脱!ママにおまかせ パパのための教育エトセトラ 父親視点で学ぶ子どもの教育法 ~ 塾選びのコツ編 ~

高校までは公立で全然大丈夫かと思っていた親世代とは打って変わって、我が子たちはどんなステージでも受験が当たり前になってしまった。プレッシャーはかけたくないけれども、きちんとレールは用意してあげたい。ママは当然熱心だから、パパはもっと冷静に。自宅での勉強から塾選びまで、環境別&時期別に考え得る教育法をコラム形式で。

塾のソムリエに聞く!
中学受験、基本のキ

小学生の女の子のパパ、高木久之さん。最近気になっているのは中学受験。パパ本人は地方出身で公立中高が当たり前。でも、お子さんの小学校ではクラスの7割が私立中高一貫校に進学すると聞いて心おだやかではいられません。塾のことも気になります。いつごろから通うのがベストか、塾の選び方は?など気になる疑問を、塾のソムリエ、西村則康先生に聞いてみました。

Profile 高木久之さん

WEB制作会社を経営。小学1年生の女の子のパパ。たくさんある塾の中からどこを選べばいいのか、志望校選びはどうすればいいのか、わからないことだらけ。共働きなので、中学受験で親にどれだけ負担がかかるのかも気になっている。

Profile 西村則康さん

家庭教師「名門指導会」代表。塾講師を経て独立し、日本初の塾ソムリエ、家庭教師のプロとして活躍。30年以上にわたり、中学・高校受験指導を行う。コーチングの手法を取り入れ、子どものやる気を伸ばしながら、受験を通じて親子の絆を強める付加価値の高い指導で、最難関高へ2500人以上を合格させてきた。https://www.e-juken.jp/

塾はいつから?
どんな塾がいいの?

高木 「ズバリ、塾って何年生から通えばいいのですか?」

西村 「入試を目的とするなら、小学校4年生から。正確に言うと小3の2月からがベストです。それより早いと、まだ脳が十分に発達していない段階で抽象的な概念を教え込むことになり、理解できず丸暗記の学習になる可能性があります。逆に4年生より遅く始めると、入試本番までに勉強を完結することができません」

高木 「塾選びのコツってありますか?」

西村 「子どもの性質に合っているかどうかが最優先。お子さんのタイプを、先取り学習ができているかどうか、計算などの処理能力が高いかどうかの2軸で分けると、それに合った塾がわかります。基礎学力があり、先取り学習ができていて計算も速く、言われたことをコツコツまじめにこなせる子は、サピックスでも十分ついていけます。先取り学習はできているけど、計算がやや遅い子は、サピックスよりも早稲田アカデミー、四谷大塚が向いています。早稲田アカデミーか四谷大塚かは、校風の違いを考慮してください。四谷大塚は、ベテランの、じっくり教えるタイプの先生が多い。早稲田アカデミーは、若い先生が多くどちらかというと少し体育会系。おっとりした子には厳しく感じるかもしれませんが、悪ガキタイプの子は逆に伸びたりします。日能研や市進は、大手塾の中では一番進度がゆっくりで宿題の量もほどほどです。のんびりタイプの子はこちらのほうがいいでしょう」

Profile 高木久之さん

WEB制作会社を経営。小学1年生の女の子のパパ。たくさんある塾の中からどこを選べばいいのか、志望校選びはどうすればいいのか、わからないことだらけ。共働きなので、中学受験で親にどれだけ負担がかかるのかも気になっている。

Profile 西村則康さん

家庭教師「名門指導会」代表。塾講師を経て独立し、日本初の塾ソムリエ、家庭教師のプロとして活躍。30年以上にわたり、中学・高校受験指導を行う。コーチングの手法を取り入れ、子どものやる気を伸ばしながら、受験を通じて親子の絆を強める付加価値の高い指導で、最難関高へ2500人以上を合格させてきた。https://www.e-juken.jp/

小4からがベスト塾は子どもの性質で決める

高木 「サピックスは、よく話題に上りますし、いい塾なのかなと思いますが」

西村 「御三家を狙うのならサピックスは最適の塾です。情報が多く、テキストも洗練され、御三家を狙うための内容になっています。しかし、御三家に行くつもりがないのなら子どもの適正に合わせて選択するのがよいでしょう」

子どもの性質に合っているかどうかが最優先

公立の中高一貫校ってどうなの?

高木 「私立だけでなく、公立の中高一貫校も人気が高まっていますが」

西村 「公立の中高一貫校と私立の中高一貫校では出題傾向が別物と言っていいくらい違う。しかもここ数年で公立の難易度が高まっています。まず、300文字、400文字といった長文を書かせる記述式の問題がとても多い。選択問題が中心の私立とは全く異なります。私立を第1志望にしながら、公立を第2志望にするのは無謀です」

高木 「でも、サピックスからは、私立も公立も合格している子がたくさんいると聞きます」

西村 「そもそもサピックス出身の子が多く合格している、桜蔭、開成、麻布といった私立校は、もともと記述式問題の出題が多い学校です。公立の中高一貫校よりももっと難しい問題をやってきているから公立も軽く合格できてしまうだけのことです。公立の中高一貫校は、倍率が15倍に達することもあります。つまりほとんどの子が落ちる。もし受験するのであれば、不合格であることも想定しながら、『たとえ落ちてもがっかりすることはない、それに向けて勉強した経験は必ず役に立つ』と、親も子どもも理解した上で挑戦しないと、よい影響はありません」

高木 「それでも公立校を志望するとしたらどの塾がおススメですか?」

西村 「早稲田アカデミーが、今年から公立の中高一貫コースを新設しました。他の塾も追随すると思われます。昔から公立対策に強いのはenaです」

私立と公立中高一貫校を併願するのは無謀

親がすべきことは、
成功イメージの先取り

高木 「西村先生は『中学受験は親が9割』(青春出版社)という本を出しておられますね。親として気をつけるべきことは?」

西村 「親がよくやってしまう失敗に、『君は○○ができていないから、こうしなければいけない』という言い方。まず欠点を挙げて、次にやるべき義務を言う。子どもは叱られたと思って落ち込み、『だからこれをやるべきだ』と言われても気持ちが切り替わらないのです。代わりにまず『君だったらこれができるよね』と言う。次に『しかも、それができるとこんないいことがあるよね』と言う。いわば、“成功イメージの先取り”をさせてあげるのです。こういう文脈で言えば子どもはやる気になれます」

高木 「なるほど、“成功イメージの先取り”とは名言ですね。ちょっとがんばればなんとかなりそうだし、それをやればこんないいことが起きそうだとイメージできれば、子どもはやる気になる、ということですね」

西村 「そのとおりです。子どもがやる気になるよう演出することが親の役割なのです」

がんばればできそうと思わせるのが親の役目

取材を終えて

私自身が地方の公立校出身でしたので、中学受験って必要なのかなと思っていました。でも、周囲には中学受験をさせる人が多く、不安だけが先走っていて。塾選びも見当もつかなかったのですが、子どもと塾を2軸で分けて考えればいいと聞いてなるほどと。マーケティングと同じですよね。「こうしなさい」と言うのではなく、「これならできそう」と子どもが思えるように演出するのが親の仕事、という言葉は心に刻んでおこうと思います。