脱!ママにおまかせ パパのための教育エトセトラ 父親視点で学ぶ子どもの教育法 ~子どものやる気スイッチ編~

高校までは公立で全然大丈夫かと思っていた親世代とは打って変わって、我が子たちはどんなステージでも受験が当たり前になってしまった。プレッシャーはかけたくないけれども、きちんとレールは用意してあげたい。ママは当然熱心だから、パパはもっと冷静に。自宅での勉強から塾選びまで、環境別&時期別に考え得る教育法を対談形式で。

塾講師に聞く!
子どものやる気の引き出し方

めまぐるしく変化する現代。ボヤボヤしていたら近い将来、AIやロボットに仕事を奪われてしまうかも!? これからの時代、ウチの子にはどんな力をつけてあげるべき…? 西﨑龍彦さんも子どもの教育に頭を悩ませているパパの一人。特に高校受験を控えている中3の長男が、勉強にやる気を出せないことが気になっているそう。20年以上、受験塾で子どもたちを指導してきた小澤珠美先生に、やる気を引き出す秘訣を聞いてみました。

中学受験に失敗?
何をもって失敗なのか

西﨑 「3人の子どもがいます。長男は小学校から塾に通い、中学受験をしたけれど失敗。今、近くの公立中学に通っています。これから高校受験に向けて本気で勉強しなければならないのですが、本人がなかなかやる気にならなくて」

小澤 「今、お子さんが中学受験に失敗したとおっしゃいましたが、何をもって失敗と思います?」

西﨑 「志望校に合格できなかったことですね。志望校は作文を重視する学校だったので、塾に通って作文対策を徹底的にやりましたが、その結果型にはまったつまらない文章しか書けなくなってしまって。かわいそうなことをしたのかなと思っています」

小澤 「前提として都立・県立などの公立中高一貫校の入試は、誰にとっても難しいもの。まじめにコツコツ勉強してきて、高偏差値だった子でも落ちることがある。つまり努力が報われないことがままあるのです。怖いのは、その挫折感が子どもの中にいつまでも残っていないか?ということですね。私は多くの子どもたちを見てきましたが、高校受験生で、能力はあるのにやる気のスイッチが入らない子は、多くの場合中学受験で不合格の経験があるんです。その子たちが決まって言う言葉が『やっても僕は(私は)できない。だって中学校受験もそうだったもん』。これは、中学受験を経験していなくて、高校受験が初めての受験という子にはないものです。大人が思っている以上に、子どもの中に大きな挫折感を残していることもあるのです」

Profile 西﨑龍彦さん

アパレル会社営業本部長。仕事で日々多忙な毎日を過ごしながら、家庭には子どもが3人。現在中3、中1の男子で打ち止めと思いきや、昨年家族がまたひとり増えることに。周囲の期待に反し、新メンバーはまたも男子。また始まる育児に腕が鳴る40歳。

Profile 小澤珠美さん

大手進学塾の講師として15年勤め、フェリス・雙葉・女子学院などの有名私立校で目覚ましい合格実績を上げる。2010年に独立。2013年に「名前もない小さな個人塾」(市ヶ谷)を開校。教育コーチ、トレーナーとして学校・公的機関等で保護者向けセミナーも。近著「~中学受験超成功法~ママは楽しく息を抜く~」(ギャラクシーブックス)

子どもは、努力は報われないと感じている

中学受験に失敗?
何をもって失敗なのか

西﨑 「3人の子どもがいます。長男は小学校から塾に通い、中学受験をしたけれど失敗。今、近くの公立中学に通っています。これから高校受験に向けて本気で勉強しなければならないのですが、本人がなかなかやる気にならなくて」

小澤 「今、お子さんが中学受験に失敗したとおっしゃいましたが、何をもって失敗と思います?」

西﨑 「志望校に合格できなかったことですね。志望校は作文を重視する学校だったので、塾に通って作文対策を徹底的にやりましたが、その結果型にはまったつまらない文章しか書けなくなってしまって。かわいそうなことをしたのかなと思っています」

小澤 「前提として都立・県立などの公立中高一貫校の入試は、誰にとっても難しいもの。まじめにコツコツ勉強してきて、高偏差値だった子でも落ちることがある。つまり努力が報われないことがままあるのです。怖いのは、その挫折感が子どもの中にいつまでも残っていないか?ということですね。私は多くの子どもたちを見てきましたが、高校受験生で、能力はあるのにやる気のスイッチが入らない子は、多くの場合中学受験で不合格の経験があるんです。その子たちが決まって言う言葉が『やっても僕は(私は)できない。だって中学校受験もそうだったもん』。これは、中学受験を経験していなくて、高校受験が初めての受験という子にはないものです。大人が思っている以上に、子どもの中に大きな挫折感を残していることもあるのです」

子どもは、努力は報われないと感じている

言葉が行動を形成する

西﨑 「確かに、僕は子どものころから根拠のない自信がありましたが、長男は、『どうせ自分には無理…』と思っているフシがあるようですね」

小澤 「これは統計でもはっきり出ているのですが、日本の高校生は『自分はダメな人間だと思うことがある』と答えた人が65%以上で諸外国に比べて非常に高い(注)。自己肯定感が低いのは、西﨑さんのお子さんだけの問題ではないんです。いきなり大きな目標を掲げて成功することは難しいけれど、たとえば漢字の小テストで満点を取るといった、小さな成功体験を増やしていって、自己肯定感をつけてあげることが大事です。もう一つは、『自分のいいところは何だと思う?』と聞いて、10個くらい挙げてもらうのもいいかと。あなたにはこんなにいいところがあるよと親が言うことももちろん大事ですが、自分で声に出して、耳から自分の脳にインプットすることに意味があります。言葉が行動を形成するんですよ」

注:「自分自身に満足している」と答えた日本の若者45.8%。アメリカでは86.0%。将来に明るい希望を持っているかという問いに対しても「はい」と答えたのは6割で7カ国中最低。(「子ども・若者白書」(2014年 内閣府)より)
自分で自分のいいところを10個言ってみるといい

こんな勉強で、
おもろい大人になれるのかな?

西﨑 「自分が中学校の時と比べてびっくりしたのは、今って中間とか期末テストの出題範囲が親切すぎるくらい細かく書かれたプリントが配られる。これを見ていれば、誰だってそれなりの点数が取れますよね。塾の、型にはまった作文もそうですが、こんなことでおもろい大人が育つのかな?って思ってしまうんですよね」

小澤 「西﨑さんは、お子さんにどんな大人に育ってほしいですか?」

西﨑 「まず、礼儀正しいこと、相手の目をまっすぐ見て自分の意見を話せること、周囲の人とコミュニケーションを取れること、面白いことも言えて、人を笑わせられること。あの人にまた会いたいなと思われる人……。ステレオタイプにいい高校、いい大学に入ってほしいとは思っていないんです。ただ、せめてこのくらいの学校には行ってほしい、という小さな欲はどうしても出てきてしまいますね」

小澤 「それ、お子さんに言ってみたらどうですか? おもろい大人になってほしい、たくさんの人に好かれる人になってほしいんだと。だけど、学歴って一生ついて来るものだから、勉強というフィールドでちょっと勝負してみない?と」

西﨑 「この間、あまりにテストの点数がひどかったので、夢は何なの? 将来何になりたいの?と聞いてみたんです。でも、具体的な職業は出てこなくて。ただ、社会の役に立ちたい、人から頼りにされるような仕事をしたい、という言葉は出てきました。それは嬉しかったですね」

小澤 「それは素晴らしい」

いい高校、いい大学に入ってほしいとは思っていない

大切なのは、
自分で選択したという事実

小澤 「いい高校、いい大学、というのは人それぞれ思うところがあって一概にどことは言えないと思いますが、大切なのはその子が自分でそこを選んだかどうかなんです。僕は他に落ちたから仕方なくここに来た、と思いながら高校や大学に通っている人はとても多い。でも、併願校を含め子どもが自分で選んだ学校であれば、たとえ第一志望に合格できなくて併願校に入ることになったとしても、3年間をプライドを持って楽しむことができるし、学校への愛着も持てるんです。親ができることは、『子どもが自分で選んだ』という状況を作ってあげることですね」

自分で選んだ学校ならプライドを持って楽しめる

人間は、みんな
よくなりたいと思っている

小澤 「忘れてはいけないのは、『人は育とうとする生き物だ』ということなんです。すべての子どもがよくなりたいと思っている。『別にこのままでいいよ』と言っていても本心は違う。なにかきっかけさえあれば、子どもって勝手にのびていくものなのです。たとえば、30点のテストを持って帰ったら『これが80点になったらどんな気持ちになる?』と聞いてみてはどうでしょう? 明るい未来を描くことでやる気に繋がってくるでしょう」

明るい未来を描くことでやる気に繋がってくる

取材を終えて

話しているうちに、自分の考えが整理されたように思いました。中学受験の何をもって失敗と思うのかと聞かれてハッとしました。確かに失敗と決めつけるのではなく、次へのステップとすべきですよね。子どものやる気を出すにはどうすればいいかを聞いていたつもりなのに、いつのまにか仕事に重ねあわせている自分にも気がつきました。部下を育てることも同じなんだなぁと。いろいろな気づきがあって、今日から子どもとの接し方も変わるような気がします。(西﨑)