立ち止まることで見えた『力まず、急がず。予定不調和な人生を楽しもう』ストイックな“べき論”を手放して得たもの ~俳優 今井翼さん~ 取材_藤田佳奈美 撮影_赤澤昂宥 ヘアメイク_中谷圭子(AVGVST) スタイリスト_渡邊奈央(Creative GUILD) 制作_マガジンハウス

休養期間を経てリスタートした今井翼さん。システィーナ歌舞伎『NOBUNAGA』への出演で活動再開を果たし、映画のナレーションやドラマ出演など、多方面での快進撃が続きます。一方で、何事にもストイックに活動してきたこれまでとは一転、完璧を求めすぎないスタンスに切り替えた今井さん。心と体の声に耳を傾けて“今”を大切に生きる彼に、これからを乗り切るマインドセットの変え方についてお聞きしました。

新時代。どう防ぐかより、どう生きていくか

──コロナによって多くの人々が暮らしを見直すきっかけになりました。今井さんには変化はありましたか?

「だんだん状況は変わってきてはいるけど、『これでいいのかな?』という違和感が人によってはあると思います。これまでのいろんな経験から、どうにもならないことを受け入れたうえで、どう生きていくかを考えるべきなんじゃないかなと思っています。だから、今、暮らしに不安を抱いている人も、状況がどうあれ、自分がやるべきことをやる、それが大事だと思っています。どんなことが起きても、その時々の過ごし方を柔軟に受け入れて、そのうちいつか霧がかかっていたものが晴れていくといいなと思っています」

Profile

今井翼さん

1981年10月17日生まれ、神奈川県藤沢市出身。1995年より芸能活動をはじめ、歌手・俳優・タレントとして活動。2012年スペイン文化特使に就任。休養期間を経て2020年2月、システィーナ歌舞伎『NOBUNAGA』で再始動。

Special Interview TSUBASA IMAI

“偶然”が人生を拡張していく

──仕事とプライベートは両輪ですが、フレキシブルに動けるようになったのはしっかり休んだおかげと聞きました。今はどんな休日を過ごしていますか?

「休日の予定を綿密に計画立てて実行できると充実感はあるけど、それだと時間割をこなしている感じになっちゃうと思うようになりました。物事が派生していく感じもないし。だから予定はざっくり決めて、あとは偶然の出会いを楽しんでいます。『散歩に行こう。あ、こんなところに飲み屋があったんだ。気になるから入ってみよう』みたいな。それと、毎年休みにハワイへ行きます。場所によって目的は変わってくるけど、ハワイは僕にとっての楽園。東京はすべてのペースが速いじゃないですか。ハワイの海辺でボーッとして、いったん日常を切り離し、頭の中を落ち着かせる。切り替えにもなるし、東京に帰ったらまた頑張ろうって思えるんです」

趣味って本来、誰かに言われてはじめるものじゃない

──これといった趣味がない人が多い中で、今井さんはハワイのほかにも旅や料理、ダンスなど、多趣味ですよね。今井さんにとって趣味とはどういうものですか?

「僕は何事も突き詰めて掘り下げたくなるタイプなのですが、ストイックさが災いして、趣味が義務的になってしまうことがあります。趣味が仕事につながることもあるし、プロフィールに趣味を記載したからには全うしないといけないと焦ってしまうんです。だけど、趣味って本来、誰かに言われてはじめるものじゃないし、無理やり見つけるものじゃない」

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体を動かす趣味は、心身のバロメーターに

「ましてやきわめてからじゃないと公言しちゃいけないなんてことはない。やりたいことが見つかった時に、ラフで適当に向き合うくらいが僕にとっていいのかなと思っています。ダンスやランニングなど体を動かす趣味は、心身のバロメーターの役割があるんじゃないかと感じています。無になれる時もあるし、いくら動いても邪念が取れない時もある。体を動かすことで、余裕があるかないかを判断しています」

完璧主義から、余力を残して挑むスタイルへ

──偶然の出会いを楽しむ、ハワイで英気を養う、趣味を謳歌する……今井さんがこれらの休み方を通して得たものを教えてください。

「パブリックイメージにこだわることも多かったのですが、休んだことで、“べき論”から解放されて、少しラクになれた気がします。最近、目上の方と食事に行った時にも、『それくらいの感じでいいんだよ』と言われたこともあって。やり切ったと思えるところまで追い込むのも大事だけど、そうやって自分を常に越えようとすると、負担が後からやってくるんですよね。だから70%の力で向き合うくらいの心づもりでいるようにしています。相手も自分の鏡だから、自分の余計な力を抜いたら相手の反応も変わりますしね。周囲とコミュニケーションをとって話し合うことの方が大事だとも気付けました」

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人に任せることも重要なスキル

──70%の力で取り組むスタンスに変えたことで、何か変化はありましたか?

「残りの30%の部分を人に任せることができるようになりました。そのおかげで、自分のやるべきことに集中できるようにもなった。完璧主義だった時は、自分の思っていることと違う伝わり方をした時の不満が大きくて、つい細かくチェックしてしまったり、全部にかかわろうとしたりして、力の抜きどころがなかったんです。それに余力を残しておくことで、ここぞという時に100%の力も発揮できる。メリハリをつけられるようになりましたね」

振り返らない、先を見据えない、今を大切に

振り返らない、先を見据えない、今を大切に

──休養期間を経て、休むことや力の抜き方などさまざまな変化があった今井さんですが、これから先、どんな人生を描いていきたいですか?

「自分では想定できないけど、年々子どもがかわいいと思うようになりました。父性というのでしょうか。子どもに尊さを感じます。ただ、結婚や家庭を持つことは、ご縁やタイミングだと思うし、今は待ってくれていたファンの方々のために仕事に邁進したいですね。その先にあたたかい家庭を築く時が来れば。そのためにもまずは、今を大切に生きること。毎月僕にとって必要なテーマを漠然とカレンダーに書いているのですが、過去を振り返らずに、未来も見つめすぎない、今を大事に過ごそうと思っています。いつも感謝の気持ちを胸に励んでいれば、豊かな人生を過ごせる気がするんです」

<新作情報>

ミュージカル『ゴヤ-GOYA-』

日程・会場:
<東京公演>2021年4月 日生劇場
<名古屋公演>2021年5月上旬 御園座

原案・脚本・作詞:G2
演出:鈴木裕美
作曲・音楽監督:清塚信也
主演:今井 翼

製作:松竹
公式サイト:https://www.shochiku.co.jp/engekiw/lineup/musical_goya/