失敗は成長にも豊かさにも必要なこと 『失敗していい!弱くていい!』 アナタの背中を押してくれる応援メッセージ ~ スポーツキャスター 松岡修造さん ~ 取材_神津文人 撮影_佐藤将希 ヘアメイク_井草真理子(APREA) スタイリスト_中原正登(FOURTEEN)  制作_マガジンハウススタイリスト_中原正登(FOURTEEN)  制作_マガジンハウス

1992年に日本人初となるATPツアーシングルスで優勝、1995年にはウィンブルドン選手権でベスト8に進出するなど、世界を舞台に活躍する日本人テニスプレーヤーのパイオニアであった松岡修造さん。アスリートとして大きな結果を残し、現役を退いた後も、スポーツキャスターなどマルチに活躍中。いわゆる引退後の“第二の人生”も見事に成功している松岡さんは、どのように大きな決断をし、壁を乗り越えてきたのでしょうか。

“保険”があるから思い切り取り組める

慶應義塾高等学校から、テニスの名門・柳川高等学校への編入。18歳のときに単身渡米し、その翌年にはプロへ転向。大胆な決断の繰り返しに見えるものの、決して直感だけに頼ったものではなかったのだそう。

「周囲からはそう見えないかもしれませんが、実は自分に相当な保険をかけて行動しています。その結果、自分の中で成功するという感覚が7割以上あるものしか、ゴーのボタンを押しません。まず、何か目標があった場合、それを達成するためには何が必要かを書き出していく。すると、間違えたり、失敗する可能性のあるポイントが見えてくるんです。そして、もし成功しなかった場合、自分がどうなるのかということにもきちんと向き合っておく。それらすべて含めて“準備”ということだと思います。たとえば僕がプロになったときも、いろいろな可能性を考え、2年間やってダメだったら、アメリカの大学に進学しようと決めていました。その“保険”があったからこそ、思い切り挑戦できたと思っています」

Profile

松岡修造さん

1967年、東京都生まれ。1986年にプロテニスプレーヤーとなり、1995年のウィンブルドン選手権で、日本人男子としては62年ぶりとなるベスト8に進出。現在は「修造チャレンジ」などを通じてジュニアの強化と育成に尽力する一方、『報道ステーション』(テレビ朝日)、『くいしん坊!万才』(フジテレビ)などメディアでも幅広く活躍中。http://www.shuzo.co.jp

Special Interview SHUZO MATSUOKA

必要な出会いは自然に訪れる!

松岡さんがプロの道を歩むきっかけとなったのは、名コーチ、ボブ・ブレット氏との出会い。人生で必要な出会いは、強く求める人には必ず訪れるものだと松岡さんは言います。

「僕自身もそうですが、アスリートを取材していると“いまの自分があるのはあの出会いがあったから”という話を本当によく聞きます。夢や目標に向かって真剣に歩んでいれば、後で振り返ったときにターニングポイントだったなと思う出会いが必ず訪れると思います。そのためには、真剣に夢や目標と向き合っていることがとても大切。なんとなく日々を過ごしていると大事な出会いを見過ごしてしまうかもしれません。また、強い気持ちで目標に向かっている人というのは、周囲からの見え方も違うと思うんです。頑張っている姿を見れば、周りの人たちもサポートしたい、挑戦を共有したいと感じるはずですから」

弱さは自分を強くしてくれる武器

弱さは自分を強くしてくれる武器

勝負に負けることも、弱いことも問題なし!負けは次の勝負への糧であり、弱さこそが自分を強くしてくれるというのが松岡さんの考え方。

「テニスに関していえば、僕はプロになってシングルスの大きな大会では一度しか優勝していません。それ以外の大会は、すべて負けて終わっているということです。ですが、負けたことで得られるものがあるのは確かな事実。弱い自分と向き合って、次はどうやって戦おう、どうしたら勝てるのかを考え続けたことで成長できたと思っています。そして、“自分には無理”と考えてしまう心の弱さが出てきてしまうのは、心のどこかで本当は勝ちたい、成功したいと本気で思っているから。ネガティブな感情も、実は心の底にあるポジティブな気持ちの裏返しだったりするんです。そのポジティブさにちゃんと気がつければ、前に進もうと思えるはず。“自分は弱い”というのは、前向きな言葉なんです」

Special Interview SHUZO MATSUOKA

人を応援する才能は、テニスの才能よりも上

テニスプレーヤーとして成功を収めた松岡さん。現役を退いたのち、次の目標を見つけるのは難しくなかったのだろうか。

「アスリートにとって、現役を退いた後というのは、どうしても辛い部分があるものです。特に結果を出した人ほど、それ以上の目標を見つけることが難しく、ギャップに苦しむこともあると思います。次の夢、新たな喜びを見出すには、試行錯誤が必要かもしれません。僕に関して言えば、テニスというスポーツは大好きですが、自分自身も周囲も才能があるという捉え方をしていなかったんです。逆にいま僕がやっている“人を応援する” “アスリートの気持ちを伝える”という仕事は、テニスよりも才能があると思います。それは、非常にラッキーなことなのかもしれません。本気で頑張っている人を応援しているほうが、僕自身活き活きとしているのがわかるんです」

失敗することで自分のことを理解できる!

失敗することで自分のことを理解できる!

何がやりたいことなのか、何が向いているのか。現役引退後にそれを見つけだすためには、失敗しないとわからないだろうと考えていたそう。

「ジュニア選手の強化、育成を軸にしながら、テレビに出演する仕事も始めました。ただ、その中で自分が何を表現したいか、どこに適性があるのかを見つけるためには、失敗する必要があるだろうと思っていました。なので、最初の1年ぐらいは、オファーいただいたものには、何でもチャレンジしてみたんです。すると、やりたいこと、やりたくないこと、合っていること、合っていないことなど、様々なことがわかってきました。いろいろ挑戦して、失敗すると、自分のことがより理解できるようになるんです。いまやっている仕事は、やりがいがあって面白いものばかり。幸せなことですね。たとえ、いまの記憶を持ったまま20歳の頃に戻してくれると言われても、戻りたいとは思いません」

Special Interview SHUZO MATSUOKA

体重を計測するのが毎日の習慣

プロテニス選手時代と変わらないスマートな体型。見た目と体重キープのカギは、やはり運動と食事量のコントロール。

「現役のときのように追い込むようなことはしませんが、だいたい1日1時間ぐらいは運動をしています。30分の体幹を中心にした筋力トレーニングと、30分程度の有酸素運動が中心。その有酸素運動も、決して頑張ることはせず、仕事に必要な映像やドラマなどを観ながら、バイクを漕いだり、トレッドミルを走ったりしています。現役時代は我慢していましたが、甘いものが大好きなので、いまはよく食べています。ただ、体重計にのることを毎朝の習慣にしていて、体重が大きく増減しないように、食べる量をコントロールしているので、いまでも体重は現役の頃と同じ85kgです」

苦しさも、辛さも、すべてが豊かさの源!!

苦しさも、辛さも、すべてが豊かさの源!!

現役時代は、歴史的快挙を成し遂げる一方で、ケガにも悩まされた松岡さんが考える豊かな人生とは。

「いつも楽しくて、何をしても成功して、お金もたくさん持っている。すべてにおいてうまくいくことが、豊かさとイコールではないだろうという気がしています。ケガや病気をしたことで気がついたことがあるというアスリートの話はよく聞きますし、自分自身ケガによって強くなったと思っています。そして、スランプに陥ったときに、自分と向き合ってもがき苦しんだことが、後の心の成長に繋がり、苦しさや辛さがあったからこそ、勝ったときの喜びも一層増すという面もあるでしょう。喜び、楽しさ、苦しさ、辛さ。いろいろな感情をしっかりと感じて味わうことが、豊かな人生につながると思っています」

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