大人だから一通りの礼儀作法はわきまえている。けれど、年を重ねるほどに身に染みるのは、教科書どおりのマナーやマニュアルだけでは人間関係はうまくまわっていかないということ。たぶん大事なのは思いやりの心と柔軟な精神。自分も相手も、ともに機嫌よく過ごしたいなら、これまでの決まりごとにとらわれず、マナーや常識もバージョンアップさせていこう。
マガジンハウスのライフスタイル誌『クロワッサン』で特集された「大人のマナー新常識。」より、マナーデザイナー岩下宣子さん監修の“冠・婚・葬・祭で試される、あなたのマナーの本当の実力。”を特別配信。第1回となる今回は、「冠」編。
意外に奥深い冠婚葬祭マナーの実力を、クイズで試してみよう。難問揃いなので、6〜7割正解すれば、優秀です!
結婚記念日は、15年目までは毎年、それ以降は5年ごとに名称がついている。たとえば「ルビー婚式」は40年目。30年目は「真珠婚式」が正解。「25年目の銀婚式と50年目の金婚式は子どもなど家族がお祝いしてあげる節目ですが、それ以外は夫婦ふたりの記念日と考えればいいでしょう」
「はなむけ」は「餞別」と同じ意味合い。ただ、目上の人へ贈る際には、表書きは楷書で書くことが基本なので、この場合、表書きが平仮名なのがだめ。「『一路平安』(安らかな人生でありますようにと、旅立つ人の無事を祈る意味)と書く例もあります」。相手が上司ではなく同僚なら、「おはなむけ」でOK。
「相手が本当にゆっくりしたいと思っているのなら問いのような言葉でもいいかもしれませんが、もう自分が必要とされていないようで寂しく感じる人もいるでしょう」。そんな場合は、「今までご指導いただきありがとうございました。これからもよろしくお願いします」など、未来志向のお礼の言葉を。
部下のみんなで何かを贈るのはいいこと。とはいえ、目上の人に現金を包むのは失礼に当たる。「お金にお困りでしょう?という意味合いになるので、現金は避け、記念品もしくは商品券を贈るのがいいでしょう」。ただし、病気のお見舞いと香典に限っては、現金を包んでもいいとされる。
引っ越しのあいさつは「向こう三軒両隣」といわれるように、2軒隣は必須ではない。「ただ、毎日その家の脇を通ったり、迷惑をかける可能性もあると思うなら、数軒先でもあいさつしておいたほうがいいでしょう」。ご近所さんとは、何かあったときに助け合える存在でもある。あいさつは先手必勝と心得て。
最近は、結婚式に仲人や媒酌人をたてないことも多いが、本来、仲人さんは末長いお付き合いをさせていただくつもりでお願いするものなので、お中元、お歳暮もやめてはいけない。「仲人は、新郎新婦の親の親代わり。夫婦円満で人望のある方に依頼し、一生のお付き合いをさせていただくものでした。現代では、結婚時の上司にお願いするということもあるので、一般的にはお中元、お歳暮を贈るのは数年間でいいとされています」
「新築祝いで厳禁なのは、火事を連想させるようなもの。もともとは、ストーブ、ライター、灰皿など火気にまつわるものを贈ってはいけないというマナーだったのですが、そこから転じて、赤い品物も火を思わせるからよくないということになったのだと思います」。親しい間柄で、お互い気にしないのなら何の問題もないのだが、気にする人もいるということを考えると、赤いものは避けたほうが無難と覚えておこう。
現代礼法研究所主宰。NPO法人マナー教育サポート協会理事長。『一生使える! 大人のマナー大全』(PHP研究所)など監修、著書多数。「マナーは本来、自分ではなく相手に恥をかかせないための思いやりです。意味を理解したうえでルールを知っておけば、気持ちに余裕が生まれ、相手に思いを寄せることができるはずです」
大人だから一通りの礼儀作法はわきまえている。
けれど、年を重ねるほどに身に染みるのは、教科書どおりのマナーやマニュアルだけでは人間関係はうまくまわっていかないということ。
たぶん、大事なのは思いやりの心と柔軟な精神。自分も相手も、ともに機嫌よく過ごしたいなら、これまでの決まりごとにとらわれず、マナーや常識もバージョンアップさせていこう。
無用な軋轢のない、快適な関係を築くための、新しい考え方のヒントを集めました。
クロワッサン No. 1007
大人のマナー新常識。
・定価:550円 (税込)
・発売:2019.10.10
・ジャンル:実用
https://croissant-online.jp/