SDGインパクトジャパンとの資本・業務提携について

当社は、サステイナビリティ経営の推進と、機関投資家としての責任投資の取組みのいっそうの高度化へ向けて、2022年1月31日に、サステイナビリティ領域全般に高度な知見を有する「株式会社SDGインパクトジャパン(以下、SIJ社)」と資本・業務提携契約を締結しました。

(左から SIJ社 会長 谷家 衛氏、明治安田生命 代表執行役社長 グループCEO 永島 英器、SIJ社 共同代表取締役 小木曽 麻里氏)

(左から SIJ社 会長 谷家 衛氏、明治安田生命 代表執行役社長 グループCEO 永島 英器、SIJ社 共同代表取締役 小木曽 麻里氏)

SIJ社は、サステイナビリティ・ファンドの組成・運営推進、金融機関や企業向けサステイナビリティ評価ツールの提供、サステイナブルファイナンスに関するアドバイザリー業務を主な事業内容とし、グローバルで豊富な経験をもつ経営陣のもと、サステイナビリティ領域全般に高度な知見を有しています。
本提携により、SIJ社が有するグローバルなネットワークと高度な知見を共有し、サステイナビリティ領域全般における幅広い協力関係を構築することで、当社のサステイナビリティ経営の推進と、機関投資家としての責任投資の取組みをいっそう強化していきます。

社会的価値の創出

株式会社SDGインパクトジャパンの概要

名称

株式会社SDGインパクトジャパン

主な事業内容

・サステイナビリティ・ファンドの組成・運営推進
・金融機関や企業向けサステイナビリティ評価ツールの提供
・サステイナブルファイナンスに関するアドバイザリー

設立年月日

2021年1月21日

代表者

共同代表取締役 小木曽 麻里、Bradley Busetto

SIJ社公式ホームページ

https://sdgimpactjapan.com/jp/

座談会「持続可能な社会づくりへの貢献に向けて」

当社は2022年1月、サステイナビリティ領域全般における幅広い協力関係を構築するため、株式会社SDGインパクトジャパン(以下「SIJ社」)と資本・業務提携契約を締結しました。本提携により、SIJ社が有するグローバルなネットワークと高度な知見を共有し、当社のサステイナビリティ経営の推進と、機関投資家としての責任投資の取組みをいっそう強化していきます。
ここで、SIJ社会長を務める谷家 衛氏、共同代表取締役を務める小木曽 麻里氏に、サステイナビリティの現状や当社への期待、2030年にめざす姿などについてお話を伺いました。

(左から 明治安田生命 代表執行役社長 グループCEO 永島 英器、SIJ社 会長 谷家 衛氏、SIJ社 共同代表取締役 小木曽 麻里氏)

永島 英器

明治安田生命
取締役 代表執行役社長 グループCEO

谷家 衛氏

SIJ社 会長

約30年の金融キャリアを有し、20年以上にわたるエンジェル投資を通じて多くのスタートアップの創業支援、NGO/NPOへの参画を積極的に実施。ソロモンブラザーズでは日本およびアジアの投資部門を統括し、アジア最年少のマネジングディレクターに就任。その後あすかアセットマネジメントや日本政策投資銀行とともにマーキュリアを創立。日本初のインターナショナルボーディングスクールUWCISAKの発起人代表

小木曽 麻里氏

SIJ社 共同代表取締役

インパクト投資、社会起業家支援、インクルーシブビジネスの促進などSDG実現のためのビジネス、特にSDGファイナンスに幅広く携わる。2017年には国内で初めてのジェンダー投資ファンドであるアジア女性インパクトファンドを設立。世界銀行資本市場部、世界銀行グループ多国間投資保証機関(MIGA)東京代表、ダルバーグジャパン代表、ファーストリテイリンググループのダイバーシティ担当部長および人権委員会事務局長を歴任

サステイナビリティをめぐる環境認識について

Q.サステイナビリティをめぐる動向をどのように見ていますか

[谷家]
昨今、テクノロジーやデータ、お金など、レバレッジの効くファクターに強い人や企業が極端に恵まれるような傾向が見られ、貧富の差や分断の問題など、資本主義の負の側面が社会全体として顕在化しているのではないでしょうか。このままでは、社会がサステイナブルではなくなるのではないかとの危機感を持っています。
他方で、若い世代を中心に、SDGsの価値観を重視する動きが見られることは、世界にとって良い傾向であり、大切なことであると考えています。中期的にはよい方向に向かっていくものと信じていますが、短期的には、資本主義と社会主義の対立のような、何十年か前の状態に戻ってしまうのではないかと心配しています。

[小木曽]
コロナ禍やウクライナ情勢などの影響により、一時的なセットバックはあるかもしれませんが、Z世代を中心に消費者や投資家は、よりESGを重視していくと考えています。Z世代の方々と話をすると、将来への危機感が私たちの世代と違うことを実感します。世代間の分断が起きているとも言え、未来世代の立場にたって考えていかなければいけないと思います。
ESGに関する規制の強化は、今後も欧州が先行すると思いますが、米国や日本、そしてアジア諸国等にも広がってきています。また、今年は「E」に続き、エンゲージメント、ダイバーシティといったヒューマンキャピタルや人権問題など、「S」への注目が高まると考えています。特にウクライナ情勢を契機に、各企業は人権ポリシーや人権デューデリジェンス体制の見直しなどを迫られると見ています。ESGのインパクト評価については、企業業績に及ぼすインパクトのみを評価する「シングルマテリアリティ」から、企業が環境・社会に及ぼすインパクトも評価する「ダブルマテリアリティ」にシフトしていき、企業は環境・社会に及ぼす影響を明確にすることが求められていくと考えています。

Q.サステイナビリティをめぐる企業への期待をどのように見ていますか

[永島]
このままでは未来世代が安心できない世界になるとの危機感を持っており、地球と人類を持続可能なものとするために、融合や絆の必要性が強く意識されていると認識しています。生命保険は相互扶助の理念で人々の安心や暮らし、幸せを持続可能なものとする、格差・分断とは真逆にある営みです。当社は相互会社であり、お客さまをはじめ、ステークホルダーとの絆を大切にすると宣言していますが、今後、会社や個人のあり様や意味・意義が問われていくなかで、当社が大切にしていることが時代に合ってきていると感じています。
サステイナビリティに対する企業や消費者の意識は、SDGsの策定を契機に大きく変わり、今や世界的な潮流となっています。日本でも、サステイナビリティに対する取組みが不十分であるとの理由から、企業間の取引関係から外されたり、消費者から選ばれなくなったりするリスクが高まっていくものと認識しています。サステイナビリティへの取組みは、企業に対する社会からの要請であり、企業の「存在意義」そのものと理解しています。

両社のフィロソフィーとSDGsにかかる取組み

Q.フィロソフィーの内容やそこに込められた想いについてお聞かせください

[永島]
昨今「存在意義」を大切にする経営という意味で、「パーパス経営」という言葉が注目されています。当社は2017年に「明治安田フィロソフィー」を制定し、これを経営の中心に据えた、いわば、「パーパス経営」を実践しています。「明治安田フィロソフィー」は、私たちが何者で、何をめざし、何を大切にしていくのかを常に指し示す「羅針盤」として、従業員一人ひとりの日々の業務における判断・行動の基準となるものです。人類は生物として自然選択から逃れることはできませんが、意味を考え続けることができます。会社も、むやみに姿かたちを変えて生存することだけを目的にするのではなく、会社が存在する意味・意義を提示し、社会に訴え、ご理解いただくことで初めて「存在意義」が発揮できるのだと考えています。当社は、「お客さま」「地域社会」「働く仲間」との絆を大切にしていますが、従業員一人ひとりがこれを自分ごと化し行動することで、ステークホルダーとの共通価値を創造するとともに、それを「未来世代」に引き継ぐことで、持続可能で希望に満ちた豊かな社会づくりに貢献していきたいと考えています。

「お客さま」「地域社会」「働く仲間」との絆を大切に、ステークホルダーとの共通価値を創造し、それを「未来世代」に引き継ぐことで、持続可能で希望に満ちた豊かな社会づくりに貢献していきたいと考えています

[小木曽]
「お金に色はない」と言われますが、私たち一人ひとりが、お金を使ったり投資したりする際に、社会にどのような影響を及ぼしているのかを意識して、使い方を変えていくことで、世の中はもっと大きく変わっていくと思います。したがって、私たちは「お金には色がある」と考えています。将来的には、個人が投票するように金融商品を選択するようになることで、社会が変わっていけば素敵だと思っています。まだ社会にポジティブなインパクトを直接的に与える商品が少ないため、当社は、海外と国内のアクターを繋ぎ、さまざまなインパクト投資の商品を提供する役割を果たすことで、お金の力で社会をきれいな色、素晴らしい色に変えていきたい、そう考えています。

Q.個人としてのこれまでのSDGsとの関わりについてお聞かせください

[谷家]
日本で初めてのインターナショナルスクール「ユナイテッド・ワールド・カレッジ・インターナショナル・スクール・オブ・アジア軽井沢」を設立しました。世界中から多種多様な人が集まるなか、特に開発途上国のハングリーで才能ある子どもたちは世界の宝であり、そういった子どもに先進国の子どもと一緒に勉強してもらうことで、双方にバックグラウンドを気にしない場を提供したいと考えたのです。 また、ニューヨークに本部を置く国際人権NGO法人「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(以下、HRW)」の日本法人の設立にも携わりました。HRWとの関わりをきっかけに、LGBTの問題を知ったのですが、特に大きかったのは、LGBTに関する世界的なリーダーであるボリス・ディトリッヒ(Boris Dittrich)氏との出会いでした。彼はオランダで初めてゲイであることを公表して選ばれた国会議員であり、その後、連立野党の党首にもなりました。彼の活動の結果、オランダは世界で初めて同性婚を認める国になりました。彼の生き方から多くのことを学びましたし、最も尊敬する友人の一人です。昨今、企業がLGBTの支援に取り組んでいることは、とてもいい風潮であると感じています。 昨今、社会を変える力を持つテクノロジーがビジネスに活用されつつありますが、若い起業家がインテンションを持ってテクノロジーを開発しており、特にクリーンテクノロジーの領域では、エコシステムが構築できている印象があります。今後ともSDGsに関心の高い若い起業家をサポートしていきたいと考えています。一方で、マクロで成長する分野でなければ、中長期的にサステイナブルとは言えません。マクロで成長する傾向にあるのは、社会課題を解決している分野であり、今後は、こうした外部不経済を解決する企業が成長していく傾向が顕著になっていくと考えています。

[小木曽]
世界銀行では、アジアの開発途上国における資本市場の構築、インフラ整備の案件に関わりましたが、SDGsを達成していくために重要なことは、インフラ整備などを援助するだけでなく、民間の技術開発と資金調達を促進することであるとの思いから、インクルーシブ・ビジネス*に軸足を移してきました。世界銀行を退職した後は、コンサルタントとして、カンボジア・ベトナム・インドネシアでは浄水やトイレなどの問題、ミャンマーでは再生可能エネルギープロジェクトなどに携わりましたが、良いアイデアがあっても、多くの場合、ファイナンスが課題になっており、インパクト投資を通じてお金が回るようにすることが必要であると感じていました。 日本における大きな課題は多様性であり、これはSDGsの根幹をなすものであると考えています。笹川平和財団では、女性支援を目的にした日本初かつアジア最大の「アジア女性インパクトファンド」の組成に携わり、現在でもアジアの社会や企業のダイバーシティを推進しています。

*「インクルーシブ・ビジネス」
2005年にWBCSD(World Business Council for Sustainable Development:持続可能な開発のための経済人会議)によって唱えられた概念。ビジネスのバリューチェーンの中に地域社会で暮らす人々(主に貧困層)を消費者、顧客、取引先、起業家などとして巻き込みながら、事業の発展だけではなく雇用の創造や所得水準の上昇などを通じてコミュニティ全体の発展を図るビジネスの手法のこと

Q.持続可能な社会づくりに貢献する取組みについて教えてください

[永島]
当社では、SDGsにおける社会課題から、15項目の「優先課題(マテリアリティ)」を特定し、取組みを進めています。特に「健康寿命の延伸」「地方創生の推進」を「特に注力する優先課題」に設定し、「みんなの健活プロジェクト」「地元の元気プロジェクト」の2「大」プロジェクトを通じて、社会的価値と経済的価値の双方の向上に取り組んでいます。
「みんなの健活プロジェクト」では、お客さまの健康増進を応援する保険商品・サービスの開発・提供に加え、健康課題の解消に向けたきっかけとして、日常における継続的な健康づくりをサポートするイベントを開催することなどを通じて、「健康寿命の延伸」への貢献をめざしています。
「地元の元気プロジェクト」は、みなさんが愛し誇りに思う地元が、さらに元気で満ち溢れることを応援するプロジェクトです。昨今、核家族化の進展やSNSの普及などによって、「ひと」と「ひと」のつながりが薄れ、孤独感が増し、幸福感・絆を感じにくくなっているのではないでしょうか。地元を元気にするためには、人が「集まり」、地元が「つながり」、経済が「まわる」、そんな機会や場づくりが必要であり、一つひとつのまちが元気になることで、日本の元気につながっていくと考えています。当社は、Jリーグや全国の地方自治体、日本赤十字社、公民館、道の駅などと連携・協働し、全国のまちで、地元のみなさまと対話をしながら、地域の活性化に向けた取組みを推進しています。
2022年4月から、生命保険の相互扶助の輪を広げ、「ひと」と「ひと」、「ひと」と「地域社会」の絆を紡ぐという大きな志をもって、新たな営業職員制度「MYリンクコーディネーター制度」をスタートしました。新たな役割として「コミュニティワーカー活動」に取り組み、従業員一人ひとりが「地域社会」との絆を紡ぐ担い手となることで、地域の社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。

Q.明治安田生命の取組みをどのように見ていますか

[谷家]
従来はGDPを増やすことで幸せになれると言われてきましたが、昨今そうではないことを実感しています。幸せになるためには、「つながり」が何よりも重要と考えています。特に地域社会では、「ひと」と「ひと」とのつながりが実現しやすく、「つながり」を創ることで、自分の居場所があると感じることができ、そこで自分を表現することができるのだと思います。御社が取り組んでいる「地元の元気プロジェクト」は、従業員一人ひとりが幸せになることを大切にしながら、地域社会に「つながり」を提供し、活躍できる居場所を創るという、美しい循環につながる取組みであり、SDGsの取組みとしても、すばらしい活動だと思います。

[小木曽]
人が「集まり」、地元が「つながり」、経済が「まわる」、という考えがすばらしいと思います。世界で格差や分断が拡がっているなかで、従来はこうした問題は国が対処するものという風潮がありましたが、「パーパス経営」が浸透するなかで、それを企業が地域・個人と共同体となって担う時代になってきています。SDGsの理念は、「どれをやるか」ではなく、「困った人がいたら支援する」ことであり、生命保険、相互会社の理念と相性が良いのだと思います。

業務提携のねらい

Q.今回の業務提携のねらいについてお聞かせください

[谷家]
ここ数年でESGファンドへの資金流入額が増加しているものの、目に見える社会的インパクトを創出しているファンドはまだ少ないように思います。御社は日本を代表する生命保険会社の一つであり、SDGsの達成への貢献に向け、さまざまな社会課題の解決に取り組んでいます。先般、御社に資金拠出いただいた「NextGen ESG Japan Fund」は、日本の上場企業(主に中小型株)に投資し、投資先企業との対話を通じて社会的インパクトを創出することにフォーカスしたESGエンゲージメント戦略のファンドとして、弊社がESGアドバイザーを務めております。今後、当ファンドをファミリーファンドとして、日本の大型株、その他の国・地域などに拡大していくことを予定しており、御社とともにESGに積極的に取り組む企業群をサポートすることで、日本の株式市場をより魅力的な市場にしていきたいと考えています。

[小木曽]
御社は、健康増進の取組み、Jリーグとの協働など、多くの分野で地域社会に根ざした取組みを推進しており、ぜひ、「地方創生の推進」においても協働していきたいと考えています。たとえば、当社では企業や団体などのESGの取組状況を可視化し、分析・評価できるSaaS型*のサステイナビリティ管理ツール「RIMM」を開発しており、地域の金融機関が与信や投資先の非財務情報を管理する際などに活用することができます。本ツールも活用し、御社とともに中小企業のSDGsへの取組みを支援することで、地域社会に貢献していきたいと考えています。また、食や観光などの分野においても、SDGsへの取組みの一環として、地域社会の活性化につながるプロジェクトを一緒に推進できればうれしく思います。

*「SaaS」(Software as a Service)
 ソフトウェアを利用者側に導入するのではなく、提供者側で稼働しているソフトウェアを、インターネット等のネットワーク経由で、利用者がサービスとして利用する状況

[永島]
当社では、サステイナビリティ経営の推進と、機関投資家として責任投資の取組みをさらに強化していく観点から、御社と資本業務提携を締結することとしました。御社が持つサステイナビリティ領域における高度な知見やグローバルなネットワークと、当社の財務基盤やステークホルダーとの幅広いネットワークとが融合することで、相乗効果を生み出し、化学反応を起こせるものと確信しています。
資産運用面では、谷家会長からご説明があったとおり、ESGファンドの取組みを先行実施していますが、御社からのアドバイザリーを通じて、資産運用収益の拡大、ESG投融資、エンゲージメントなど、責任投資態勢の高度化を図っていきます。また、当社は「地方創生の推進」への貢献に向け、「地元の元気プロジェクト」を推進していますが、御社との協働を通じて、中小企業のSDGsへの取組み支援や、地方自治体との協働による地域の社会課題の解決に貢献する取組みなど、地域社会の活性化につながる取組みを強化していきたいと考えています。

SDGsを実現していくにあたり重要なこと

Q.欧州を中心に諸外国が先行するなか、日本においてSDGsを実現していくにあたり重要なことは何だとお考えですか

[谷家]
世界が螺旋状に上昇するように良くなっていく社会を実現していきたいと考えています。他人や社会を自分の効用関数に入れることで幸福度が増すと思っており、各自さまざまな感性を持っているなかでも、自分自身は自然を含め社会という大きなシステムの一部であることを意識する、いわゆる「ワンネス」の考え方が大切にされる社会になってほしいと考えています。ある生物学者は、「一人の人間には37兆個の細胞があり、全体がより良くなるために、相互に協力し合っている。一人の人間は協力できるのに、なぜ77億人の人間が協力できないのか」と言っています。日本を含めて、みんなが宇宙船「地球号」の一員として、より良い地球をつくる方向に進められたら良いなと思っています。
こうした考え方はSDGsの浸透により実現できると考えています。日本は欧州に比べ、SDGs等への取組みが遅れていると言われますが、本来、日本人には「禅」の考えが取り込まれており、SDGsは日本人の心になじみやすいと考えています。GDPを追いかける過程で忘れられかけていますが、いま一度、「禅」の考え方を思い出すことで、日本から世界に発信できるのではないかと思っています。
一方で、SDGsに対応可能な大企業だけが取り組むことなどにより、分断が拡がらないよう、幅広くSDGsを展開してきたいと考えています。今般の業務提携を通じたESGエンゲージメント戦略の組成・推進、SaaS型のESG評価ツールの提供などを通じて、地域の中小企業などの取組みを支援することで、「SDGsの民主化」を実現していきたいと考えています。

日本における「SDGsの民主化」に取り組み、格差・分断のない社会の実現をめざしていくことで、世界のみんなが、宇宙船「地球号」の一員として、より良い地球をつくる方向に進めていきたいと思っています

[小木曽]
Sustainable Development Reportが発表しているSDGsの達成度ランキングにおいて、2021年の日本の順位は165ヵ国中18位となっており、高いとも言えませんが、決して低いわけでもありません。ただし、日本はSDGsのうち「目標5(ジェンダー平等)」「目標13(気候変動)」「目標14(海の豊かさ)」「目標15(陸の豊かさ)」などが相対的に遅れているとされており、取組みを加速させていく必要があります。特に日本はダイバーシティが遅れていると言われていますが、若者世代は多様性を重視する傾向にあり、多様性や柔軟性のない職場やコミュニティに魅力を感じてくれません。若者が意欲を持って働ける環境を作っていくため、企業や地方自治体などでは、取組みをさらに進めていく必要があると感じています。

未来世代の声に耳を傾け、日本の社会や企業のダイバーシティの推進に取り組むとともに、社会課題に正面から向き合うことで、「ひと」と「地域社会」に新たなつながりを創っていきたいと考えています

今後に向けて

Q.持続可能な社会づくりへの貢献に向けて、今後、お互いに期待することは何ですか。また、2030年にめざす姿を教えてください

[永島]
当社は、2020年4月に、「10年後(2030年)にめざす姿」を「『ひとに健康を、まちに元気を。』最も身近なリーディング生保へ」と定めた10年計画「MY Mutual Way 2030」を開始しました。お客さま志向のさらなる進化を前提に、長期的に安定した経営を行ないつつ、環境変化に柔軟に対応していくことで、社会的価値と経済的価値の双方を向上させることをめざしており、サステイナビリティ経営の推進は、その実現に向けた前提・土台となるものと位置づけています。「パーパス経営」を志向し、ステークホルダーとの共通価値を創造するという美しい循環を描くためには、会社が収益を上げることはもちろん必要ですが、それはむしろ手段であって、目的にしてはいけないと考えています。
SIJ社は、その事業を通じて、明るく綺麗な色で包まれた素晴らしい未来社会を実現できる企業であると確信しています。御社との連携・協働を通じて、多くの刺激を受けながら、持続可能で希望に満ちた豊かな社会づくりにいっそう貢献していきたいと考えています。

[谷家]
モダンキャピタリズムによって広がった格差や分断が、コロナ禍やウクライナ情勢を通じて、いっそう加速しています。一人ひとりが幸せと感じることができる仕組みを各国で創っていかなくてはならない、そう思っています。一方で、こうした環境変化が、自分にとって本当に大切なのは何かを考える契機になったとも思っています。何よりも大切なのは、家族との「つながり」、自然との「つながり」であり、日々の小さな幸せの積み重ねこそが真の幸せなのだと思った人も多いはずです。SDGsを達成していくためには、「明治安田フィロソフィー」のような考え方が必要です。御社とともに、「ひと」と「ひと」、「ひと」と「地域社会」がつながり、一人ひとりが自分を表現できる世界を創っていきたいと思います。

[小木曽]
個人の格差が拡がるなかで、セーフティネットの重要性が増してきています。困っている人を支援するのはもちろんのこと、社会全体がセーフティネットになって、こうした人を生み出さないようにすることも重要だと思います。それを解決するための大きなテーマの一つが金融であり、日本の主要なアセットオーナーの1社である御社とともに思案していきたいと考えています。
SDGsを推進する、つまり社会課題を解決していくためには、「ひと」と「地域社会」とのつながりが何よりも必要になります。社会課題に正面から向き合うことで、「ひと」と「地域社会」に新たなつながりを創っていく。そのお手伝いを御社と一緒にできれば嬉しく思います。