はじめてのお金の授業。株の島をちょっと旅してみよう。 ~いろんな思惑の人が住む魅惑の島~ 監修:<ファイナンシャルアカデミーグループ>代表 泉 正人

自分のお金と他人のお金で「思惑」が全く違う。

ここからは、五つの島のうち、株の島、不動産の島、為替の島についてそれぞれ旅をしていきましょう。

まず最初に訪れるのは、株の島。この島の住人は私たち個人投資家だけではありません。年金基金や銀行、生命保険・投資信託など、他人から預かったお金を運用している国内の機関投資家もいれば、ヘッジファンドや政府系ファンドなど、大口投資家や各国の政府から預かったお金を運用している海外の機関投資家もいます。


主な保有金額で見てみると、個人投資家がおよそ90兆7000億円※であるのに対し、国内の機関投資家は約144兆5000億円※、海外の機関投資家は154兆5000億円※。株の島は、機関投資家の存在感がとても大きい島です。そして、旅の心得として念頭に置いておきたいのは、プレーヤーごとに思惑が大きく異なるということです。


デイトレーダーから老後の生活資金を目的として運用する人まで個人投資家の思惑は人それぞれです。一方、機関投資家の場合、仕事として参加しているためいかに決算のタイミングで損失を減らし、良い成績を出せるかが勝負です。「いずれ上がるだろう」なんてのんびり待つことはできません。同じ投資家といえども、立場が違えば思惑は全く違うのです。

※出典元 2015年度株式分布状況調査の調査結果について <レポート編>(2016年9月28日)

株を保有している間は繰り返しもらえる「配当金」。

インカムゲイン

株を買って株主になると、大きく三つの利益を得ることができます。

一つ目の利益は「配当金」です。「1株あたり◯◯円」と株数に応じて受け取ることができます。企業によって1年に1回、半年に1回など頻度は異なりますが、株を保有している間、繰り返しもらえるのが魅力です。


上場企業の平均の配当利回りは、2019年11月現在、約1.9%※です。ただし、これが保証されているわけではないことに注意が必要です。業績次第で「増配」もあれば、逆に「減配」になることもあります。

※出典元 株式平均利回り 株式会社東京証券取引所

また、配当金をあえて出さずに投資に回すことで成長を加速させるスタンスの企業もあります。まさに3時限目で学んだ「投資」としてのお金の使い方を実践しているというわけです。

キャピタルゲイン

安く買って高く売ることで得られる「売却益」。

株式投資、というと、反射的にギャンブルのようなイメージが思い浮かぶ人もいるかもしれません。

株価は生き物のように上がったり下がったりするものです。こうした波を上手に捉え、安いときに買って高いときに 売れば、その差額が利益になります。これが「売却益」です。長期的にみると株価は企業の業績に連動していきます。そのため、大きな売却益を得たい場合は、今後成長して業績が伸びそうな企業を探せばよいということになります。

また、株の島全体の天候次第では、企業の業績と関係なく上がり相場や下がり相場になることもあります。株の島を旅するうえでは、島全体の天候を予測することも重要といえます。

おトクなおまけ「株主優待」。

株主優待

三つ目の利益は「株主優待」です。株主優待とは、企業が株主に対して感謝の気持ちを込めてプレゼントを贈る制度のことです。4時限目でも勉強しました。現在、日本の株式市場に上場している企業の数は約3700社。このうち、約1400社※がこの制度を導入しています。

個人投資家の中には、株主優待を楽しみに株式投資をしている人も少なくありません。それもそのはず、優待商品は自社製品や買い物優待券をはじめとして、お米や金券、カタログギフト、コスメにリゾートホテルの無料宿泊券などバラエティに富んでいて、実に楽しいのです。

※出典元 株主優待実施会社の推移 大和インベスター・リレーションズ株式会社

投資を一発で理解するために知っておきたい二つの言葉。

株式投資に限らず、投資で得られる利益は、大きく二つの種類にわけることができます。
一つは、それを保有している間、繰り返し得られる利益、これを投資の世界では「インカムゲイン」と呼びます。そしてもう一つが、安く買って、高く売ることで得られる利益、これを「キャピタルゲイン」と呼びます。

これから投資家として旅をしていくなかで未知の投資に出会ったら、すかさず「インカムゲインとキャピタルゲインはなんだろう」と自問自答してみましょう。そうすると、あら不思議。出会って間もない投資方法でも、その仕組みがすぐに理解できるはずです。

また、同時に考えたいのが、自分自身がインカムゲインとキャピタルゲインのどちらを得られる投資をしたいのかということです。同じ株式投資であっても、インカムゲインである配当金や株主優待が主な目的の場合、業績が安定していて、配当利回りや優待利回りが高いものを選ぶことをおすすめします。一方、キャピタルゲインである売却益を得たい場合は、成長に勢いがある企業、株価が割安のままの企業を選ぶことをおすすめします。

「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」。この二つの言葉は、投資の世界を旅するためのパスポートともいえる言葉なのです。

監修

泉 正人
〈ファイナンシャルアカデミーグループ〉代表

身近な生活のお金から会計、経済、資産運用に至るまで、独自の体系的なカリキュラムを用い、東京・大阪・ニューヨークで「お金の学校」を運営。より多くの人に真に豊かでゆとりのある人生を送ってもらうためのお金の教養を伝えている。
『お金の教養』(大和書房)、『お金原論』(東洋経済新報社)など著書は40冊、累計160万部を超える。一般社団法人金融学習協会理事長。https://www.f-academy.jp/

この授業のまとめ 株の島のプレーヤーは、それぞれ異なる思惑を持っている。投資で得られる利益には「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」がある。

次の授業は… 不動産の島をちょっと旅してみよう。

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