フェミニンな外見の内側に宿る男くささ 『もっともっと人生を充実させたい!』 苦難の壁をポジティブに乗り越える注目の俳優 〜 俳優 志尊淳さん 〜 取材_オオサワ系 / 撮影_新妻誠一(Y’s C Inc.) / ヘアメイク_仲田須加 スタイリスト_手塚陽介 / 制作_マガジンハウス

2018年注目度No.1の若手俳優の呼び声が高い志尊淳さん。映画やドラマでの役柄のイメージから“カワイイ系俳優”と呼ばれることが多いが、実際の性格は真逆。頑固で負けず嫌い、そして曲がったことが大嫌いという、まさに「漢(おとこ)」という字が相応しい気っ風がいい男なのです。そんな志尊さんが思い描く「豊かな人生」とは。言葉を選びながら等身大の言葉で丁寧に語る、真摯な姿がとても印象的でした。

猛練習も今思えばかけがえのない時間

映画『走れ!T校バスケット部』では主演を演じている志尊さん。劇中ではバスケットボールのエリートという役どころであるにもかかわらず、自身のプライベートにおけるバスケットボール経験は0(ゼロ)。約3ヶ月間の猛特訓を経て作品が完成したのだそう。

「僕だけでなく、T校のメンバーは全員がバスケ初心者だったのでとにかく大変でしたね(笑)。練習をするにあたって、バスケットボール元日本代表の半田圭史さんに指導をしていただきました。技術面もそうですけど、短期間の練習でどこまでスキルアップができるのかとか、この子の武器はこれだからここを伸ばそうとか、ひとりひとり寄り添って指導をしてくださってすごくありがたかったですね」

そして充実した短期の猛練習が、志尊さん演じる田所陽一にもたらしたものとは。

「練習漬けの日々は本当にきつかったですけど、毎日バスケをやることが演者同士のコミュニケーションに繋がるということをすごく感じました。たとえセリフがないところでも、一緒にバスケをやることで関係が深まるっていう。そしてスポーツは言葉を発さず一緒に体を動かすだけで親密になれるんだなって。撮影を通じてみんなでバスケに打ち込んだ経験は、人としても役者としても、間違いなく自分のこれからの人生の糧になると思います」

Profile

志尊淳さん

1995年3月5日生まれ。2011年俳優デビュー。ドラマや映画、CMなどを中心に活躍中。11月24日にはセカンド写真集『23』が発売予定。11月3日公開の映画『走れ!T校バスケット部』は、志尊さんにとって今年2本目の主演作。こちらは弱小バスケ部が奇跡をおこす、痛快青春エンターテインメント。
https://www.watanabepro.co.jp/mypage/10000047/

Special Interview JUN SHISON

役者になるきっかけは好奇心から

志尊さんの幼少期はとにかく元気なわんぱく坊主だったそうで。

「はい。元気な悪ガキでしたね。あと超がつくほど頑固で負けずぎらい(笑)。いつも先生に怒られていましたね。あと自分では特に意識はしていませんでしたが友達も多くて、周りからは顔が広いねって言われていました。野球が好きだった叔父の影響から、小学校2年生からずっと野球に打ち込んでいて、当時はプロ野球選手になるのが夢でした。ある日、東京ドームのジャイアンツ戦に連れていってもらったときに、その気持ちは固まりました。当時は長嶋茂雄監督の時代で、松井秀喜選手や高橋由伸選手が大活躍していました。でも結局野球は中学校までやってあきらめてしまいました」

今思えば、野球をやめたことが、この仕事に打ち込む大きなきっかけになったと志尊さんは続ける。

「野球から離れたときに、興味をもったのが俳優のお仕事だったのです。その頃スカウトしていただく機会が多く、その中で単純に知らない世界を知りたいという思いから、養成所に入らせていただきました。もちろん野球と同様、やるからには生半可な気持ちでは絶対にやらないという心構えでした。ただ、はじめたときは正直『絶対に成功させてやる!』という感じではありませんでした。入ってみて、いろいろなことに挑戦させていただくうちに、作品作りへの情熱や好奇心がどんどんとふくらんでいって、お芝居というものにのめり込んでいきました」

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人生の挫折はあってないようなもの

実際にこの世界に入ってみて感じたのは、いろいろな意味で想像以上に厳しかったということ。

「俳優を志す前は華やかな部分しか目にしていなかったので、その分の“温度差”がすごかったですね。例えば、テレビに出るのがどれだけ大変なことなのかとか。お恥ずかしい話ですが、この世界に入る前は、芸能人ならみんなテレビに出られるという感覚だったので、みなさんがどれだけ苦労をされているのかということを、まったく知りませんでした。ほかにも失敗や辛いことはたくさんありましたが、結果として今こうしてみなさんの前に出ていられているので、その経験は今はネガティブにとらえていません。むしろ、それも今の自分を形成することに繋がっていると思えば必要なことだったのだとポジティブにとらえています」

辛い環境に身を置いていたとき、苦しい気持ちとどう折り合いをつけてきたのだろうか。

「特別なことはしていないですね。このお仕事をやると決めたのは自分自身なので、とにかく余計なことは一切考えずに、与えられたことに必死に取り組むだけでしたし、今もそれは変わっていないです。その際、家族やマネージャーさんにサポートしてもらうこともあります。周りの方たちの支えに、本当に感謝しています」

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理想の家族は、今の自分の家族

志尊さんにとって家族は昔から特別な存在。

「厳しい業界ですから、このお仕事をはじめたころは、周囲の人たちは成功する可能性は低いと思っていたかもしれません。それでも家族が僕のことを信じて味方になって応援してくれていたから、また背中を押してくれたから今の自分があると思っています。だから僕の人生は、家族の存在なしではありえません。母親からは、小さいころからずっと物事の筋を通すことに関しては口をすっぱく言われてきて、僕自身がやりたいと言ってはじめたことは最後までやり通しなさいと教わりました。僕は仕事でも何でも、気になることがあったら妥協をせずに突き詰めたいタイプなのですが、それは親の教育の賜物だと思っています」

みんなと笑顔で暮らせるだけで幸せ

志尊さんにとって豊かな人生とは。

「自分の周りにいる家族や友達も含めてみんなが元気に笑顔で暮らせていること、それだけで豊かな人生だと思います。豊かであれば、どんなに小さな幸せに対しても敏感に感じると思うんですよね。最近は台風や地震など天災が頻発しているせいか、以前よりもそういう瞬間が尊く感じることが増えているような気がします。今、SNSを中心に『リア充』という言葉が使われていますが、僕は自信をもって言えますね。『自分はリア充です』と。こんなに色んなお仕事に携わらせていただく経験って、そうできることではないし、これを充実していないというなら何が充実だっていう感じです(笑)。だから今、濃密な時間が送れていることに感謝をしつつも、もっともっと充実させたいっていうどん欲な気持ちを持ちつづけたいですね」

そんな豊かな人生を築く上で欠かせないものとは?

「何度も同じことを言ってしまって恐縮なのですが、やはり家族ですね。やっぱり僕が物事を考える延長線上には、つねに家族の存在があります。子供のころは友達関係や恋愛のことまで、とにかく家族に何でも話していましたし、今もそれは変わっていないです。あと家族と同じくらい大事なのが、僕を支えてくれる周囲の人たち。自分が辛いときに支えてくれ、逆に自分が余裕のあるときに周りの人が困っていたら、全力で支えてあげたいって思います。いつまでもそういう関係を築いていたいです」

<作品情報>

絶賛公開中!

『走れ!T校バスケット部』

連戦連敗の弱小バスケットボール部の成長と奇跡を描いた
シリーズ累計120万部を超える青春ベストセラー小説
待望の映画化!

連戦連敗、向かうところ負けばかりの超弱小チーム「T校バスケット部」。そんなT校に、バスケットボールの強豪白瑞高校で1年生ながらエースとして活躍していたスタープレーヤーの田所陽一が編入してくる。陽一は親友をイジメから救ったことで自分自身が標的となり、白瑞高校を自主退学していた。もう二度とバスケットボールはしない。そう心に誓い、勉強に専念する陽一だったが、新たな仲間と出会い、脳裏に焼き付いて離れないリングに引き寄せられるボールの軌道が、陽一を再びコートへと駆り立てる。情熱と葛藤、仲間と家族、あきらめきれない夢。陽一を迎えた新生「T校バスケット部」が全国大会に向けて走り出す!

『走れ!T校バスケット部』

全国東映系にて公開中(2018年11月現在)

原作:松崎洋「走れ!T校バスケット部」(幻冬舎文庫)
監督:古澤健
脚本:徳尾浩司
主演:志尊淳、佐野勇斗、早見あかりほか
配給:東映