変わりゆく仕事の価値観『働き方総研』自分なりのスタートアップ体験記 ~STUDIO DOUGHNUTSの場合~

終身雇用も幻想と化し、就職が就社ではなくなってきた昨今。起業や独立、勤めながらの副業、さらにはいくつものビジネスを並行するパラレルワークなど、仕事の形も多種多様に。そんな中、小さくても逞しく、自分たちなりに自分たちらしい仕事を始め、それぞれのジャンルで活躍している人たちがいる。彼らの働き方は、まさに「生き方」そのもの。かつての彼らと現在の違いも紐解きながら、変わりゆく仕事の価値観を浮き彫りにしていく。

夫婦2人で踏み出した
「独立」という選択

2015年、プロダクトや空間デザインなどを手がけるSTUDIO DOUGHNUTSを立ち上げた鈴木恵太さん&きたはた裕未さん夫妻。もといた(有)ランドスケーププロダクツは、さまざまなプロジェクトの仕掛人としても知られる中原慎一郎さんが代表を務め、店舗や住宅、オフィスの設計から、家具や雑貨のデザイン、ショップやカフェまで運営する多彩な会社。業界でも飛びぬけた個性を持つ古巣から、また新たな道を選んだ2人の「働き方」とは。

自然と自分たちが集中できる
仕事の仕方に

一目惚れしたという自宅兼事務所は、80年代にグラフィックデザイナーの自邸として設計された建築家・室伏次郎の作。2人で仕事を始めて変わったのは、ここで過ごす時間でした。「朝ごはんを食べて少し用意したら、すぐ仕事に集中できます」(きたはた)。「夕方18時には仕事を終えて、運動したりして、夜0時前には寝る生活です」(鈴木)。独立してみて気づいたのは、木漏れ陽が差し込むいい時間帯に働く心地よさだったとか。

PROFILE

きたはた裕未 さん

京都府京都市出身。京都精華大学プロダクトデザイン学科卒業後、大手機械メーカーのデザイン部門に就職するも、一生の仕事に思えず退社。(有)FHAMSを経て、(有)ランドスケーププロダクツへ。店舗や住宅の内装設計、イベント会場などさまざまな案件を担当。2015 年よりSTUDIO DOUGHNUTSとして活動。

PROFILE

鈴木恵太 さん

茨城県笠間市出身。工業系の大学に通っていたが、もともと好きだったデザインを学ぶため桑沢デザイン研究所へ。卒業後は、ある家具デザイナーとの出会いから(有)ランドスケーププロダクツに入社。自社ブランドの企画やデザイン、営業まで多岐に渡って担当。2015 年よりSTUDIO DOUGHNUTS として活動。

自然と自分たちが集中できる
仕事の仕方に

一目惚れしたという自宅兼事務所は、80年代にグラフィックデザイナーの自邸として設計された建築家・室伏次郎の作。2人で仕事を始めて変わったのは、ここで過ごす時間でした。「朝ごはんを食べて少し用意したら、すぐ仕事に集中できます」(きたはた)。「夕方18時には仕事を終えて、運動したりして、夜0時前には寝る生活です」(鈴木)。独立してみて気づいたのは、木漏れ陽が差し込むいい時間帯に働く心地よさだったとか。

覚悟を決めた人の横顔を見て、
描いた未来

きたはたさんが独立を意識し始めたのは、仕事で向き合う個人経営者たちの覚悟に触れたときだったそう。「これから個人で独立してお店を出そうという方たちは、やはり気合が入っていて、かっこいいなと思いました。銀行で大金を借りたりしながら、『リアルにこれしかない!』という中でどう作っていくかというやりとりも、たくさんして。『自分もいつかこの人たちと同じスタートラインに立ってみたい』と思うようになったんです」

やっぱり現場が面白い

「こういう設計段階も楽しいけど、職人さんと言い合いながら作る現場がやっぱり一番面白い」ときたはたさん

独立とともに形作られていった
コミュニティ

「完成後も、そのお店がうまくいっているのを見るのが一番うれしい」という鈴木さんは、周囲のコミュニティが変化したといいます。「ランドスケープのお客さんは、どこか中原さんとの共通言語を持っています。それを今度は自分たちでやってみたら、世代や感覚が近い人たちとまた新しくつながっていったんです」。こちらが空間づくりを手伝うだけではなく、逆に自分たちを応援してくれる人たちとの関係が築かれていきました。

きっかけは友人夫妻

2人が独立する契機となったのは、友人夫妻のお店の設計だった。お互いをよく知る友人からの依頼は今も多い

時には現場で、
自分たちも手を動かす楽しみ

昨年、兵庫県篠山市に誕生した話題のセレクトショップ『アーキペラゴ』も、2人がデザインを手がけました。のどかな風景の中に佇むこの建物は、もともと穀物倉庫。壁際にずらりと並んだ調湿のための特徴的な格子も、デザインの一部になっています。下半分の白い塗装は、泊まり込みでオーナー夫妻と一緒に塗ったそう。「その分別の家具に予算を回したほうが楽しいし、現場に参加したいというお客さんも多いんです」ときたはたさん。

This is how I feel about working
CASE#01.

入口内側のあしらいは、将来的に階段を付ければ中2階にすることもできる構造。「いつかペチカ(壁に埋め込む暖炉)をやりたいそうなので、その壁も作ってあります」。これからもまだ進化していきそうな空間です。

お店のオーナーの顔が見える
空間デザイン

下北沢にあるおいしい欧風カレーとコーヒーのお店『YOUNG』も、思い出深い案件だといいます。いつもデザインを形にしていく過程では、コミュニケーションを大切にする2人。どんな空間にしたいか、どんなものが好きなのかを丹念に聞き出して、時には食事を共にしながら時間を費やすことも。こちらのオーナー夫妻は毎年チェンマイへ旅するほどのタイ好きだったそうで、そんなこともデザインやカラーリングなどのヒントになりました。

This is how I feel about working
CASE#02.

「わりとシンプルなものも好きな方なので、ポップな内装の中にもバランスをとりました」ときたはらさん。鈴木さんが手がけたオリジナル家具も、お店の独自カラーが垣間見える愛らしいアクセントとなっています。

自分たちの尺度で
自分たちのペースで

「『予算はいくらでもあるからお任せ』なんて仕事はできない」という2人。そのお客さんがあってこその形を探ることを大切にしているとのこと。独立後は、「意外と平日も休めない」ことを知り、何かミスすればはね返ってくる責任の重さも身にしみたそう。でも、「仕事中ラジオも聞くし、場所中は毎日大相撲の中継を見ています(笑)」とあくまでマイペース。今後はオリジナル家具や雑貨の展開も目指しているそうです。

自分たちの尺度で
自分たちのペースで

「『予算はいくらでもあるからお任せ』なんて仕事はできない」という2人。そのお客さんがあってこその形を探ることを大切にしているとのこと。独立後は、「意外と平日も休めない」ことを知り、何かミスすればはね返ってくる責任の重さも身にしみたそう。でも、「仕事中ラジオも聞くし、場所中は毎日大相撲の中継を見ています(笑)」とあくまでマイペース。今後はオリジナル家具や雑貨の展開も目指しているそうです。