まっすぐ前を見据えるその目元には、揺るぎのない意志の強さと吸引力のある色気が宿る。俳優の間宮祥太朗さんは、11月15日から公開の主演映画『殺さない彼と死なない彼女』で、周囲を蹴散らすような鋭い眼光と気だるさを放ちながらも、不器用な優しさを持つ高校生・小坂役を演じています。思春期特有の“生きづらさ”や“孤独”に迫った本作を通し、生き方や考え方、人間関係など、役柄と間宮さんご自身の対比を軸にお話を伺いました。
Xに投稿した四コマが“泣ける”と話題を呼び、待望の書籍化、そして映画化を果たした『殺さない彼と死なない彼女』。3組の高校生たちで展開する本作は、思春期の少年少女の心の機微を丁寧に描いており、誰しもが通り過ぎた青春の“痛み”を思い返すはず。“殺す”が口癖の主人公・小坂を演じた間宮さんは、本作のちりばめられた伏線と予期せぬ結末を通して感じたことを次のように話します。
1993年6月11日生まれ、神奈川県出身。2008年、日本テレビ系ドラマ『スクラップ・ティーチャー 教師再生』で俳優デビュー。主な出演作は、映画『全員死刑』『お前はまだグンマを知らない』(2017年)、ドラマ『ニーチェ先生』(2016年)、舞台「ナイスガイ in ニューヨーク」(同)など多岐にわたり活躍。
映画やドラマなどで見かける「泣ける」という謳い文句は感動の押し売りみたいで構えてしまうんですが、四コマというコンパクトな尺とほんわかした絵のタッチもあって、圧を感じることなく読めました。押し付けがましくなくてそっと寄り添ってくれるような作品だと思います。
原作は四コマなのに、自然で違和感ない流れにできていたんじゃないかと思います。ちゃんと繋がっているんだけど、3組全てがそれぞれの2人の話になっている。
──死にたがりの彼女・鹿野を演じたヒロインの桜井日奈子さんとの2人の世界を演じてみていかがでしたか?2人って人間関係では一番最小の関係じゃないですか。たった1人の相手がいるだけで救われる世界があるんだなと思いました。
例えば鹿野にとっての小坂みたいな相手がいれば、防げる事件や自殺があるのかもしれないなって。人にたくさん囲まれていれば安心できるわけじゃなくて、たった1人自分と分かち合える人がいることが重要なんだなって。
──ご自身の人間関係はどうですか?僕を含めまわりに繊細な人間がいないので知人同士を会わせてみんなで仲良くなることが多いですね。小坂とは全く違うから演じていて新鮮でした。
特別すごいことをしていると思わせないところがよいですよね。重たい現実だけど、「あ、しているんだね」くらいの感覚というか。自分との向き合い方の中でリストカットを選択したというだけで、隠すわけでもなく、ひけらかすわけでもない。そういう方法で自分を救っているということだと思うので。もちろんしないに越したことはないですけどね。
興味が湧くのは、男性にアピールが上手な「きゃぴ子」だけど、実際付き合いたいと思うのはしっかり者の「地味子」。物事の本質を見ようとしているし、自分の足で立っている感じが好印象です。きゃぴ子みたいにノリがいいとか、かわいいとか、わかりやすいとか、それって表層的なことだから、対等に話し合える人に魅力を感じますね。
今はアウトプットが多くてインプットが少ないんです。「はまっているものは?」「感動したものは?」と取材でよく聞かれるんですけど、最近ピンときたものがなくて。アウトプットの精度を上げるためにも、もうちょっと自分も何かに感動していたほうがいいんじゃないかなって、ふと思ったり。新しい自分を発掘するためにも自分の蓄えを豊かにしていきたいですね。
11月15日(金) 全国ロードショー
監督・脚本:小林啓一『ももいろそらを』『ぼんとリンちゃん』『逆光の頃』
原作:世紀末「殺さない彼と死なない彼女」(KADOKAWA刊)
配給:KADOKAWA/ポニーキャニオン
上映時間:123分