ず家に持ち帰ってからにしましょう」
「結婚のお祝いと出産祝いは区別して考えましょう」。また、生まれる前にベビー用品などを贈ること自体、やめたほうがいい。「万が一、何かあったときに、その品が悲しい思いをさせるものになってしまうからです。出産祝いは、生まれてから7日経ったのを確かめてから贈るのが基本です」
婚約には決まりごとがなく、婚約指輪などの品物を交わすのも好き好きでいい。「給料3ヵ月分というのは、昔のダイヤモンドの相場を基準にした目安。かつては結納金も同じくらいの金額でした」。今は、身の丈に合った婚約スタイルが主流。“給料3ヵ月分”にこだわる必要はないようだ。
「紫色のふくさは、慶弔どちらにも使えます。ただ、包み方が異なるので注意しましょう」。慶事の場合は中央に置いた金封を、左側→上下→右側の順番で包む(弔事の場合は上下左右が逆)。受付で渡すときには、ふくさから取り出し、名前を相手のほうに向けてふくさの上にのせ両手で渡す。直接手渡しするのは「取りなさい」という仕草なので失礼に。必ず、台やふくさに置くようにする。祝儀用のふくさの色は紫のほかに赤やピンクがあるが、赤系はもちろん不祝儀には使えない。
現代礼法研究所主宰。NPO法人マナー教育サポート協会理事長。『一生使える! 大人のマナー大全』(PHP研究所)など監修、著書多数。「マナーは本来、自分ではなく相手に恥をかかせないための思いやりです。意味を理解したうえでルールを知っておけば、気持ちに余裕が生まれ、相手に思いを寄せることができるはずです」
大人だから一通りの礼儀作法はわきまえている。
けれど、年を重ねるほどに身に染みるのは、教科書どおりのマナーやマニュアルだけでは人間関係はうまくまわっていかないということ。
たぶん、大事なのは思いやりの心と柔軟な精神。自分も相手も、ともに機嫌よく過ごしたいなら、これまでの決まりごとにとらわれず、マナーや常識もバージョンアップさせていこう。
無用な軋轢のない、快適な関係を築くための、新しい考え方のヒントを集めました。
クロワッサン No. 1007
大人のマナー新常識。
・定価:550円 (税込)
・発売:2019.10.10
・ジャンル:実用
https://croissant-online.jp/