第三者意見

青山学院大学 ビジネスデザイン研究科 教授 池田 耕一氏

青山学院大学
経営学部 教授

芳賀 康浩氏

明治安田生命のCSR報告について2013年から意見を述べさせていただいていますが、毎年同社のCSRが着実に高度化していることを感じます。特にそれを感じるのは、経営戦略との統合が進み、中長期的な視点から計画的かつ継続的にCSRに取り組まれている点です。昨年の報告から大きく変化した点のほとんどは、2017年からスタートした中期経営計画「MYイノベーション2020」を反映したものです。一番わかりやすいのが、「働く仲間との絆」の内容の変化でしょう。
例えば、「ダイバーシティ・マネジメントの推進」が「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」に変更され、LGBTといった新しい多様性に関する課題が取り上げられています。こうした社会動向に機敏に対応できるのも、それをステークホルダーの要望に応えるというスタンスではなく、積極的に取り組むべき経営上の課題だという認識があるからでしょう。一方、イクボスの育成やワーク・ライフ・バランスの実現といった既存の取組みにも新しいプログラムが導入されており、具体的な成果に向けて着実に進展している様子が伺えます。
また、「求める人財像」も修正・更新されていますが、これも新しい中期経営計画のスタートに合わせて刷新された経営方針「明治安田フィロソフィー」によって規定されています。経営理念のレベルで、我々はどうあるべきなのか、何をするべきなのかを繰り返し考え、その結果を単に理念・哲学にとどめるのではなく、それに基づいて職員一人ひとりの能力・キャリア開発の方法や内容が決まる。このように具体的な業務の一つひとつにまで経営理念が浸透した状態こそCSRと経営方針が統合された状態だといえるでしょう。
また、昨年に続き今年も「お客さまの声」を経営に活かす取組みの一環である「お客さまの声」の集約・一元管理によって生まれた新商品が紹介されています。もはや明治安田生命において、CSRと商品開発・マーケティングは不可分なものになっているのでしょう。この他にもCSRと経営方針の統合を感じさせる点が随所にあり、同社の『統合報告書』の主要な構成要素としてのCSR報告にふさわしい内容になっていると思います。
一方で、経営方針との統合が進めば進むほど、必然的にその内容は高度に専門化し、新たな経営課題、社会課題も取り扱わなければならなくなります。例えば、今回のアップデートでも、ガバナンスの項にERM(Enterprise Risk Management;統合的リスク管理)が盛り込まれました。これが非常に重要な取組みであることは間違いありませんが、ERMの説明がされていないなど、顧客をはじめとする多くのステークホルダーにとって難解な内容になっています。このように、高度に専門的で新しいことを多様なステークホルダーに適切に「報告」することは容易なことではありません。CSRの目的が、ステークホルダーとの絆を深めることであるならば、優れた取組みをすることが重要であることは言うまでもありませんが、それ以上にそうした取組みに対するステークホルダーの理解、共感、支持を獲得しなければなりません。冒頭に述べたように、明治安田生命のCSRは着実に高度化していると思います。同様にCSR「報告」も着実に高度化していくことを期待しています。

ページの先頭に戻る