はじめてのお金の授業。「お金は使うと減る」可能性があるってホント? ~実は「使っても減らない」お金がある~ 監修:<ファイナンシャルアカデミーグループ>代表 泉 正人

知らず知らずのうちに“ジリ貧”思考になってない?

さて、3時限目は、お金の「使い方」についてです。お金は、貯める「仕組み」さえ作っておけば、それ以外のお金は赤字にならない程度に思い切って「使う」ということもとても大事です。どういうことかみてみましょう

この問題を解いてみてください。みなさんの答えはどれでしょうか?花屋の売り上げを伸ばそうと思ったら、AもしくはCがおすすめです!Bの人件費削減は、一時的に手元の利益は増えるかもしれませんが、売り上げは先細りしていく一方です。

でも、このように経営者の目線に立つと一目瞭然なことであっても、自分に置き換えるとなかなかできないものです。収入が増えないからといって、買い物を我慢したり、休日の外出や旅行を控えたりしていませんか?そう、これはまさに、花屋の人件費削減と同じ状態です。経営者の目線に立ってみれば、間違った選択をしている可能性があることがわかっていただけるのではないでしょうか。

将来の売り上げ(=収入)を増やしたいなら、やみくもに支出を抑えるのではなく、赤字にならない程度にお金を「使って」将来の収入アップへの布石を打っていくことが大事なのです。お金は「使うと減るもの」だと思っているとしたら、知らず知らずのうちに“ジリ貧”思考になってしまっているかもしれません。お金は「使わないと増えない」可能性があるのです!

お金の「使い方」には投資・消費・浪費がある

ただし、「使わないと増えない」とは言っても、やみくもに使えばよいのかといえば、もちろんそうではありません。お金を「使って増やす」ために欠かせないポイント。それは、「投資」になるものにお金を使う、ということです。お金の「使い方」は、投資・消費・浪費の3種類にわけられます。買ったものに、支払った金額以上の価値があれば、それは「投資」です。支払った金額と同じだけの価値がある場合「消費」。支払った金額以下の価値しかない場合は、それは「浪費」にあたります。

お金の「使い方」は3種類。

もう一度、花屋の例で考えてみましょう。まず、将来の売り上げ(=収入)を増やしたいなら、やみくもに支出を抑えるBは適切ではありません。ここまではすでに理解できますね。Aの購入者全員にミニ鉢植えをプレゼントするには、1鉢180円の仕入れ(=支出)が必要です。これは、投資・消費・浪費のどれにあたるでしょうか。これを行なった結果、新たなお客さまを呼び込むことができ、たくさん花を買っていただき、それが、1鉢180円以上の利益を生み出すことにつながれば「投資」になります。しかし、ミニ鉢植えを準備しておいたにもかかわらずお客さんが増えなかった場合は、結果として「浪費」にしかなりません。

繰り返しになりますが、お金は使わないことには増えません。でも、投資というからには、その見返りとしての利益がしっかりとついてくることが大前提です。投資と浪費は紙一重だからこそ、「使い方」のスキルを磨き、本当に投資になるものを見極めてお金を使っていけるようになることがとても重要です。

「投資」といえるかどうかは時間がジャッジしてくれる。

みなさんのなかには、この授業を受ける前から「お金を使うときにはいつも、自分への投資だと思って使うことにしている」という人もいるかもしれません。旅行に行くのは経験への投資。良いサプリは健康への投資。タクシーに乗るのは時間への投資。高級な腕時計を買うのはやる気への投資。

こうした“自己投資”の思考を持つことはとても素晴らしいことです。ただし、それが本当に「投資」といえるかどうかは、その瞬間はわかりません。なぜなら、時間が経過しないことには、投資した結果がどうなったかは誰にもわからないからです。

仕事のスキルアップのために、と一念発起して英会話スクールに申し込んでも、数回通っただけで行かなくなってしまったとしたら、結果的に「浪費」です。一方で、会社を辞めてアジアを放浪する旅に出たら、収入は一時的に大きく下がるかもしれませんが、そこでビジネスのヒントを得て起業し、成功を収めることができれば、大きな「投資」ということもできるわけです。

僕は、常に「投資」の考え方でお金を使う思考を“投資脳”と呼んでいます。お金と良い関係を築くには、常にこの“投資脳”でお金を使い続けられるかが鍵となります。自己投資ができることは、素晴らしいことです。あとはその投資を無駄にしないための行動ができれば、お金を使っても減ることはありません。むしろ、正しく使えば使うほど好循環を生み出し、お金が増えていくのです。

監修

泉 正人
〈ファイナンシャルアカデミーグループ〉代表

身近な生活のお金から会計、経済、資産運用に至るまで、独自の体系的なカリキュラムを用い、東京・大阪・ニューヨークで「お金の学校」を運営。より多くの人に真に豊かでゆとりのある人生を送ってもらうためのお金の教養を伝えている。
『お金の教養』(大和書房)、『お金原論』(東洋経済新報社)など著書は40冊、累計160万部を超える。一般社団法人金融学習協会理事長。http://www.f-academy.jp/

この授業のまとめ お金は「使わないと増えない」!貯めるばかりでは”ジリ貧”思考になる可能性。お金と良い関係を築くためには、”投資脳”で正しくお金を使い続けることが大切。

次の授業は… たった3つの「お金の機能」

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