才色兼備、その内側にあるもの。『大切なのは、自分をさらけ出すこと』女優として、女性として成長し続ける28歳 ~ 女優 田中道子さん ~ 取材_栁澤哲 撮影_河合克成(125 inc.) スタイリスト_青柳裕美(Azzurro Inc.) ヘアメイク_山田典良 制作_マガジンハウス

今年、NHKの大河ドラマ『西郷どん』に出演し、加速度的に注目度を増している女優・田中道子さん。ジュビロ磐田を贔屓にするサッカー好きで九頭身ともいわれる抜群のスタイルと、みずから描いた絵が、プロをも唸らせるほどの芸術的な才能を併せもつ、まさに才色兼備な彼女は、果たしてどんな女性なのか?少女時代から現在までをひも解くことで、田中道子さんの魅力に迫ります。

ファンタジーの世界に没頭した少女時代

小学生のころは本を読むのが大好きで、週末になると父親と図書館に行き、毎日一冊ずつ読むような生活をしていたという田中さん。末っ子ということもあり、自分の意見をあまり言わない、内気で、インドアな子供だったとも。

「友達と遊ぶよりも、お兄ちゃんとゲームをしたり、近所のおばあちゃんの家に行って遊んでいました。それもあって、けっこう学校では浮いていたんじゃないかと思います(笑)。集中すると周りに目が行かなくなって、母が言うには『家で本を読んでいるときは話しかけても返事がない』っていうくらいに入り込んじゃって。移動教室も、本を読みながら移動していたくらいです」

本やゲームのなかで無限に広がる、いわゆる“ファンタジー”の世界にのめり込んだ少女時代。それは大人になった今でも、田中道子という人間に大きな影響を与えているとか。

「本とかゲームって基本的に、人間のきれいな部分が描かれている。醜いところはあまり描かれないんですね。だから私も人として、こんなふうにきれいに生きたいと、小さいころから思っていました。理想を追い求めているんですね。あと、なによりひねくれたことが嫌いで」

Profile

田中道子さん

1989年8月24日生まれ。2013年『ミス・ワールド 2013 日本代表』に選出され、2016年『ドクターX~外科医・大門未知子~』に出演し、女優デビュー。以降、2017年に『貴族探偵』、2018年にはNHK大河ドラマ『西郷どん』でタマ役を演じ、注目を集める。現在、7月からスタートしたドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(フジテレビ系、毎週月曜21:00~)に出演中。

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建築士の資格。そして絵画の才能

“ファンタジー”の世界をみずから造りたいとの思いから、大学では建築学を専攻し、2級建築士の資格も取得。その理由とは?

「私、もともと『ファイナルファンタジー』のスクウェア・エニックスさんに入りたかったんです。作画を担当したくて、履歴書も送ったくらいです。ずっと好きだったものの裏側を知りたいというか、私が感動したように、人を感動させるようなものを自分の手で造りたいという気持ちがありました」

そんな才能を周囲に知らしめるきっかけとなったのが、とあるバラエティ番組で披露した水彩画。光の明暗を見事に表現した作品はプロをも唸らせ、“光の道子”と称されるほどの絶賛を浴びました。

「ぜんぜん自信がなかったんですけど、番組で初めて絵を褒められて、『こんなんでいいんですか!?』って(笑)。そのくらい、それまでは周囲の人の意見を聞いていなかったので。ちょっと恐れ多いんですけど、いま二科展に応募しようと考えていて。建物の絵にファンタジー要素を入れた、私の今までの人生の塊のような作品を描いています」

思えば、芸能界入りのきっかけは、就職活動中に現在の事務所の社長に声をかけてもらったことから。両親の反対を押し切って、家出同然で単身上京した。

「道子という名前は、父が『自分の道を行け』という思いを込めてつけてくれたんです。10歳のときにそれを知って、そのときから自分の理想を追い求めたいという気持ちが強くなった気がします。上京の際もピンときちゃったというか。行かないほうが後悔すると思ったので、飛び出しちゃいました」
*二科展とは……日本の美術家団体のひとつである二科会(にかかい)が毎年秋に開催する美術展。作品は公募され、絵画・彫刻・デザイン・写真の4部門がある。

“負”の部分をさらけ出す

“負”の部分をさらけ出す

上京して半年くらいは、オーディションを受けても結果が出ない毎日。頑張ろうという気持ちの反面、不安も入り混じり、瀬戸際だったと当時を振り返ります。そんな状況から一転、ミス・ワールド 2013 日本代表という栄誉を勝ち取り、さらには2016年、満を持して女優としてデビューを果たします。

「右も左もわからない状態だったので、すごく肩の力が入っていましたね。自分の役をどう演じたらいいのか? そんなことばかり考えていました。最初は、泣く日のほうが多かったです。モデルのときは、自分のいい部分だけを見せればよかった。たとえば嫉妬する自分や、怒りっぽい自分を隠していたんですね。でも、そのままでは、すごくつまらない女優だなって、自分で思ってしまったんです。それを取っ払えるようになったのが、女優の仕事をはじめて2作品目の『貴族探偵』くらいから。バラエティ番組にも出させていただき、怒りっぽい自分だったり、キレた姿など、人としての“負”の部分を見せるようになってから、仕事が楽しくなりました。それまでは毎日不安で、寝られない日もあったんですが、今は仕事が楽しみで寝られないくらいです。以前はさらけ出すって難しいなと思っていたのに、最近は格好つけなくなって逆に注意されちゃうくらいですね(笑)」

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自分に嘘をつかず、真っ直ぐに生きる!

現在、28歳。女優として、そしてひとりの女性として、思い描く30代とは?

「26歳で女優デビューして、30歳までの5年間はがむしゃらに仕事をさせていただこうと思っていました。でも、いざ30代が目前になると、女優の仕事をしているからというよりも、人としてどう生きるか、みたいなことを考えるようになりました。どんな仕事をしていても、自分に嘘をつかずに、真っ直ぐに生きたいという気持ちが強いです。私、普段『幸せだ!』と思っていることってほとんどなくて、それくらい欲深いんです、きっと。満足したら成長も止まってしまうと思うので、いい意味で“欲深い女”ということで(笑)」

仕事への活力は、仕事から得る

仕事への活力は、仕事から得る

そんな女優・田中道子のパワーの源とは?

「やっぱり仕事のモチベーションは、仕事でしか得られないと思っています。周囲から『よかったよ』と仕事を評価してもらえると、泣くほどうれしいです。私は青臭いので承認欲求があって(笑)。それで次の作品が決まると、これからもっと頑張ろうと思えますね。それ以外に自分の気持ちをリフレッシュさせることができるのは、絵を描いているときや、好きなギャンブルをやっているときなど、趣味に没頭しているとき。仕事で落ち込んでしまったときなんかは、何も考えずにただひたすらゲームの麻雀の牌をきっています(笑)」

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自分のなかで折り合いをつけるしかない!

単純な性格で、周囲の意見をスポンジのように吸収してしまうという田中さん。その真っ直ぐさゆえ、裏目に出たことも。

「上京したときに『仲良しこよしやる暇があったら、がむしゃらにやろう』と思っていたので、友達がまったくいないんです。いっしょに飲みに行ったりする子はいるんですが、仕事のことをさらけ出せるのは事務所の人とか、自分のなかで折り合いをつけるしかないんです。上京してから5年、精神的には自立したなと思います。自分で解決することも多いです。あと、オンラインゲームをやっているのでネットの友達が多くて(笑)。私のことを知らないぶん、みんな意見を言ってくれるので大事にしています」

自分を解放することが、豊かさにつながる

自分を解放することが、豊かさにつながる

最後に、田中さんにとっての“豊かな人生”とは?

「感情をコントロールするというか、自分で抑え込もうとせず、楽しいときは楽しい、嫌なときは嫌と言える、子供のような心のもちようが大切なのではないかと。そんなふうに自分を解放することが、豊かさにつながるのではないかと思います。権力やお金なんかがなくても、ケラケラ笑っていられるような人生がいいですね」