好きな仕事、好きな人たちに囲まれた日常 『シンプルなことに豊かさを見出したい』“明朗快活な青年”の素顔と幸せの物差し 〜 俳優 佐藤隆太さん 〜 取材_岸良ゆか 撮影_関竜太 スタイリスト_勝見宜人(Koa Hole inc.) ヘアメイク_白石義人(ima.) 制作_マガジンハウス

ドラマ『ROOKIES』や映画『海猿』などで知られる俳優の佐藤隆太さん。デビューしてしばらくは明朗快活な若者や熱血漢を演じることが多かった印象ですが、30代半ばからはドメスティック・バイオレンスの加害者というシリアスな役に挑戦したり、良き父親役をこなしたりと、演技の幅を広げています。俳優のパブリックイメージは役柄に左右されがち。では、素顔の佐藤さんはどんな人なのでしょうか。仕事への思いやプライベート、そして佐藤さんが考える「豊かな人生」について、お話をうかがいました。

テレビの世界へ憧れた少年時代

小さな頃から目立ちたがり屋で、人前に出るのは好き。でもどこか照れくさい気持ちもあって、学芸会では主役ではなくその親友役を選ぶタイプ。恥ずかしそうにそう語る佐藤さんですが、すでに小学生のときには、将来テレビに出ている自分をイメージしていたといいます。

「小6でつくった卒業文集の寄せ書きには『10年後の僕をテレビの前で応援してください』と書いてました。2つ年上の兄の影響で野球を続けていた一方、応援団長をやったり、学芸会に出たり、みんなで作るイベント事がすごく好きで。当時は『俳優』という職業には考えが至りませんでしたが、テレビとか、そういう世界に漠然とした憧れを抱いていたような気がします」

Profile

佐藤隆太さん

1980年、東京生まれ。日本大学藝術学部映画学科在学中の1999年、舞台『BOYS TIME』でデビュー。以降、『池袋ウエストゲートパーク』『ROOKIES』など話題のドラマへ出演して一躍人気俳優となり、映画や舞台、CMなどでも活躍。最近では主演したドラマ『弟の夫』が注目を集めた。7月13日(金)より、よみうり大手町ホールにて舞台『アンナ・クリスティ』に出演。

Special Interview RYUTA SATO

試写会へ通いまくり、俳優を志す

テレビの世界へ憧れていた佐藤少年が具体的に「俳優」という目標に出会ったのは、中学~高校時代。きっかけは、映画を観るのに夢中になったことでした。

「映画をたくさん観るようになって、漠然としたテレビの世界への憧れが、映画の世界に入りたいというはっきりした目標に変わりました。ただ、中学、高校時代もずっと野球をやっていたので、アルバイトもできず、映画館へ行く時間もなくて」

そこで思いついたのが、映画の試写会へ行くという方法。当時、電車通学していた佐藤さんは、毎朝のように電車の網棚の上にだれかが読み終えた漫画雑誌や週刊誌が置きっぱなしになっていることに気づきます。

「その雑誌を手にとって読んでみると、試写会の募集のページがだいたいあるので。片っ端から応募すると、かなりの確率で当選するんですよ(笑)。おかげで、当時、自分で選んで観に行かないような映画も数多く観ることになったのですが、そういう作品が意外とおもしろかったりして。映画がもつ奥の深さとか、振り幅の大きさを知ることができました」

運命が動き出した舞台『BOYS TIME』

運命が動き出した舞台『BOYS TIME』

高校卒業後は、俳優を志して日本大学藝術学部の映画学科へ進学。授業はさぼりがち、だけど同じ夢をもつ仲間たちと自主制作映画の撮影に明け暮れる日々。そんな青春を満喫していたある日、佐藤さんの人生を大きく変える出来事が起こります。大学2年のとき、一般枠で応募した、宮本亜門さん演出の舞台『BOYS TIME』のオーディションに合格したのです。

「うれしいニュースは不思議と続くもので、舞台の稽古中、深夜テレビドラマのレギュラー出演の話をいただいたんです。舞台の公演より先にドラマの放映が始まったので、世に出た作品としてはドラマのほうが先。そのあとしばらくして舞台の公演が始まったと思ったら、見に来てくれたプロデューサーさんが『池袋ウエストゲートパーク』に呼んでくださって」

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出会いに恵まれ築いたキャリア

その後の活躍は、みなさんご存じのとおり。『木更津キャッツアイ』『ROOKIES』などの話題作へ立て続けに出演し、全国的な知名度を獲得。「佐藤隆太=元気でアツい人」という姿を広く印象づけます。30代半ばからは、これまでのイメージを覆すような役にも挑戦していますが、これは佐藤さん自身が望んだ俳優としての新境地なのでしょうか?

「いえ、自分で望むとか、そういうことはまったくないです。デビューしてからいままでずっと、いただいた仕事を全力でやってきました。ただ俳優って基本的に受け身な職業なので、『これはやる』『これはやらない』みたいなスタンスはとりたくない。だからいま、『佐藤隆太にこんな役をやらせてみたい』と思っていただけて、いろいろな役に挑戦させてもらえるのはありがたいです」

3児の父親として

デビュー当時から一貫して俳優という仕事が好きで、仕事とプライベートでは前者に比重があるという佐藤さん。ただ、結婚して父親になってからは、世の中の多くのお父さん同様、生活スタイルが激変したそう。

「子どもができてからは、プライベートな時間はほぼすべて家族のために使うようになりました。やってることはたぶんごく普通ですよ。子どもの習い事の送り迎えとか、休日は公園や遊園地へ行くとか、時間に余裕があるときは1泊くらいで旅行するとか」

いまや3人のお子さんのパパとなった佐藤さんが考える、理想の父親像とは?

「正しい父親のあり方、みたいなものはいまもわかっていないし、この先もわからないと思います。ひとつだけ言えるのは、かつて僕が俳優になりたいと言ったとき両親が応援してくれたように、自分も子どもの夢を応援できる父親でありたいということ。できるだけ多い選択肢のなかからやりたいことを見つけてほしいので、色んな物事に触れられる機会は作ってあげたいなと思っています」

Special Interview RYUTA SATO

娘から学んだ「強さ」

意外と教育パパ(?)な一面をもつ佐藤さん。パパの願いどおり、お子さんがさまざまな経験をするにつれ、想定していなかった事態が佐藤家に起こったようで……。

「習い事は『いやだったらやめてもいいよ』という前提なのですが、長女は始めたことは全部気に入っちゃうタイプみたいで。全然やめずに新しいことを始めるので、気がついたら親より子どものほうが忙しい、みたいな状態に(笑)。でも、どんな環境にも飛び込んでいける娘を見ていて、逆に励まされることもあります。僕はわりと神経質なほうなので、『俺も新しい現場に向かうときに怯んじゃだめだな』と思ったり」

幸せの物差しは十人十色

幸せの物差しは十人十色

家族を持ち生活や思考にも変化が生まれた佐藤さんにとって「豊かな人生」とは?

「僕の場合、自分の好きなことをして、好きな人たちに囲まれているときに『満たされている』と感じます。ただ、なにを『豊か』だと感じるかは十人十色だし、物事の大小や多寡では測れないと思う。ある人が『豊かだ』『幸せだ』と感じる状態も、べつの人にとってはそうじゃないかもしれない。僕はシンプルなことで豊かさや幸せを感じられる人間でありたいですね。とか言いつつ、昨日もまた新しいスニーカーを買っちゃったところなんだけど(笑)」

シャツ ¥27,000、ショーツ ¥23,000(共に nonnative)
サンダル ¥22,000(nonnative×ISLAND SLIPPER)

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